2021年3月 全国百貨店売上高
18カ月ぶりにプラスも、コロナ禍前比では19%減に
日本百貨店協会が調査した全国百貨店(73社・192店)の3月売上高は4076億円余で、前年比(店舗調整後)は21.8%増となり、18カ月ぶりにプラスに転じた。前年が新型コロナウイルス感染症拡大による臨時休業や時短営業による大幅減(33.4%減)だった反動と、緊急事態宣言の解除や各社が企画した会員向け施策が寄与した。ただコロナ禍の影響がない前々年(平成31年3月)比では19.1%減となり、ほぼ前月(21.9%減)並みの厳しい状況が続いた。
3カ月移動平均値は、8~10月20.5%減、9~11月17.8%減、10~12月10.8%減、11~1月18.6%減、12~2月18.0%減、1~3月8.9%減。コロナ禍の2巡目に入り1桁台のマイナスまで戻ってきたが、コロナ禍前の前々年比では「8掛け」状態が続いている。
顧客別では国内市場(シェア98.6%)が21.9%増となり、前月のマイナス(9.1%減)から大幅に改善し、5カ月ぶりにプラスに転じた。富裕層を中心とした高額消費やイエナカニーズがけん引した。インバウンド(免税売上高)も17.1%増となり、14カ月ぶりにプラスに転じたが、ただ前々年比では83.3%減となり、前月(前々年比86.4%減)とほぼ同水準の落ち込みが続いた。
地区別では全地区がプラス。大都市(10都市)が18カ月ぶりにプラスに転じ、25.0%増。大都市の中では札幌、名古屋、大阪、神戸、福岡が3割を超える伸長率だった。対して地方都市(10都市以外)は14.6%増となり、こちらは5カ月ぶりのプラス。大都市の伸長率が地方都市を上回るのも14カ月ぶりで、大都市が健闘した。ただ、大都市は前年の3月が36.2%減、地方都市が26.3%減となっており、大都市は反動増効果が地方都市より大きい。
品目別では主要5品目が全てプラス。衣料品と食品が18カ月ぶり、身のまわり品と雑貨が5カ月ぶりのプラスで、家庭用品は2カ月連続増。主要5品目のうち身のまわり品が4割超の伸長率で、ラグジュアリーブランドがけん引。さらに雑貨の中で高額品の美術・宝飾・貴金属も4割超の伸長率だった。富裕層を中心とした高額消費の好調さが表れた。2カ月連続増の家庭用品は、4カ月連続増の家電とその他家庭用品が好調。キッチン関連やインテリア、調理家電など、イエナカ(巣ごもり)消費がけん引した。
また、18カ月ぶりのプラスだった衣料品は、引き続きビジネス関連が不調だったものの、気温の上昇に伴いブラウス、カットソーなど春物が動き、さらに卒入学などのオケージョン需要でフォーマル関連が動き、身のまわり品のアクセサリーも好調だった。衣料品と同じく18カ月ぶりプラスだった食品は、物産展やホワイトデーなどの催事と、送別や新生活祝いなどのギフト需要が堅調だった。食品では生鮮食品が29カ月ぶり、惣菜とその他食品が共に18カ月ぶりにプラスだった。
14カ月ぶりのプラスだった免税売上高(87店舗)は、約55億5000万円、前年比17.1%増。一般物品が約36億5000万円、93.4%増とけん引した。ただ前月(43憶3000万円、60.7%減)より12億円程度増えた額で、前々年比では83.3%減。購買客数は約1万4000人で、前年比52.7%減となり、14カ月連続減。1人あたりの購買単価は約39万4000円、前年比147.5%増で、前月(約40万3000円)とほぼ同水準が続いた。