2021年福袋特集 年内販売や事前予約、EC強化で密を分散
正月の風物詩である福袋。朝から長蛇の列ができ、開店と同時に争奪戦が繰り広げられるのが恒例だが、コロナ禍では密を避けなければいけない。百貨店業界の各社はインターネット通販(EC)サイトの品揃えを拡充して利用を促進したり、店頭で受け取る福袋は事前予約制にしたり、年内から販売を始めたり、様々な対策を講じる。品揃えも「イエナカ需要」の高まりを反映。オンラインで指導を受けられる「リモートレッスン」やテレワークに適した家具を揃えたものなどが登場する。
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販売期間の拡大やEC販売強化 店頭では整理券配布も
多くの百貨店が事前予約を強化するが、中でも徹底しているのが高島屋だ。店頭販売の福袋は、全て年内にECサイトまたは店頭で予約を受ける方式に変更した。店頭の予約期間は12月2日~28日で、受け渡しは12月18日~31日または2021年1月4日以降となる。ウェブの予約期間は12月2日午前10時~25日午前10時で、受け渡しは1月4日以降に横浜店、大阪店、京都店のいずれかでできる。1月2日、3日は販売しない。店頭受け取りとは別に、ECサイトで販売し宅配で届ける福袋も1000種類以上と豊富に揃え、利用を推進する。
小田急百貨店はECサイトの予約販売で、11月18日~12月23日に受け付けて12月下旬までに届ける「年内お届け」と1月2日、3日に届ける「年始お届け」、12月24日~1月12日に受け付けて1月6日以降に届ける「年明けお届け」の3種類を設定。年内お届けは冬休みの家庭で需要が高い食品や家庭用品を中心に、年始お届けは全般的に、年明けお届けは食品やコスメなどを用意する。年明けお届けは、年内お届けで買い逃した人や冬休み期間にネットで購入したい人を取り込む狙いだ。
大丸梅田店は、初売りとなる2日と3日は店頭での販売を避ける。年明けの販売は4日以降とし、逆に年内の12月26日から販売する「先取り福袋」を今回から数を増やして展開を本格化。販売期間を2つに分け、混雑を緩和させる。また事前予約やECサイトの福袋を拡充し、特に人気の高いファッションブランドや、温泉付きの体験型などは事前予約やECサイトでの販売とする。
松屋銀座店は一部福袋を年内に販売。事前予約も年内にECサイトや店頭で受け付ける。1月2日の初売りでは、食品を中心に一部商品は年内に整理券を配布し、8階の特設会場で支払いや受け渡しを行う。1階の化粧品、アクセサリーは会計用のスペースを用意。例年1分で完売する「リタズダイアリー」など人気の福袋は抽選式にする。
京王百貨店は、今まで店頭のみで受け付けていた抽選式福袋の応募を、ECサイトからも可能にした。例年は1月2日の初売りで店頭販売していた福袋も、新宿店では12月3日~と17日~の2回に分けて予約受け付けまたは販売を開始する。2日の初売りでは、混雑が見込まれる食品の福袋は5階のイベントスペースにも会場を設置し分散する。
西武池袋本店は店頭の混雑対策として、販売の会期を今までの1月1日~3日の3日間から12月26日~1月11日へと14日間拡大。開店前には整理券を配布し、列を作らないようにする。人気ブランドの福袋は催事場などに特設会場を設け、販売する場所を増やす。ECサイトでは前年比約3割増に品揃えを強化する。
三越日本橋本店は店頭で販売していた食品の人気ブランドの福袋を、ECサイトで予約し、年明けに配送または日時を分けて店頭で渡す方法に変更した。伊勢丹新宿店はECサイトの品揃えを例年拡充しているが、今年はより一層強化。全体の8割以上をECサイトで販売する。
オンラインレッスンやテレワーク向け家具など「イエナカ」照準
コロナ禍の影響は販売の方法だけでなく、福袋の内容にも表れる。多くの百貨店が目玉としてイエナカの生活を快適にするような商品を打ち出す。中でも阪急うめだ本店は、「加圧ビューティーテラス」のサロンでのトレーニングとエステに加えてオンラインのパーソナルレッスンも受けられる「自宅&サロンでボディーメイキング福袋」(2カ月コース税込み10万円、3カ月コース同15万円)をはじめ、ハイヒールの歩き方レッスンの福袋(1万円)など、約20種類を用意した。
東武百貨店池袋本店も「ダイエッター福袋」(税込み10万円~)を打ち出し、通常は店頭で行うコースのところを今年はリモートレッスンと店頭レッスンを組み合わせた。マイナス3キロコース(2カ月)やマイナス5キロコース(3カ月)などがある。昨今は密回避や健康志向で自転車に注目が高まっていることから、折り畳み自転車と関連アイテムが付く「DAHON」の福袋(同5万1000円)も販売する。
西武池袋本店は「イエナカ」をキーワードに、リモートワーク向けのデスクと椅子のセット「イエナカON 福袋」(価格未定)、コロナ禍で人気を集めたハンモックやラグなどを揃える「イエナカOFF 福袋」(税込み20万2100円)を用意。ほかにも料理を始める男性が増えたことから企画した、包丁やフライパンなどを詰合せた「デザインよし!味よし!男の料理福袋」(同4万4000円)、「新しいファッションアイテム シルクマスク福袋」(同2200円)などニーズが高まる商品を販売する。
小田急百貨店はお勧めの家具と整理収納アドバイザーの相談がセットになった「おすすめ家具+プロのおかたづけアドバイス夢袋」を用意する。「エルゴヒューマン」のオフィスチェアが税込み11万円、「リーン・ロゼ」のデスクとチェアが同12万円で、家具を届けた後に収納のコツなどのアドバイスを受けられる。加圧ビューティーテラスのレッスンコースと「マナマナプラス」の撮影チケットがセットとなり、理想の身体になった自分を写真に残せる福袋(同45万円)も登場する。
松屋銀座本店は、コロナ禍によって需要が減少した全国の生地生産者や縫製工場への支援に繋げるため、日本全国14カ所の生産者別の福袋を作成。職人自らが撮影したメッセージ動画と、地域の名産品もセットにする。例えば「パターンオーダースーツ&お米」福袋(税込み6万6000円)は、青森県で縫製を行う「サンライン ジャパン」のパターンオーダースーツ1着、青森県のヒバを使ったハンガー1本、青森県産米「青天の霹靂 2kg」を詰合せる。
実店舗での福袋の販売は人々の購買意欲を煽り、コト体験として満足感を得やすい。コロナ禍によってこれを失うのは福袋商戦において痛手だが、ECの強化や新商品を開発するきっかけにもなる。インターネットの利用は普及する一方であり、オンラインレッスンやテレワークも時間を効率的に使える手段として今後定着していくだろう。今回の取り組みはコロナ禍が収まるまでの〝その場限り〟ではなく、今後のECサイトや品揃えの在り方を左右するに違いない。