松屋、銀座店にトルコ伝統菓子の老舗のアジア初常設店
松屋銀座店に11日、トルコの伝統菓子「バクラヴァ」の老舗「Nadir Gullu(ナーディル・ギュル)」がアジア初の常設店としてオープンした。バクラヴァは、薄いパイ生地にピスタチオなどのナッツをふんだんに入れて焼き上げ、甘いバターシロップをかけて仕上げたトルコの伝統的な焼き菓子。天然の旬の素材を使用し、職人が一つ一つ手作業でつくる。ナーディル・ギュルは1843年に創業した“バクラヴァの王様”と称される老舗ブランドで、トルコ・イスタンブールに店舗を構える。現在は創業家5代目のナーディル・ギュル氏が会長を務め、トルコの伝統や価値観、歴史を継承しながら、オスマン帝国時代から愛される味わい深いバクラヴァを提供し続けている。
オープンに先駆けて、9日に駐日トルコ共和国大使館の大使公邸で、メディア向けにバクラヴァの紹介と試食ができるイベントが開かれた。会場には、ギュル氏をはじめ、シェフや松屋銀座店に同時オープンするトルコの高級菓子ブランド「ディヴァン」の関係者、2つのブランドの総代理店であるエフェトレーディング代表取締役CEOの安宅玲奈氏が登場。松屋の社員と多くのメディア関係者も詰め掛けた。
冒頭、駐日トルコ共和国のコルクット・ギュンゲン特命全権大使が挨拶。日本での成功を願うと同時に「バクラヴァ店のイチ常連として今後もギュル家を応援していきたい」とエールを送った。
次にギュル氏が登場。日本での出店について「イスタンブールの店舗には、日本人観光客の方々が非常にたくさん来てくれていた。バクラヴァのおいしさを日本で皆様にお届けするために、店舗を開設する運びとなった」と経緯を語った。
続いて安宅氏は、昨年11月に松屋銀座店で実施したポップアップショップを振り返り、グランドオープンの実現に喜びを表した。トルコは来年に建国100周年、2024年には日本との国交樹立100周年を迎える。こうした両国の節目にも触れ、「1人でも多くの人にバクラヴァを知ってもらい、末永く愛されるブランド、スイーツとなるよう尽力していきます」と力を込めた。
ギュル氏は運ばれてきた焼き立てのバクラヴァを前に、1番おいしく食べる5つのポイントを披露した。1つ目はまず黄金色に輝く色を目で楽しむ。2つ目はバクラヴァにフォークを刺して裏返し、香りを楽しむ。3つ目は食べる前に水を一口含む。4つ目はバクラヴァを口に入れ、そのまま息を吸って吐いてを繰り返す。5つ目は10回噛み、また息を吸って吐いて、口の中に広がる味を堪能する。ギュル氏の明るくコミカルな所作に、会場はなごやかな雰囲気となり、笑いに包まれた。
デモンストレーション後には、バクラヴァとチャイが振る舞われた。たっぷりとかけられた甘いバターシロップが、ふんわりとした甘い香りを放つ。手作業で何十層にも重ねられたパイ生地の間に、細かく砕いた最高品質のピスタチオやくるみなどのナッツがふんだんに入っており、サクサクとした心地良い食感を生む。ギュル氏の食べ方に倣うなど、皆がそれぞれに味を堪能し、歓談を楽しんだ。
昨年11月のポップアップショップは2週間開催した。100人以上の行列ができ、連日完売する盛況ぶり。通常の食品のポップアップショップと比べ10倍近い売上げを達成した。松屋銀座本店食品部食品二課長MD担当の牧野賢太郎氏は「昨年の出店前は(どれぐらいの反響があるか)全くわからなかった」が、「予想すらできなかった人気に驚いた」と語った。後に、松屋の顧客にはトルコへの旅行体験者や、トルコの文化に興味を持つ人達が多くいることがわかった。そうした人達によるSNSでの話題の拡散も功を奏した。
売場は同店の地下1階で、飲み物と一緒にすぐに味を楽しめるイートインスペースも併設されている。オープン初日は「開店から多くのお客様にご来店いただいた」(安宅氏)。好調な滑り出しと共に、“遠い異国の新しい味”を広めていく。
(中林桂子)