移動スーパーとくし丸 稼働台数が500台を突破
全国700万人の買い物難民に向けて移動スーパーを展開しているとくし丸(本社・徳島市、社長・住友達也氏)の移動スーパー車の稼働台数が500台を突破した。次なる目標は全国の地域スーパーとのネットワークを拡げ1000台の大台に乗せる。
同社社長の住友達也氏がとくし丸事業関係者向けに事業活動などを発信している「とくし丸通信」(20年3月)によると、「やっと、ついに、ようやく、遅ればせながら、本当にとくし丸の実質稼働台数が500台を超えることが確定しました。創業から丸8年と1カ月。達成に後れをとったのはやはりテマヒマかかる、人を中心にした事業であることを実感しています」とコメントしている。
手間暇がかかる事業とはいえ、とくし丸が展開する移動スーパーのビジネスモデルが受け入れられたことには間違いない。300台超えした時のとくし丸通信(18年5月)では「とくし丸の稼働台数が300台を超えました。1台が約150人のお客様を抱えていますから全国で約4万5000人の買い物に困ったお年寄りをサポートしていることになります」とコメント。300台で約4万5000人であれば、500台では約7万5000人の買い物難民を支えていることになる。1000台が達成できれば15万人をサポートできることになる。
とはいえ、とくし丸としては「全国で買い物難民が約700万人(2016年の経産省調査)といわれていますから、まだまだこれから。ほんの序の口」とも語っている。最近農水省が発表した買い物難民の数は700万人よりさらに多い。同省によると、近くに小売店がないことなどにより食料品の確保が難しい65歳以上の高齢者が2015年の時点で全国に824万6000人おり、2005年からの10年間で21・6%増加したという推計値を発表した。また、同省は商店やスーパー、コンビニなどまでの距離が自宅から500m以上あり自動車を使えない65歳以上を「食料品アクセス困難人口」と設定。その人口を地域別にみた分析によると、東京圏、名古屋圏、大阪圏の3大都市圏での伸びが大きく、都道府県別では神奈川県、東京都、大阪府の順。これは地方だけでなく、都市部でも食料品の確保が容易でない人が増えていることを物語っている。
高齢者から支持されたとくし丸のビジネスモデルとは、本部機能を担うとくし丸が全国の地方スーパーと提携し、個人事業主が販売パートナーとなって移動スーパーの車両を所有し、提携スーパーが取り扱う生鮮食品や生活雑貨の移動販売を行うというもの。とくし丸がノウハウやブランドなどを提供する事業推進のプロデュース役、地域スーパーが商品供給基地、販売パートナーがオーナー経営者となる仕組み。移動スーパーの車両が軽トラックといっても冷蔵庫付きの専用車で、生鮮食品含めて400品目以上、約1200~1500点程積むことができる。週2回家庭の玄関先まで出向き、直接顔を合わせ対面販売する。しかも買い物だけにとどまらず、見守り隊としての役割も果たしている。とくし丸では高齢者の要望に何でも応える「おばあちゃんのコンセルジュ」を目指して活動しているという。
すでにとくし丸の提携スーパーは20年3月時点で全国123社となり、その合計店舗数は2000店舗を超え、進出していない都道府県は沖縄県のみとなった。また、単月の流通総額が10億円を突破しており、今期着地は100億超過見込み。ちなみに移動スーパー500台超えの年別推移は、2012年2台、13年5台、14年9台、15年33台、16年102台、17年199台、18年275台、19年376台、20年3月16日500台。記念すべき500台目となったのは和歌山のスーパー・松源の3号車。
新型コロナウィルスの緊急事態宣言が出た7都府県を走っているとくし丸の車両は87台(東京17台、神奈川10台、埼玉13台、千葉9台、大阪17台)。とくし丸にとって顧客のほとんどが高齢者であるため、コロナ対応に万全を期し、マスクの着用、アルコール消毒液の使用、販売員パートナーの体温計測票の掲示などで販売現場での安全対策を徹底させている。