2024年11月19日

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「ふかや花園プレミアム・アウトレット」好調な船出

10月20日にグランドオープンした「ふかや花園プレミアム・アウトレット」

三菱地所・サイモンが10月20日に開業した「ふかや花園プレミアム・アウトレット」が好調な船出をみせた。オープン初日には開店を待つ約3700人の行列ができ、終日賑わいが続いた。ふかや花園プレミアム・アウトレットは、埼玉県深谷市による農業と観光の振興によって広域的な活性化を目的とした「花園IC拠点整備プロジェクト」の中核を担う施設で、同プロジェクトの一環として深谷市とキユーピーの施設が先行オープンしている。

ふかや花園プレミアム・アウトレットは、三菱地所・サイモンにとって2013年に開業した酒々井プレミアム・アウトレット以来、約10年ぶり10カ所目の出店。都市部から一定の距離を置いた郊外部で、高速道路のインターチェンジに近い立地を出店戦略としているプレミアム・アウトレットは、広域商圏からの集客に成功している。

関東圏においては、御殿場プレミアム・アウトレットが東名高速道沿いに、佐野プレミアム・アウトレットが東北自動車道沿いに、酒々井プレミアム・アウトレットが常磐自動車道沿いに、あみプレミアム・アウトレットが東関東自動車道沿いにあるが、ふかや花園プレミアム・アウトレットが関越自動車道沿いに誕生。首都圏における主要高速道路を押さえ、車での集客基盤を盤石とした。

ふかや花園プレミアム・アウトレットのアクセスの良さは、花園ICの至近にあるだけではない。秩父鉄道ふかや花園駅から徒歩3分の距離で、今年10月からは秩父鉄道の列車が増便され、土日祝にはSLも停まる。

加えて、JR高崎線深谷駅と東武東上線森林公園駅から路線バスが乗り入れ、東京駅、新宿駅、大宮駅、川越駅から高速バスも運行。こうしたアクセスの良さを背景に、三菱地所・サイモンでは「深谷市と熊谷市を含めた埼玉県北西部を中心とした埼玉県全域と、関越自動車道沿いの群馬県の前橋市と高崎市を重点商圏として捉え、さらに東京からなども含めて広域からの集客を想定している」(山岸正紀社長)。

深谷市のイメージキャラクター「ふっかちゃん」(左)と山岸社長(中央)、相本支配人

敷地面積は約17万6800平米、店舗面積は約2万7500㎡、店舗数は137、駐車場収容台数は約3000を“プロフィール”とする、ふかや花園プレミアム・アウトレットはアウトレットの枠を超え、ショッピングだけにとらわれず、来場者が思い思いに過ごせる施設を具現化した。

プレミアム・アウトレットは従来、アメリカのリゾート都市をイメージした街並みをつくり、それによって非日常を演出して「ならでは」の強みとしてきた。「既存のプレミアム・アウトレットにとっても、ふかや花園プレミアム・アウトレットにとっても、非日常は強みではあるが、これに加えてふかや花園プレミアム・アウトレットの場合は地域との共生をテーマに、今までになかったアトラクションやアート、地元にこだわったコンテンツを提供し、ショッピング以外でも感動を味わえる施設とした」(山岸社長)。

その具体的な役割として、ふかや花園プレミアム・アウトレットのの相本泰裕支配人は「130以上の店舗からなるアウトレットでショッピングに専念したり、場内にあるアートオブジェやウォールアートを見学したり、愛犬と場内を散策したり、フードホールで地元グルメを味わったりと、来場されるお客様それぞれが思い思いの楽しみ方ができる施設とした。加えて、隣接して先行オープンした深谷市の農業と観光の魅力を発信する場となる『深谷テラスパーク』、キユーピーの野菜の魅力を体験できる複合型施設『ヤサイな仲間たちファーム』と連携して賑わいを創出していく。深谷市ゆかりの「渋沢栄一記念館」で歴史に触れたり、秩父や長瀞と相互送客キャンペーンを組んで埼玉県北西部エリアの地域観光活性化にも寄与したりしたい」と語った。

実際、ふかや花園プレミアム・アウトレットには新しい試みが多くみられる。その1つ目は、ハイブランドを中心にファッションからアウトドア、ゴルフ、趣味、生活雑貨まで全137の多彩な店舗を集積し、中でも飲食・食物販を充実させたこと。2013年の酒々井プレミアム・アウトレット開業時の飲食・食物販の店舗数と比べると、倍の規模にあたる41店舗を集積している。

地元の名店や地元グルメを集め、約800席のフードホールにある飲食店には深谷ねぎに代表される地元食材を使ったメニューが登場。食物販店からも長瀞町で人気のフィンガーフード専門店の「長瀞とガレ」が極上きなこソフトクリームを、丸広百貨店が展開する「モイサイタマ マルヒロ」は花園巣蜜ソフトクリームやサイボクハムの豚まんを、それぞれ販売する。成城石井などのスーパーも出ており、周辺のデイリー需要も意識した。

2つ目は、アートやプレイグラウンドなどに代表される滞在型のコンテンツを取り込んだこと。アートについては彫刻の森芸術文化財団が所蔵する彫刻作品やアーティストが描き下ろしたウォールアートを楽しめる。フードホールでは約25メートルのガラス窓に10人のアーティストがデザインしたプロジェクションマッピングを日没後に投影。プレイグラウンドには深谷市に本社を置く赤城乳業が、製造・販売するガリガリ君をモチーフにしたアトラクション「あそぼ!ガリガリ君」を手掛ける。

プレイグラウンドの「あそぼ!ガリガリ君」

3つ目は、愛犬とともに快適に滞在できるペットフレンドリーな環境を整えたこと。愛犬と一緒での入店可能店舗は約70で、フードホールのテラス席でもペットと一緒の食事が可能だ。「Pet Paradise×上島珈琲店」ではペットファッション、グッズの販売のほか、愛犬と一緒に飲食を楽しめるカフェスペースを設けている。そのほか、共用部に足洗い場やリードフックなどを常設したペット休憩所を完備した。

4つ目は、施設のテーマにしている地域との共生を具現化したこと。ブリックフィールドのエリアには深谷市にゆかりのレンガを施し、フォレストフィールドのエリアには埼玉県北西の緑豊かな自然の風景をデザイン。フォレストフィールド内にある大屋根を構えた広場(リリープラザ)は、深谷市が全国で有数の生産量を誇るユリの花をイメージした。

深谷市の名産ユリの花をイメージした「リリープラザ」

総数で約2000人の従業員が施設に関わり、初年度の売上げ目標は約260億円。

三菱地所・サイモンはインバウンドに強く、新型コロナウイルス禍前で15%程度のシェアがあり、その押し上げ効果で2019年度には全9施設で3434億円の売上げを計上した。一方で、直近の21年度はインバウンドがほとんどないにもかかわらず、売上げを約2950億円にまで戻した。施設体験価値の向上に努め、国内顧客からの支持を高めたことによるもので、インバウンドを除いた国内市場規模としては2019年度並みに回復したとみられる。

出店や開業後の増設にも前向きで、ふかや花園プレミアム・アウトレットに次ぐ11カ所目は「(仮称)京都城陽プレミアム・アウトレット」が予定されている。京都府城陽市の東部丘陵地に位置し、新名神高速道路の大津~城陽間の開通に合わせてオープン。りんくう、神戸三田に次いで関西圏で3カ所目となる。

(塚井明彦)