≪首都圏郊外主要百貨店店長パネルディスカッション≫リアル店舗の魅力化と持続的成長への命題
9月16日(金)、ストアーズ社主催の「首都圏郊外主要百貨店店長パネルディスカッション」を3年ぶりに再開した(リーガロイヤルホテル東京にて)。京急百貨店、東急百貨店たまプラーザ店、伊勢丹浦和店、高島屋玉川店、東武百貨店船橋店(発言順)の店長を招いて、「リアル店舗の魅力化と持続的成長への命題」をテーマに、各店各様の将来の「あるべき姿」の実現に向けて、コロナ禍の劇的な環境変化の中で取り組んでいる短期・中長期視点で戦略・戦術を語って頂いた。
それぞれ前半と後半に分けて発言して頂き、前半では22年度重点施策の基本方針、上期に優先的に取り組んできた具体的な施策と成果などについて、独自の視点で語って頂いた。(司会:ストアーズ社編集部 羽根浩之)
「郊外型の未来形」がカタチに
◆京急百貨店
常務取締役 百貨店事業本部長 金子 新司 氏
京急百貨店の金子新司百貨店事業本部長は、開業以来のストアコンセプトである「生活者本位制百貨店」を根幹に、時代の変化に適応していく「郊外型百貨店の未来形の創造」への具体的な取り組みについて言及した。
1996年10月に開業した同店は昨年秋に25周年の節目を迎え、改めて、「地に足をつけて、地域のお客様により親しんで頂く、ヘビーユーザーになって頂けるように見直した」という。この前提として、京急電鉄グループは2019年4月にショッピングセンター事業と百貨店事業を統合し、京急百貨店は2事業本部体制に再編された。
この新体制のもと、百貨店事業の舵を切る金子常務は「百貨店を大事にしつつ、専門店との比率を最適化して、郊外型百貨店の未来形を創造していく」と店舗改革の方向性を示し、昨年秋から段階的な改装を進めてきた。
専門店との融合は開業25周年を機に着手したわけではない。同社は開業3年後の1999年に家電量販店「ヨドバシカメラ」を上層階に誘致しており、昨今の専門店導入による百貨店の店舗構造改革を業界で逸早く手掛けた百貨店だ。当時も「日常の良いものを揃えて『生活者本位制百貨店』を実現するために誘致した」わけであり、昨秋と今春に行った専門店導入による改装も、「生活者のニーズにアジャストしていくため」に他ならない。
次いで、専門店導入による改装効果にも言及。「20代~40代の新規のお客様が増え、今年の第1四半期(4~6月)は(コロナ禍前の)19年比で95%まで戻ってきた」という。専門店導入によって百貨店運営売場が縮小されたものの、「取引先との協業も上手くいき、多くのブランドショップで効率を改善できた」とメリットを述べた。
目指していた来店頻度と買上げ率の向上が図られ、そして何よりも利益改善が進み、第1四半期は19年の水準を上回った。「郊外型百貨店の未来形」がカタチになりつつある。
豊かで上質な暮らしのパートナー
◆東急百貨店
たまプラーザ店 店長 落合 康成 氏
今年が開業40周年の節目にあたり、春から段階的改装を手掛けている東急百貨店たまプラーザ店の落合康成店長は、商圏の特徴と、東急百貨店の中期経営計画に基づく店舗づくりの方向性とその要諦を中心に述べた。
商圏特性の1つが「専業主婦が多いベットタウン」で、同店の売上高の7~8割は半径5キロ圏で占める特性もある。それだけにハウスカード(TOKYU CARD ClubQ)ホルダーも多く、約8割を占める。
典型的な地域密着型郊外百貨店であるため、落合店長は「デイリーで利用されるお客様が多く、日常生活の中で必要なちょっと良いものをどれだけ的確に揃えられるかが、MDで最も大事な切り口」と強調した。商圏特性を踏まえ、「近隣に住むファミリー」をターゲットに、百貨店と専門店の強みを融合させた館づくりに取り組んでいる。
東急百貨店は21年度から中期3カ年経営計画を進めており、「いつでも、どこでも、一人一人の上質な暮らしのパートナー」というメッセージを掲げている。同店としても「沿線拠点の豊かで上質な暮らしづくりに貢献していく」店づくりを目指している。
