2024年11月19日

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【前編】食や住に特化した無印良品の大型店舗の出店続く

関東地方で最大規模の「無印良品 東京有明」

良品計画が運営する「無印良品」の大型店舗の出店が目立っている。2020年12月に開業した「無印良品 東京有明」は住空間に特化した関東最大店。今春は5000㎡級となる「無印良品 港南台バーズ」が増床オープンする。同港南台バーズは堺北花田、京都山科に続く食に特化した店舗となる。今回のパートⅠで無印良品の大型店、パートⅡで良品計画の地域連携事業への取組みをとりあげる。

1980年に40品目からスタートした「無印良品」が昨年で40周年となり、現在7000品目超のスケールとなった。店舗数(2020年8月期現在)も国内479店舗、海外は31カ国以上に550店舗、合わせて1029店舗に達しており、国内外とも出店に弾みがついている。国内でいえばSC、GMS、駅ビル、ファッションビル、百貨店などに無印良品をはじめCafé&Meal MUJI、MUJIcom、MUJI to GOなどの多様な店舗を出店している。2018年の新規出店は国内が25店舗(無印15店、MUJIcom・Café&Meal MUJI合わせて10店)、海外は中国、韓国、香港などを中心に62店舗。続く19年は国内26店舗(無印良品20店、Café&Meal MUJI・MUJI to GO・MUJI Diner合わせて6店)、海外は53店舗。そして20年は国内18店舗(無印14店、Café&Meal MUJI・MUJIcom・IDEE合わせて4店)、海外が35店舗で、コロナ禍でも国内外とも出店の勢いはあまり落ちていない。

国内でこのところ目立っているのが無印良品の大型店舗の出店だ。それが「無印良品 堺北花田」(売場面積約3931㎡)、「無印良品 銀座」(同約3980㎡)、「無印良品 京都山科」(同約3775㎡)、「無印良品 東京有明」(同約4629㎡)、「無印良品 直江津」(同約4935㎡)、「無印良品 港南台バーズ」(同約4973㎡)などの無印ショップだ。その他にも「無印良品 近鉄四日市」(同約2288㎡)、「無印良品 錦糸町パルコ」(同約2797㎡)、「無印良品 ららぽーと沼津」(同約2179㎡)、「無印良品 イオンモール四条畷」(同約2565㎡)、「無印良品 コースカベイサイド横須賀」(同約2261㎡)など、2000㎡を上回る規模の大型店も次々にオープンしている。

2階にリフォーム窓口を集めた住特化型の「無印良品 東京有明」

20年12月3日にオープンした無印良品 東京有明は関東地方で最大規模の店舗。大型の無印良品の中には食に特化した大型店が目立っているが、東京有明の場合は住空間に特化している。良品計画東京有明店長の松橋衆氏は「これからの小売りは単品の商売には限界があり、もっと暮らし方や働き方を快適にする住空間が重要になる。この店は『空間を売る』を店舗コンセプトに、暮らしの全部が揃う百貨店を超え、生活者・地域・社会にとって役立つ“百八貨店”を目指している」という。

1階~3階からなる東京有明に具現化したのは、食品からスプーン、靴下など無印良品の全ての商品を揃えただけでなく、2階を住空間の拠点と位置づけ、暮らしの中で感じる困りごとを解決する「くらしなんでも相談所」、一部屋単位で受け付ける部分リフォーム、顧客自ら部屋づくりができるDIYサポート、全面リノベーションによる家づくりサービス、原寸大のモデルハウス「陽の家」も設置して「無印良品の小屋」も紹介する。くらしなんでも相談所では東京有明独自のサービスとして「お片付けサポート」がスタートした。このサポートは収納専門スタッフが自宅まで赴き相談に乗るもの。不用品引き取りをはじめ、普段使わないものを一時的に一箱単位で預かるサービス、掃除の専門資格を取得したスタッフが掃除の手伝いやアドバイスを行うなど、くらしの様々な困りごとに対応する。

2階ではこれだけにとどまらず、家・オフィス・商業施設・公共の4つの切り口で街づくりの提案も本格的に開始。オフィスであれば2階に良品計画スタッフが働く環境を直に見ることができる見えるオフィスモデルスペースが設置され、テレワークや在宅ワークに合わせた多様な働き方に対応したオフィスリノベーションを提案している。

生鮮からグロサリーまでフルラインを展開する無印良品 堺北花田

食の大型専門売場を搭載しているのが堺北花田、京都山科、港南台バーズなどの無印ショップだ。2010年にオープンした無印良品 堺北花田は18年3月の移転増床によるリニューアルによって食をテーマにした大型専門売場やCafé&Meal MUJI、フードコートなどが導入され、400㎡だった売場面積が全体で4300㎡の規模になった。これにより開設された食の大型専門売場は生鮮からグロサリーまでのフルライン展開となり、フードコンシェルジュも配置して生活者、調理する人の顔が見える食材にこだわっている。その日の最初に競り落とされた鮮魚がトラックで運ばれ、その日の午後に店頭に並ぶ鳥取県・境港の鮮魚を始め、泥付きのままの大阪府・門真れんこん、肉が苦手な人でも好きになる宮崎県・宮崎ハーブPremium(黒毛和牛)などがこだわりの代表的食材。食の売場にはグレーの吊りサイン(非食品は赤の吊りサイン)がかかり、「惣」のサインがあるところには惣菜、「果」の下には果物、「麦」の下にはベーカリーショップ、「菜」の下には野菜が並んでいる。

