藤崎、衣料品仲卸と組んで新業態を開発 共創で地方の課題を解消
小売業者と仲卸業者のタッグで〝衣料品不況〟から脱却だ――。藤崎は11月5日、仲卸のヤマセンと共同で運営する新業態の衣料品店を、仙台市若林区に構える「ヴィーフジサキ六丁の目店」に開いた。百貨店が主に扱う〝ハレ〟の衣料品でなく、いわゆる「ワンマイルウエア」をはじめ、家の中や近距離の外出などを想定した普段着を揃える。新型コロナウイルスの感染が拡大して以降、旺盛な「巣ごもり消費」に照準を合わせた。郊外や地方に位置する百貨店の多くは、衣料品の調達や販売を大手のアパレルメーカーに依存。品揃えの同質化は、衣料品不況の一因だ。加えて、コロナ禍によるダメージが深刻なメーカーは、在庫の余剰を防ぐために生産量を減らし、郊外や地方の百貨店への供給は停滞。客の需要に対応し切れなくなってきた。藤崎は、商品の調達力に長けたヤマセンと組み、それらの問題を解消する。
【写真】仙台市若林区の「ヴィーフジサキ六丁の目店」に11月5日にオープンした「アルモニー テラス」
衣料品店の名称は「アルモニー テラス」。アルモニーは仏語で「調和」を意味し、テラスは家の外と中の間である「縁側」をイメージした。地域に調和し、より日常を感じられる商品を提案する姿勢を示す。店内の環境にも木目調や植物を多用。テラスのような雰囲気を演出する。
アルモニー テラスの面積は約70平米で、商品は約500点が並ぶ。構成比は婦人服が50%、婦人雑貨が20%、美容雑貨やヨガウエア、スポーツ用品らからなる「ビューティー&ヘルス」が10%、生活雑貨とインテリア雑貨が5%ずつで、中心価格帯は5000円~1万円に抑えた。主なアイテムでは、カットソーが4900円~9900円、ニットが5900円~1万1000円、ブラウスが6900円~1万2000円、バッグが6900円~1万3000円。
運営体制は、藤崎が全体のディレクションを、国内外で約250のメーカーと取引するヤマセンが商品の調達や販売員の確保を、それぞれ担当。藤崎の「百貨店のマーチャンダイジングの軸は『ハレ』や『オケージョン』だが、子育て世代が多い地域を商圏とするヴィーフジサキ六丁の目店は『デイリー』の需要が中心で、カジュアルウエアやワンマイルウエア、美容雑貨などを集めて生活提案型のショップを構築する」(マーケティング統括部の千葉伸也氏)という方針を踏まえ、ヤマセンが仕入れる。ヤマセンの安曇翼常務は、品揃えのポイントを「ワンマイルウエアが中心だが、食事会にも行けるクオリティ。ただ、(デイリーニーズが多いため)プライスラインは高くなり過ぎないように意識した」と説明する。
品揃えはシーズンごとでなく、販売員やヴィーフジサキ六丁の目店の店長、婦人服の担当者ら〝現場〟の声を素早く反映。客の要望や不満を見逃さず、精度を上げる。既製品を販売するだけでなく、生地などの産地の工場と連動した「D2C」も検討中だ。イベントも開き、地域の情報発信拠点を果たす。
初動は上々だ。40~60代と幅広い世代を取り込み、11月13日時点での売上げは想定を上回る。商品では、ボトムスが好調。プライスラインを低めに設定した結果、トップスと合わせて買う女性が多く、セット率は2に迫る。一方、フィットネスウエアやヨガウエア、美容雑貨は鈍く、ラインナップの修正を急ぐ。
百貨店業界では珍しいビジネスモデルだが、ヤマセンの安曇氏は「地方の百貨店と仲卸はアゲンストとされる企業だが、得意分野を合わせ持てば魅力的なショップ、ビジネスを開発できると、同じ境遇の仲間に勇気を与えたい」と意気込む。藤崎の千葉氏も「東京を中心とするサプライチェーンの変化は、地方にとってチャンス。共創で地方ならではの価値をつくり、他の商業施設や無店舗販売へ進出していきたい」と鼻息が荒い。
杜の都に吹き始めた新風は〝全国〟を目指す。