東京ミッドタウン八重洲の全容(上)
三井不動産が東京駅八重洲駅前で開発を進めてきた「東京ミッドタウン八重洲」が竣工し、2023年3月10日にグランドオープンすることが決定した。高層階に入る国内初出店となる「ブルガリ ホテル 東京」の開業も2023年4月と定まった。今年9月17日には東京ミッドタウン八重洲の地下1~2階に「バスターミナル東京八重洲」(第1期エリア)、商業ゾーンとなる地下1~3階のうち地下1階の13店舗が先行オープンした。
22年8月に竣工した東京ミッドタウン八重洲は、「八重洲セントラルタワー」(地下4階~地上45階)と「八重洲セントラルスクエア」(地下2階~地上7階)からなり、敷地面積は約1万3433平米、2棟合わせた延床面積は約28万9750平米。八重洲セントラルタワーにオフィス、店舗、ホテル、小学校、バスターミナル、八重洲エネルギーセンターなどが、八重洲セントラルスクエアにオフィス、店舗、子育て支援施設などが入る、都心型大規模複合開発だ(ミクストユースの街づくり)。
東京ミッドタウン八重洲は2007年に赤坂に開業した「東京ミッドタウン」(延床面積約56万3800平米)、18年開業の「東京ミッドタウン日比谷」(同約18万9000平米)に続く3施設目となる東京ミッドタウンブランドで、「ジャパン・プレゼンテーション・フィールド~日本の夢が集う街。世界の夢に育つ街~」を施設コンセプトに、「JAPAN VALUE」を世界に発信し続ける街を目指している。
7~38階に整備されるオフィスフロアは、リアルエステート・アズ・ア・サービスを推進する新時代のオフィスビルとして「新時代の働き方を目指す企業を支援する施設づくり」、「社内外の良質なコミュニケーションを生む“行きたくなるオフィス”」、「最先端技術の活用による働き方支援」を3つの大きな特徴とし、施設内にビジネス交流施設、シェアオフィス、カンファレンスを整備することで、ワーカーそれぞれのワークシーンに合わせた最適な働き方を提供する。
4~5階には国内外のビジネスパーソンが交流し、学び、共創することで都市や地域にイノベーションを起こす「イノベーションフィールド八重洲」が23年3月にオープン予定。三井不動産がこれまで培ったノウハウやネットワークを生かし、地域や産業分野を超えて多様な連携が生まれる「機会」とイノベーションに必要な「場と機能」を提供するビジネス交流施設となる。テナント企業向け会員制施設・サービスは23年2月に「ラウンジ」(24階)と「会議室」(7階)、4月に「フィットネスジム」(24階)がオープン予定。23年春には三井不動産が展開する法人向けシェアオフィス「ワークスタイリング」が7階にオープンする。
最先端技術の活用による働き方支援では、感染症対策だけでなく、利用者の利便性向上を図るため「完全タッチレスオフィスの導入」や「ロボットによるフードデリバリーサービス」に加え、「全フロア5G対応」などの最新技術を活用。首都圏大規模オフィス初となる完全タッチレスオフィスは、オフィスエントランスからテナント執務室までの入館導線の完全タッチレス化を実現する。顔認証によるオフィス入退館システムやホログラムなどの非接触技術の導入、専有部入口の自動ドア化などにより、オフィスワーカーは接触行為を一切行うことなく執務室への入室が可能となる。
働き方を支援するロボットについては、ビルメンテナンス業務の省人化に向けた「清掃ロボット」や「運搬ロボット」に加え、「デリバリーロボット」も導入される。デリバリーロボットはフードデリバリーの活用に加えて、施設内の飲食店が提供するテイクアウト品の執務室までのデリバリーをロボットが担う。
日本初進出のブルガリ ホテル 東京は、40~最上階45階の6フロアに入居する。ツイン・ダブルルームを中心に、スイートから究極のブルガリスイートまで多彩なタイプを取り揃えた98部屋の客室をはじめ、バー、イタリアンレストラン、チョコレートブティックなどのほか、約1500平米のスパにはフィットネスジムや25メートルの屋内プールなどが併設される。
1~4階には、再開発地区内に従前所在していた「中央区立城東小学校」の新校舎が22年9月1日に開校した。城東小学校内には2階に体育館、3階に屋内プール、4階に全天候型の屋上校庭を整備し、天候に左右されることなく授業ができる。
また、屋上などにビオトープや菜園・水田を整備し、東京駅前立地でありながら自然とも触れ合える。八重洲セントラルスクエアの2~3階に23年4月1日に開園が予定されているのが、子育て支援施設「昭和こども園(仮称)」。同園は都内で21園の認可保育園・認定こども園を運営している社会福祉法人東京児童協会が運営する。
地下4階に開設された「八重洲エネルギーセンター」は、9月から東京ミッドタウン八重洲と「八重洲地下街」への電気と熱の安定供給を開始している。八重洲エネルギーセンターは三井不動産と東京ガスが共同で設立した三井不動産 TG スマートエナジーが日本橋、豊洲に続く3施設目のエネルギーセンターとして立ち上げたもので、東京ミッドタウン八重洲の隣接地区で現在開発が進行中の「八重洲二丁目中地区第一種市街地再開発事業」でも完成後の建物にエネルギーを供給することが決まっている。
八重洲エネルギーセンターに整備したのは、中圧の都市ガスを燃料とする大型のCGS(ガスを燃料に電気と熱を生み出すコ・ジェネレーションシステム)を中心とした自立分散型のエネルギーシステム。八重洲エリアへの非常時のエネルギー供給を継続するとともに、平常時は最新のICTを活用した効率的な機器運転などによる省CO2を実現する。
非常時にもBCP(事業継続計画)に必要な電気と熱の供給(年間ピークの50%)が可能で、系統電力停電時にも中圧の都市ガスの供給が継続する限りCGSにより発電する。断水時にも蓄熱槽の水を熱源機器の冷却水として有効活用することにより熱供給を継続。非常時には地域の防災拠点機能の核となる城東小学校に加え、バスターミナルや帰宅困難者のための一時滞在施設といった公益施設にも電気と熱を継続して供給し、近隣エリアを含む都市の防災力向上に貢献する。バスターミナルへのエネルギー供給を行うことで、被災者の輸送にバスを活用することも可能となる。
(塚井明彦)