生産に係る情報発信に力を入れる無印良品 京都山科

JR山科駅前の山科ショッピングセンターに19年11月にオープンした無印良品 京都山科もイオンモール 堺北花田に続く食に特化した大型店。4000㎡近い売場には無印良品の標準的な品揃えに加え、野菜や肉、魚、惣菜、グロサリーなど、食に関する商材全般を取り扱い、生活者にとって遠い存在になってしまった畑や農場、漁場などの生産に関わる情報発信にも力を入れている。店舗は地下1階・1階・2階からなり、食については地下1階に生鮮から惣菜、グロサリーまで毎日の食卓に欠かせない食材を配置している他、無印良品のカレー店などの飲食店を併設したフードコートも開設。1階ではCaféMeal MUJIや菓子を展開。地下1階・1階には地域と協業体制をとって開設した京都で人気のベーカリーショップやクグロフを製造販売する焼き菓子店、野菜たっぷりの農家直営のスープ専門店、漬け野菜の量り売り専門店、生産者の顔が見える食材を使った惣菜売場などが配置されている。

JR港南台駅前に立地するSCの港南台バーズが今春増床リニューアルオープンする。ここに出店している無印良品 港南台バーズも同時に大増床に踏み切り、増床前559㎡の売場面積が地下1階・1階合わせて4973㎡の関東最大規模となり、関東地域初の食の大型専門店売場にもなる。港南台バーズで展開される食の大型専門売場は「食と農」をテーマに、地元の旬の野菜の他、生鮮食品やグロサリー、惣菜などを扱う。食の大型専門売場の運営はクイーンズ伊勢丹を運営しているエムアイフードスタイルが担う。

アウトドアグッズを集積した「MUJI CAMP TOOLS」を擁する無印良品 直江津

上越市にある直江津ショッピングセンターに20年7月に開業した無印良品 直江津も売場面積が大きい。約4935㎡もある店内にはスターバックスコーヒーとMUJI BOOKSからなる「BOOKS&CAFÉ」、「無印良品の家 陽の家」のショールーム、国内外のアウトドアグッズを集積した「MUJI CAMP TOOLS」、学び・遊び・発見ができるコミュニティスペース「Open MUJI」、木育広場などを配置。食の分野でも農産物直売所「旬彩交流館あるるん畑」と提携して毎日直送される野菜、発酵食品、乾物、米、地酒などの地域産品を取り上げた「なおえつ良品市場」や無印良品のカレーやラーメン、定食などを提供する「なおえつ良品食堂」などがあり、久世福商店やカルディコーヒーファームなども出店している。

世界旗艦店の「無印良品 銀座」は開業してもうすぐ2年となる

2018年12月で有楽町駅前の無印良品を閉め、19年4月銀座並木通りに移転オープンした世界旗艦店の「無印良品 銀座」がまもなく開業して丸2年を迎える。店舗面積世界最大級の無印良品銀座は地下1階に素の食をテーマとするレストラン「MUJI Diner」、1階~6階が無印良品店舗(売場面積約3980㎡)、6階~10階には泊まりながら無印良品を楽しめる「MUJI HOTEL GINZA」が日本初登場。無印良品 銀座は食に特化した店ではないが、初年度300万人を上回る来店があった。その集客源となったのが食をクローズアップして新しい挑戦もした1階の食のフロアと日本初となる地下1階の「MUJI Diner」などだ。開業初年度は国内顧客だけでなくインバウンド顧客の来店も多くみられたが、20年に入ると新型コロナウイルス感染拡大の影響で銀座からも無印良品 銀座からも訪日外国人が消えた。それでも女性を中心に幅広い年代の国内顧客の来店が続いている。有機栽培や無農薬などにこだわった青果売場、毎日店内で焼き上げるベーカリーショップ、深川めし、鶏めし、牛すき飯、鮭弁当など銀座周辺にも届ける日替わり弁当コーナー、ブレンドティー工房からなる1階食のフロアは一番人の入りが多い。朝7時30分から朝食を出している地下1階のMUJI Dinerと1階食のフロアは朝7時30分から営業し銀座の朝食需要に対応している。

良品計画社長の松﨑曉氏は「当社は『感じ良いくらしと社会』に向けて、無印良品の店舗を自ら考え実行して地域の活性化に取組む個店経営への転換を進めている。昨年7月に開業した無印良品 直江津は店舗スタッフ自らが地域に役立つために知恵を出し、行政や地元企業と協業して新しい取組をしている個店経営のモデル店舗となるもの。同店舗は直江津地区約4万人のマーケットにおいて第1四半期(20年9月~11月)に全世界の無印良品で8番目の売上実績を上げ、地元からも大きな反響をいただいている」と語っている。加えて松﨑社長は「社会に貢献できる事業構造を作り上げ、地域社会の課題に役立つ周辺事業やサービスを開発し、自ら運営を行うことで、生活・文化・環境の共存と発展に貢献していきたい」としている。

(後編に続く)