【前編】改装にみるニューノーマル時代の商業施設づくり
今年の春もリニューアルが次々にオープンしている。今春のリニューアルで特徴的なのは10周年といった節目の年を迎えた商業施設が周年イベントや定期建物賃貸借契約満了(以下定借満了)と合わせて大規模改装を手掛けたこと。百貨店などの大型店舗が抜けて、空きとなっていた大型区画を埋めるための大型改装もみられる。そして新型コロナウイルスの感染拡大によって生活様式も働き方もすっかり変わり、今のままの店舗体制ではウィズコロナ・アフターコロナ時代を生き抜けないとしてリニューアルをスタートさせ、ニューノーマル時代の商業施設づくりへの挑戦も始まった。
開業10周年で大規模改装に踏み切ったのが「あべのキューズモール」、「二子玉川ライズ・ショッピングセンター」、「JR博多シティ」など。「カラフルタウン岐阜」は開業20周年でのリニューアルだ。定借満了に伴うなどで開業以来初の大規模改装となる商業施設も多い。「三井ショッピングパークららぽーと富士見」、「GINZA SIX」、「エキマルシェ大阪」などだ。GINZA SIXの場合、開業4周年を迎えた今春、新しい時代のラグジュアリーを提案するファッション&ライフスタイルブランドや高級フードショップなど国内外40以上の店舗を一新。今夏にはイタリア発の総合フードマーケット&レストラン「イータリー」日本旗艦店と、老舗鰻専門店の「伊勢定」がオープンする。
イオンモールも店舗増床と改装が続いている。改装については「イオンモール京都桂川」が20年春から21年春までの約1年に亘る大改装で全店舗数の約4割にあたる85店舗を刷新。国内最大級のショッピングモール「イオンレイクタウン」でも3期に亘る1年がかかりの大規模改装が始まった。22年春の第3期が完成すると新規・移転・改装合わせ約100店舗が刷新される。100店舗規模の大規模改装でもイオンレイクタウンの場合は大型店舗の退店でなく定借満了に伴うもので、4月29日の第1期で新規・移転・改装を合わせて39店舗がオープン。第2期、第3期の60店舗を合わせて約100店舗が対象となる。イオンレイクタウンにはkaze・mori・レイクタウンアウトレットの3館を合わせると約710の専門店があるのでリニューアル店舗の割合はさほど多くはない。イオンレイクタウンは定借満了を迎えた2015年の開業以来最大規模の改装で約710店舗あるうちの7割以上にあたる509店舗を一新した経緯がある。
セブン&アイホールディングスのショッピングセンター「アリオ」も2021年は改装施設が多い。セブンアンドアイホールディングスの総合デベロッパー会社として商業開発・運営管理などを手掛けるセブンアンドアイ・クリエイトリンクによると、21年は「加古川SC(仮称)」が、21年秋のリニューアルオープンでイトーヨーカドー加古川店が一新される。2014年11月に開業した地域最大の商業施設「グランツリー武蔵小杉」は開業以来初となる大型リニューアルで気軽に立ち寄れる新たな食ゾーンを新設する。約100の専門店・アリオモールとイトーヨーカドーからなる都市型ショッピングセンター「アリオ北砂」は4月下旬、1階にイートインとテイクアウトを融合させたフードホール「小名木TABLE」をオープンさせた。本年秋に開業10周年を迎える「アリオ倉敷」は住まいや食の強化など時代のニーズに合わせたリニューアルを予定。その他2021年は「アリオ札幌」、「アリオ仙台泉」、「セブンパークアリオ柏」、「鶴見SC(仮称)」、「アリオ鷲宮」、「アリオ川口」、「フルルガーデン八千代」などの改装が計画されている。ちなみに22年はアリオ亀有、橋本、深谷、上尾、八尾などの改装が挙がっている。