「豊かで上質な暮らしのパートナー」をどこまで追求していけるか。広域商圏の都市型百貨店とは異なり、「お客様の顔が見える」強みを生かして、「来店されるお客様との会話の中で、必要とされるものを探っていく」ことに注力している現状を述べた。
「浦和のランドマーク」目指す
◆三越伊勢丹
執行役員 伊勢丹浦和店 店長 三木 康史 氏
2021年が開業40周年だった伊勢丹浦和店の三木康史店長は、地元商圏のポテンシャルの高さと、浦和のランドマークとして存在感を発揮していくための営業施策について言及した。
さいたま市浦和区は平均世帯年収が全国平均よりも高く、東京23区の世田谷区などと同水準。同店の周辺にはタワーマンションの建設が相次いでおり、30代、40代のファミリーや、富裕層が増加中だという。半径5キロ圏では3世帯のうち1世帯が同店の顧客であり、来店頻度も高い。それだけに、三木店長は「地域にいかに支持される百貨店を創っていくかに尽きる」と強調した。
昨年の開業40周年では、富裕層、ファミリー層、若年層の集客を意識した段階的改装を手掛けた。加えて、地域へのプレゼンスを高めていくために地域とのコラボレーション企画にも注力。屋上を活用した都市型アウトドアスペース「デパそら」やビアガーデン「ビアそら」など、浦和のランドマークとして存在感を高めるための成功事例を紹介した。
次いで22年度の重点施策については、三越伊勢丹グループが中期経営計画で掲げている重点戦略に基づき、「高感度上質戦略」と「個客とつながるCRM戦略」に言及した。高感度上質消費を拡大していくための施策と、「マス」から「個」にアプローチの仕方を変革して「お客様一人一人とつながり、個客の要望をうかがって体験価値を提供していくか」の取り組みについて、考え方や事例を挙げて説明した。
顕在化した3つの購買動向
◆高島屋
玉川店 店長 増井 大輔 氏
高島屋玉川店の増井大輔店長は、店舗特性と、コロナ禍前の19年度の売上高を上回った上期に顕在化してきた3つの消費傾向について述べた。
同店は、国内で郊外立地の本格的ショッピングセンターの先駆けである「玉川高島屋S・C」の核店舗で、百貨店と専門店MDがバランス良く配置されたSCだ。不動産価値の高い恵まれた立地で、同店の顧客の7割超が半径5キロ商圏の居住者という。子供の教育への関心が強く、関東圏の高島屋の中では子供の売上高構成比が最も高く、さらに戸建てが多いこともあり、リビングの売上げシェアも高い。またパティスリーが多い街でもあり、食品への関心も旺盛だという。
22年度の上期(3~8月)に顕在化してきた購買動向については、以下の3点を挙げた。1点目が「お客様が店頭に戻ってきた実感と、改めてワンストップショッピングに対して価値を見い出して頂いた」という購買動向。訪問型から来店促進型にシフトし、強化してきた外商顧客への対応を事例に挙げて説明した。そこでは外商顧客の声を真摯に受け止め、外商部と販売部の連携をさらに強めて、品揃えやサービスに反映してきた営業活動が奏功。結果、外商の売上高シェアが上昇した。
2点目が「高額消費とイエナカ消費の拡大」。イエナカ消費では現代アート、花瓶、高級食材などが売れた事例を紹介した。
3点目は「社会的意義のある共感消費の顕在化」を挙げた。リサイクル、利活用といった、いわばサステナブルな視点でのモノ・コト提案に対して反響があった。不要になったハンドバッグやコスメの回収、夏休みの子供の仕事体験イベントなど好評だった事例を紹介した。
上期の業績にも触れ、重点施策が奏功して売上高はコロナ禍前の19年度を上回った。ただ入店客数や購買客数が戻っておらず、購買単価アップでカバーした格好だけに、「これが下期以降の重点課題になる」と述べた。
「地域・沿線住民のマイストア」に
◆東武百貨店
取締役執行役員 船橋店 店長 田嶋 潤也 氏
東武百貨店船橋店の田嶋潤也店長は、船橋商圏のポテンシャルの高さと、「地域密着日本一の店」を目指し、「地域の人々に愛され、必要とされる店づくりを突き詰めていく」ための4つの取り組みについて言及した。
