三越伊勢丹、中元商戦は「SDGs」や「新しい生活様式」に焦点
三越伊勢丹は12日、中元商戦に向けたギフトを発表した。「みらいへつなぐ贈りもの」をテーマに、世界農業遺産に認定された石川県能登地域をフィーチャーしたギフト、2016年から手掛ける国立博物館と協業したギフト、プロの味を簡単に食べられる「フローズン・セレクション」、オンラインギフトサイト「ムードマーク バイ イセタン」などを報道陣に紹介。世界的なキーワードである「SDGs」や「サステナブル」、コロナ禍で需要が増加する冷凍食品やソーシャルギフトへの対応を強め、前年実績のクリアを目指す。
テーマはギフトカタログの巻頭特集を兼ねており、今回のメインは能登地域。奥能登の珠洲に伝わる揚げ浜式製塩を使った「塩サイダー」(小松飲料)、石川県産の素材を使ったライスバーガー「ごはんば~が」(根上屋)などを揃えた。
能登地域だけでなく、岡山県が日本一の生産量を誇るものの、栽培の難しさなどから出荷量が30年前の1割ほどに減少した「マスカット・オブ・アレキサンドリア」を守るため、それを用いたゼリー「翡翠ぜりぃ」(宗家 源 吉兆庵)や「瀬戸田レモンケーキ&マスカットオブアレキサンドリアレモンケーキ」(島ごころ)など、あるいは紙の使用量を減らせるセラミック製のコーヒーフィルター「セラフィルターセット」(月兎印)や北海道内の廃車の窓ガラスを再利用した「タンブラーペア」(小樽再生硝子)ら食品以外も、“みらいへつなぐ贈りもの”として打ち出す。ラインナップは45点を数える。
2016年に発売して以来、売上げが好調な国立博物館とのコラボギフトは今回、創立150周年を迎える東京国立博物館とタッグ。南宋時代の宮廷画家、李迪の紅白芙蓉図を缶に施した「紅白芙蓉図 ゼリーギフト」(彩果の宝石)、清時代に活躍した王岡の四季花鳥図巻を缶にデザインした「四季花鳥図巻 プティ・ガトー・アソルティ」(アンリ・シャルパンティエ)など22点を揃えた。全ての商品には、解説の動画を用意。同博物館の特任研究員、田沢裕賀氏が作品の魅力や作者の生い立ちなどを説明する。
そのほか、京都国立博物館や奈良国立博物館、九州国立博物館、東京国立近代美術館などと協業したギフトも販売する。
フローズン・セレクションとムードマーク バイ イセタンは、コロナ禍での“新しい生活様式”に照準を合わせた。フローズン・セレクションは、ティエフケーが展開する「TOKYO FLIGHT KITCHEN」が担当。世界で50社以上の航空会社と契約してファーストクラスなどの機内食を提供しており、「国産鰻重御膳」や「洋食・中華プレート」、「イタリアンパスタ」などからなり、温めるだけで手軽に食べられる。コロナ禍でテレワークが続く子供の昼食を心配する親の要望を受け、三越伊勢丹が開発した。すぐに食べられる、弁当のような形で販売するのは初めてという。
ムードマーク バイ イセタンは4000以上のギフトを取り扱うが、近年のソーシャルギフトの定着で「売上げが毎年倍々のペースで伸びている」(古口晃久第1MDグループギフトデザイン営業部企画担当マネージャー)ため、中元商戦に向けて100点ほどの好適品を特集する。
同社は昨年の中元商戦や歳暮商戦で前年の売上げを捉えており、古口氏は「恐らく日本人の気質だが、東日本大震災の直後と同様、コロナ禍で“応援ニーズ”が増えた」と分析する。カテゴリーでは特に菓子が伸びており、SDGsやエシカル、コラボといったキーワードに合致するギフトも人気だ。今年の中元商戦も「傾向は変わらない」(古口氏)と予測しており、前年実績の堅持を狙う。
(野間智朗)