地元密着企画の徹底で「エシカル消費」を呼び込んだ岡島、6月の売上げは〝実質プラス〟
コロナ禍で百貨店業界が大きな痛手を負う中、山梨県の岡島の奮闘が目覚ましい。6月の売上高は前年比8%減だったが、物産展を中止した分を加味すると同2%増。地元のホテルや酒蔵、大学生らと組み、4月から積極化してきた商品開発、イベントやチャリティの実施などが「エシカル消費」を呼び込み、大松松坂屋百貨店が同28%減、三越伊勢丹が同22.5%減、高島屋が同17.3%減、そごう・西武が同16.5%減、阪急阪神百貨店が同10%減など、大手が軒並み2桁のマイナスを強いられた状況で、1桁で踏ん張った。
岡島の雨宮潔社長は「春頃から徹底して地元密着企画を展開した結果、お客様の支持を頂戴できた」と分析する。中元商戦も好調で、売上げは6月末までで前年の約1.2倍。雨宮社長は「特別給付金、キャッシュレス還元の最終月の駆け込み、4月20日~5月17日の食品売場を除く休業や東京に買い物に行けないストレスの反動などによる〝特需〟も少なくないが、『地元の経済を応援したい』というエシカル消費を実感する」という。
このエシカル消費が、奮闘の原動力だ。まず、甲府商工会議所と組んで3月中旬、コロナ禍で宿泊の予約が激減した市内のホテルに「特別な弁当やスイーツを開発し、当店で販売しないか」と提案。「在宅勤務や外出の自粛で、家庭では料理の負担が増大した。時には、既製の弁当やスイーツを購入し、それを軽減して欲しいという狙いもあった」(雨宮社長)。
常盤ホテル、甲府記念日ホテル、ホテル談露館が参加し、9種類の弁当(2400円~5700円)とプリンなどのスイーツを開発。「買って応援 おうちdeホテル 人気ホテル グルメ&スイーツフェア」と題して販売すると、目的に共感した外商顧客が毎日のように注文するなど好評で、売上げは4月8日~21日に約900万円を記録した。ホテルからは「450人が宿泊したくらいの金額」と感謝されたという。
続いて6月10日~16日には、「買って応援、おうちde一杯! 山梨県地酒フェア」を開催。甲府商工会議所、山梨県酒造協同組合と組み、山梨県内の12の酒蔵を誘致した。日替わりで酒蔵の人々が直接、地酒、おつまみ、スイーツなどを販売し、活況を呈した。
さらに、山梨県にちなんだ商品を手掛ける大学生らのプロジェクト「モモハナ」と協業。5種類のTシャツを作り、6月17日から2週間に亘り3000円で販売し、売上げの一部は県内の大学が名を連ねる特定非営利活動法人「大学コンソーシアムやまなし」に寄付した。期間中には約640枚が売れ、雨宮社長は「従来の地元密着企画は食品が多く、Tシャツは〝冒険〟だったが、個人の注文だけでなく、企業の夏のユニフォームとしての申し込みもあった」と喜ぶ。
今後は、外商顧客向けにホテルのシェフが自宅で料理を振る舞うサービスを開始。法事などでの利用を想定する。
岡島は近年、「地域のインフラ」を目指して舵を取ってきた。コロナ禍で、それが支持され、売上げという形で実を結びつつある。