2024年11月19日

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コロナ下で注目度高まる百貨店の自転車売場

5階紳士のフロアに登場した自転車売場

東武百貨店池袋本店に昨年8月に誕生した自転車売場が健闘を見せている。コロナ下で電車通勤を避けたい、外出自粛による運動不足を解消したいといったニーズをとらえ順調に売上げを伸ばしてきた。

スポーツ用品売場ではなく、5階紳士服フロアの中央に約25坪の売場を構えた。自転車本体だけで40台以上を展示、取り寄せも可能だ。以前はスーツを扱っていた場所で、今も売場の周囲はアパレルブランドが並ぶ。「百貨店の紳士服、特にスーツは、仕事着のカジュアル化や新型コロナによる在宅勤務の増加の影響で、苦しい状況が続いていた。ファストファッションに押されていた部分もある。そのような状況でカテゴリーの垣根を越えて紳士服のフロアで自転車を扱うことで、新しいお客様の獲得を狙った」(東武百貨店 スポーツ・子供・紳士服部 ショップ管理第一課マネージャーの佐藤敬一氏)。その狙いは大きく当たり、オープン以降毎月、以前の約2倍の売上げ(場所対比)になっている。

メインの顧客層は30~40代の男性で、ハウスカードホルダーではない新客が8割を占める。ただ家族での来店も多く、実際取材時にも30代ぐらいの男性とその父親と思われる親子がそれぞれ電動自転車を購入していた。また購入者の半分は新たに自転車を始めてみようという初心者だそうだ。普段の服や洋品を購入するついでに売場を見ていく顧客も少なくない。また百貨店ならではの外商では店外催事で展示したところ、その時は販売とはならなかったが、後日売場に来店し成約となった例がいくつかあった。

ショップはグローバルコネクション社の「ベストスポーツ」が運営を手掛ける。常設の売場として前述の紳士服フロア中央で、折りたたみ自転車(フォールディングバイク)ブランドの「DAHON」や「Tern」を扱う。また4月までのポップアップで「FUJI」も展開している。DAHONはフォールディングバイクのカテゴリーにおいて世界最大のブランド。簡単に折りたためるため、マンションの部屋にも置いておきやすく、輪行(自転車を電車やバスなどの公共交通機関に載せて移動すること)もしやすい。Ternは都市生活での移動手段とスポーツ・フィットネスという目的を兼ね備えたバイクブランドで、こちらも折り畳みができるものがメイン。FUJIは1899年に生まれた日本の自転車メーカー。ツール・ド・フランスでも使用される競技用バイクなども生産しており、初心者からプロまで幅広い顧客を持つ。

東武百貨店池袋本店で人気の折り畳みタイプの自転車

東武池袋店では折り畳みで初心者もすぐに乗り出せるものから、ロードバイクまで様々なレベルに対応できる商品ラインナップと、それを扱う技術者が揃っている。泥除けが標準装備と街中で乗りやすく、明るいカラーラインナップも特徴のDAHONの「Route」(4万5900円)や、3段変速を装備しながらも7kgと小さく軽い「K3」(7万6500円)などが人気だ。また通勤などにはスピードが出しやすいTernの「Verge N8」(7万7400円)などがオススメだそうだ。注目は先日日本に初上陸したフォールディングながらドイツのBosch製e-Bike Systemを搭載した「Vektron S10(ヴェクトロン)」(29万8000円)。短時間充電でも長距離走行が可能で、自然で静かなアシストによるスムースな走行体験を実現する。折り畳み時には転がして運べ、重い自転車を持ち上げる必要がないよう設計されている点もタウンユースに適した自転車ならでは。

ショップでは用途や好みのブランド・デザインなどを聞き、身体に合わせた調整なども行う体制を整えている。丁寧な接客や顧客に合わせた提案力も百貨店ならでは。すべての商品は在庫があれば持って帰ることも可能だ。また2カ月以内には初期点検を無料で、その後も有料で随時メンテナンスを受け付けている。ポップアップ展開のFUJIも今後常設の売場でメンテナンスが受けられるなどアフターサービスもばっちりだ。

コロナ下で売上げが伸長している自転車、これから暖かくなれば更なる需要の拡大が見込める。今後は試乗会などのイベントも開催する予定で、将来的には「現在の2倍の売上げ」(佐藤さん)を目指していく。