核店舗を担ってきた百貨店やGMSなどがSCから退店するケースも続いている。その店舗跡地を再生するための大型改装もみられる。「港南台バーズ」、「イオンモール岡崎」、「アルパーク」、「トナリエつくばスクエア」、「イオンモール岡山」などである。日本エスコンが手掛ける「トナリエつくばスクエア」は本年5月複合型商業施設を立ち上げる。かつての「クレオ」は西武百貨店とイオンの2つの核店舗と現在も営業継続中の「モグ」と「キュート」が後から加わり 茨城県下最大級の商業施設となっていたが、2核店舗が相次いで閉店となった(クレオ専門店街も閉店)。日本エスコンがクレオとモグ、キュートも取得し、旧西武棟を商業施設とオフィスからなる「トナリエクレオ」を本年5月にオープンし、旧イオン棟にはマンションを完成させる。
「イオンモール岡崎」でイオン岡崎南店と2核を形成していた西武岡崎店が2020年8月に閉店。これに伴いイオンモール岡崎で20年秋から21年秋までの3期に亘る大改装が始まり、今春の第2期から百貨店跡を中心としたリニューアルにかかっている。3期合わせると新規・移転・改装で一新される店舗数は110店舗以上にもなる。開業以来初の大規模改装に乗り出したのが「イオンモール岡山」。約1年かけ、今春が第1期、今秋の第2期、来春の第3期で完成となる。今秋の第2期、本年2月末で営業を終了した「タカシマヤフードメゾン岡山店」の跡地へ最新のライフスタイルを提案するゾーンを構築する。
大和ハウス工業(運営管理・大和情報サービス)が大規模リニューアルを進めているのが「アルパーク」の西棟と東棟。2棟合わせた店舗面積は58,882平米。西棟は核店舗の天満屋広島アルパーク店が昨年1月に閉店してから閉館となっている。これが改装によってファッション、フードコート、スーパーなど40店舗誘致され、22年春に西棟の営業が再開となる予定。東棟は21年末から順次リニューアル。全体完成は23年春となる見込み。
名古屋駅前にある三菱地所の「大名古屋ビルヂング」が開業5周年で地下1階~3階の商業ゾーン・ショップ&レストランの大規模改装に着手。4月28日の第1期リニューアルでは飲食・食物販を中心にコスメ・生活雑貨などからなる新たな賑わいゾーン「大名古屋マルシェ」がオープンする。大名古屋ビルヂングの商業ゾーンの地下1階~1階には「イセタンハウス」が出店していたが20年8月末で閉店。今度は今回の開業5周年リニューアルでジェアール東海高島屋が運営する「ジェイアール名古屋タカシマヤ」が1階と2階の一部に日本最大級の高級時計ゾーン「ウオッチメゾン」を8月頃を目途に出店する。
その他、大規模改装で目立つのが「スマーク伊勢崎」、「コレットマーレ」、「天王寺ミオ」「エキマルシェ大阪」など。東京建物(運営管理・プライムプレイス)の北関東最大級のショッピングセンター・スマーク伊勢崎はエリアナンバーワンの楽しさと快適性を提供できるSCを目指してリニューアルを進めている。今回の改装は2018年の施設環境改善で始まり、フードコート、ベビールーム、キッズスペース、キッズトイレなどを再整備し、子育て世代が楽しめるようにした。2019年からは日常の利便性を含めあらゆる年代層から支持されるSCとして大型店の誘致を進めた。シネコン「MOVIX伊勢崎」の移転開業に始まり、大型家電量販店の「コジマ×ビックカメラ」、食品スーパーの「ヤオコー」、大型アミューズメント施設の「セガ」などが誘致され、フードコートも12の飲食店と約850席の規模に拡充となった。
このように第1期リニューアルでは各フロアに配置された核ゾーンのうち約50%を一新。そして今春から第2期がスタートし、今春「アカチャンホンポ」が先行開業。今秋には生活雑貨の「ロフト」が開業予定。今春はアカチャンホンポも含めレディス「ギャラリエBe」など約15店舗が新規改装オープンしている。もちろん今回の改装にはアフターコロナを見据えた新機能の新設や環境改善も含まれている。