2021年10月 全国百貨店売上高
3カ月ぶりにプラスも、入店客数は戻りきれず
日本百貨店協会が調査した全国百貨店(73社・189店)の10月売上高は3848億円余で、前年比(店舗調整後)は2.9%増となり、3カ月ぶりにプラスに転じた。加えてコロナ禍前の前々年(19年)比でも1.3%増だった。同協会では「緊急事態宣言が解除され、主要顧客層の外出機会が増加したことに加え、各社が企画した組織顧客向け施策や物産展などの各種催事が奏功した。高額商材の増勢が続いているほか、気温低下で衣料品など秋冬商材が好調だった」ためと総括している。ただ、入店客数は0.8%減となり、前月(13.8%減)よりも改善したものの、前々年比では22.0%減。前々年比のプラスも19年10月が消費増税の駆け込み需要の反動減で2桁減(17.5%減)だっただけに、まだ回復途上の段階だ。
3カ月移動平均値は、2~4月28.6%増、3~5月61.2%増、4~6月44.9%増、5~7月11.7%増、6~8月2.5%減、7~9月3.4%減、8~10月3.9%減。6月以降、回復テンポの鈍化傾向が継続している。
顧客別では国内市場(シェア99.2%)が2.9%増となり、3カ月ぶりにプラスに転じ、前々年比では7.7%増だった。インバウンド(免税売上高)は49.3%増となり、前月(42.4%増)と同様の高伸長率だったが、前々年比では87.7%減となり、前月(88.1%減)とほぼ同水準の厳しい状況が続いた。
地区別では、大都市(10都市)が4.3%増となり、同じく3カ月ぶりにプラスに転じ、前々年比でも0.9%増だった。広島以外の9地区で前年実績を上回った。その広島も0.8%減のほぼ前年並みまで回復した。
対して地方都市(10都市以外)は0.4%減となり、前月(6.2%減)より改善したものの、5カ月連続のマイナス。ただ前々年比では3.2%増まで回復した。8地区のうち四国(3カ月ぶり)、中国(5カ月ぶり)、北海道(5カ月ぶり)がプラスに転じた。マイナスでも東北、関東、中部、九州は、ほぼ前年並みまで復調した。
品目別では、主要5品目が全て前年実績を下回った前月から、家庭用品以外の4品目がプラスに転じ、いずれも3カ月ぶり。このうち身のまわり品と雑貨の伸びが高い。身のまわり品(7.3%増)はラグジュアリーブランドが好調で、加えて宣言解除に伴う外出意欲の高まりを背景に旅行用品や靴、アクセサリーなどが堅調だった。雑貨(4.3%増)は引き続き高級時計や宝飾品など高額品が好調で、美術・宝飾・貴金属が2桁伸長(11.7%増)し、9カ月連続プラス。さらに化粧品(2.1%増)が5カ月ぶりにプラスに転じた。
食料品(2.8%増)は、前月に続きプラスだった菓子(8.7%増)と惣菜(5.7%増)が牽引し、その他食品(1.8%増)が4カ月ぶりのプラス。人気の物産展などの食品催事が堅調。弁当や惣菜では巣ごもり需要関連が底堅く、菓子は土産需要の復調が加わった。おせちやクリスマスケーキの予約はインターネット通販、店頭共に好調に推移している。
衣料品(1.7%増)は、3カ月ぶりのプラスだった婦人服(4.3%増)が牽引。気温の低下に伴いコート、ブルゾン、ジャケットやセーターなどの売れ行きが好調だった。
免税売上高(88店舗)は約31億4000万円で、前年比は49.3%増。2カ月連続プラスで、前月(約29億9000万円、前年比42.4%増)とほぼ同水準の伸長率。ただ前々年比は87.7%減で、前月(88.1%減)と同様に厳しい状況だ。購買客数は約6000人で、前年比24.5%増となり、前月(約6000人、13.1%増)に続きプラス。しかしながら前々年比は98.4%減で、ここでも前月(98.4%減)同様の厳しさが続く。1人あたりの購買単価は約50万4000円、前年比19.9%増となり、前月の水準(約48万4000円、前年比26.0%増)を維持した。