そごう・西武、採寸なしでピッタリなワイシャツを提案
写真を撮るだけで、採寸しなくてもピッタリなワイシャツを選べる!? そごう・西武が画期的なシステムを導入したと聞き、記者(男性、39歳)が西武池袋本店に足を運んだ。
多くの男性にとって、採寸に費やす時間は億劫で、販売員に身体を触られるのも恥ずかしい。新型コロナウイルスの感染が拡大して以降は、至近距離での接客にも抵抗がある。そうした心理的なハードルを取っ払ってくれるのが、そごう・西武が男性向けワイシャツ売場に導入した新しいシステムだ。
そごう横浜店で11月17日、西武池袋本店で同18日、それぞれ稼働した。ボディグラム社が手掛けるシステムは、AI(人工知能)の学習機能を駆使。年齢、身長、体重、性別を入力し、服を着たままスマートフォンで正面と側面の写真を撮影すると、首周りや肩幅、腹囲、手足の長さなど24もの項目が推定値で表示される。この間、わずか1~2分だ。実際、あっという間に採寸が終わり、商品を吟味できた。「首周りは、もう少しゆったりとさせたい」などの個人的な好みは、販売員が汲んでくれる。
「新型コロナウイルスの感染が拡大する前から、デジタルを活用した新しい売り方にチャレンジしたかった。緊急事態宣言にともなう店舗の休業中も、お客様の思考や行動がどう変わるか熟慮し、『試着も敬遠するのではないか』と仮説を立て、接触せずに採寸できるシステムを探し始めた」
車田裕樹MD本部商品部ファッション担当池袋本店担当マーチャンダイザーが、経緯を説明する。ボディグラム社のシステムを採用した理由は「全裸に近い状態で撮影しないと正しい数値を出せないシステムが一般的だが、たった2枚の写真で全体を精確に計測できる」からだ。個人情報の取り扱いに慎重な百貨店業界では、外部のシステムの利用や計測した数値の管理が障壁となるが、車田氏は「接客の後には必ずデータを消す」といったルールを制定。約5カ月を費やし、社内からゴーサインを得た。
販売員には、事前にレクチャー。使い方は簡単だが、接客のツールの1つとして使えるように意識付けした。
システムは、常設でなく3カ月間のトライアル。成果によって、他の店舗や売場などへの拡大を検討する。12月4日時点では「主に20~30代が『面白そう』と計測し、ほとんどがワイシャツを購入した。感想も『楽しかった』、『全身の採寸を見る機会は、なかなかない』と良好」(車田氏)という。精度は非常に高く、ベテランのフィッターによる実測に勝るとも劣らない。
売場のインターネット回線が不安定だと計測に時間がかかり、〝人力〟の方が速いという課題も浮かぶが、車田氏は「定着すれば使い道は多い。売場にパネルを置いてPRするほか、粗品を用意した体験会も開き、認知度を上げていく。実は、ボディグラム社はスマホ用のアプリも配信中。ワイシャツの売上げの約6割は代理購買で、例えば妻が夫のデータを持ってくれば、接客はスムーズになる。クリスマスのギフトは手袋やマフラーが軸だが、採寸のアプリが浸透すれば、ワイシャツやパンツのニーズも増えていくのではないか」と期待を寄せる。
デジタルとアナログを融合させ、満足度の高い買い物を提供する――。3カ月間の〝試験〟が、どう〝採点〟されるのか。興味深い。