2024年11月19日

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にんべん、惣菜ニーズの高さに照準 人気の汁物シリーズを強化

惣菜市場の伸長を受け、フリーズドライの「至福の一椀 おみそ汁・お吸い物詰合せ」の売上げは好調だ

にんべんは今年の中元商戦で、高まる惣菜ニーズに対応し、みそ汁・吸い物や、惣菜などの拡販に注力する。人気の「至福の一椀 おみそ汁・お吸い物」は4月に新しい味を発売し、バリエーションを増やして商品の鮮度を上げた。「至福の一菜 惣菜」や「至福の一菜 煮魚・焼魚」と合わせて、中食需要を取り込む。直営事業でも惣菜専門店「一汁旬菜 日本橋だし場」を展開し、惣菜を起点に売上げと顧客接点を拡大している。

 

「おみそ汁・お吸い物」シリーズで「あおさ」と「かに」が新登場

今年4月に「あおさ」と「かに」を発売した

「至福の一椀 おみそ汁・お吸い物」は、化学調味料を使用せず、かつお節の豊かな風味を活かしたフリーズドライのみそ汁と吸い物のシリーズ。具材ブロックと調味ブロックに分かれているのが特徴で、具材に調味が浸み込まず、つくり立ての味が楽しめる。200円前後の単品と詰合せの両方を用意し、自家需用とギフト需要の両方に応える。手軽に調理できるため、贈り物としての人気が高く、直営店の日本橋本店では単品の「ついで買い」も多いという。

今年4月に新しい味として「あおさのおみそ汁」(216円)、「かにのおみそ汁」(270円)を発売。「人気のシリーズではあるが、発売から時間が経っているため、新鮮さを出したかった」と商品サービス企画部部長の豊田義徳氏は説明する。あおさのおみそ汁は爽やかな磯のりと上品なうま味の国産ひとえぐさを使用し、かにのおみそ汁は、身質が柔らかく、甘みのある国産紅ズワイガニを採用した。かにのおみそ汁は、「ちょっとした贅沢」を求める昨今の消費トレンドも意識した。

これらが既存の7種に加わり、至福の一椀シリーズは全9種類となった。併せて詰合せもリニューアルし、9個入(2160円)、14個入(同3240円)、24個入(5400円)の3種類で、キリが良い価格に変更した。

至福の一椀シリーズの好調の背景には、惣菜市場の成長がある。日本惣菜協会の調査によると、食市場全体の中でも特に惣菜市場の伸長は著しく、2010年から19年の間に日本の惣菜市場は27%以上伸びている。20年はコロナ禍の影響で縮小したものの、マーケットの活況は高齢化、核家族化、女性の社会進出といったライフスタイルの変化が要因にある。こうしたライフスタイルの変化は今後も続くと予想されるため、惣菜市場もまだ拡大が期待できそうだ。

おみそ汁・お吸い物以外にも、今中元商戦では「至福の一菜 惣菜」と「至福の一菜 煮魚・焼魚」も打ち出す。どちらも本枯鰹節からひいただしの風味を活かしたこだわりの品で、電子レンジかお湯で温めるだけで調理が完結する。惣菜は「和風ロールキャベツ」、「鶏肉とグリル野菜のトマト煮」、「豚肉と大根の黒酢煮」など、煮魚・焼魚は「さけ西京焼き」、「ぶり照焼き」、「さば味噌煮」などを揃える。詰合せはどちらも6個入で、価格は5400円。

 

直営の惣菜専門店も好調 郊外エリアへ進出

今年3月にオープンした「一汁旬菜 日本橋だし場」二子玉川 東急フードショー店

旺盛な惣菜需要に対しては、ギフト以外の部分でもアプローチを掛けている。同社は直営事業で弁当専門店の「日本橋だし場 OBENTO」や惣菜専門店の「一汁旬菜 日本橋だし場」を手掛けており、売上げと顧客接点の拡大に努める。日本橋だし場 OBENTOはJR品川駅のエキナカ施設「エキュート品川」に、一汁旬菜 日本橋だし場はJR横浜駅直結の「CIAL横浜」、西武池袋本店、ニュウマン新宿、二子玉川 東急フードショーに店舗を構える。

従来は都心部やオフィス立地へ出店していたが、コロナ禍以降は人の流れが大きく変わったことから、郊外エリアも視野に入れるようになった。住居と商業とオフィスの三者が同居する二子玉川エリアが適当と考え、今年3月に二子玉川 東急フードショー店をオープン。事前に行ったポップアップで好成績を収めたこともあり、売上げは堅調に推移している。

他方で、コロナ禍によって苦戦していた都心店も、直近では客が戻っているという。ビジネス利用の高いエキュート品川店が真っ先に復活し、次いでニュウマン新宿店、西武池袋店も好調だ。中でもニュウマン新宿店は見込み以上に健闘している。「客の目線に展示ケースを合わせたり、店内を明るくしたり、お客様が立ち止まって商品を見られるスペースを設けるなど、店装にはこだわった。新宿駅という好立地と、それらが合わさった結果かもしれない」と豊田氏は語る。

独自の製法で丁寧に削り上げた「鰹節フレッシュパックゴールド」

こうして惣菜の拡販に力を注ぐものの、同社の主力商品は祖業でもあるかつお節だ。「鰹節フレッシュパックゴールド」シリーズは中元の一番人気商品で、今年も主軸に据える。同商品は一本釣りのカツオをじっくりと熟成させて仕上げた上質の本枯鰹節を使用し、同社独自の製法で丁寧に削り上げている。日本近海で一本釣りされた稀少なカツオのみを使用する上位ライン「伊勢屋伊兵衛」も揃え、かつお節を求めるニーズに応える。

同社の商品はどれも高品質な「だし」や「かつお節」を活かしたもので、惣菜においてもそれが他社との違いや魅力になっている。にんべんは原点であるかつお節と、それを活かした惣菜の両面から成長を目指す。