船橋市の人口は約64万人で、人口増加エリア。さらに同店が立地する船橋駅の1日の乗降客数は約40万人を数える。それだけに駅ビルや大型SCなどとの競合が激しいものの、恵まれた立地環境にある。
同店は「地域・沿線住民にとってのマイストアの確立」を目指して、地域密着路線を強化してきた。その主な4つの取り組みについて述べた。
1つ目が地域協業で、その一環として、地元の名産品の「梨」の販売・訴求活動に注力してきた事例をはじめ、「ふなっしー地上降臨10周年展」、地元のスポーツチームとの連携などを紹介した。
2つ目は次世代顧客の獲得に向けた店づくりで、特にデイリーニーズへの対応を強化するため、昨年から専門店を順次導入。昨年は「ユニクロ」や「ABCマート」、「マツモトキヨシ」など、今年は6月に家電専門店「ノジマ」、7月に子供専門の歯科「パール小児歯科医院」などを導入してきた。
3つ目が食品の柱の1つである生鮮・グロサリーの強化で、「地域密着、ワンストップ、ストレスフリー」をキーワードに、昨年12月に全面改装。「FUNABASHIいちばんち市場」と名付け、地元食材の品揃えを拡充した。
そして4つ目が新規催事の強化。現代アート企画などの事例を紹介し、加えてラグジュアリーなど欠落領域を補完するため池袋本店との連携、ポップアップショップの強化などについて言及した。
郊外型百貨店の再成長戦略への要諦
次いで後半の発言は、前半の現状を受けて、23年度以降の中長期視点を踏まえ、自店の存在価値向上に向けた秋以降の重点施策や課題を中心に、リアル店舗の魅力化への方向性や具体的事例を語って頂いた。
グループ力生かした地域連携を深化
◆京急百貨店 金子百貨店事業本部長
京急百貨店の金子百貨店事業本部長は、「郊外型百貨店の未来形」の実現に向け、京急グループの力を生かした地域連携の強化と、サステナブルへの取り組みを中心に語った。
同店は百貨店を大事にしながら、専門店との比率の最適化に向けた改装に着手してきたが、まずこの成果について言及。「専門店の新規導入によって新規顧客が増え、百貨店直営売場にも好影響をもたらしている」という。婦人雑貨やリビング(寝具やタオルなど)の平場、コスメセレクトショップなどの客数が増えている事例を挙げた。さらにポップアップショップの展開に注力し、「新しい発見や商品提案が新しいお客様の集客にもつながった」と、百貨店直営売場の活性化に波及している。
一方で百貨店直営売場の効率化も進めている。7階の催事場では今年5月に単県催事の「大新潟展」と「大信州展」を敢えて2週連続で開催して、什器や搬入出のコストを下げることで収益が改善し、効率化が図られた。
次いで、京急グループのネットワークを生かした地域連携の強化に言及。神奈川県、横浜市、横須賀市、鎌倉市などとのコラボレーション企画を紹介した。
地域連携では、特にSDGs、サステナブルを切り口にした企画に対する生活者の関心の高まりを指摘。昨秋から実施している「サステナブルライフスタイルフェア」、夏休み企画の一環として開催した「SDGsフェア」などがいずれも好評。同店は昨年6月から紙袋を有料化しているが、この収益の一部を公益財団法人に寄付して、京急沿線の三浦市の「小網代の森」の保全活動の一助にしている事例なども紹介した。
地域連携でもサステナブル視点は重要度を増しており、いずれにしろ「郊外型百貨店の未来形実現には、地域連携の強化が欠かせず、地域に愛される店の形をお客様と取引先と一緒に創っていきたい」と締めくくった。
「近隣ファミリー」の過ごし場
◆東急百貨店たまプラーザ店 落合店長
東急百貨店たまプラーザ店の落合店長は、足元商圏人口の減少傾向を最重要課題に挙げたうえで、これまで取り組んできた店舗構造改革の現状と今後について言及した。
人口減少だけでなく、顧客の高齢化の課題も浮上してきている。それだけに「将来を見据えた店舗構造改革は避けられない」。開業40周年の節目に当たる今年の春から着手している段階的な全館規模の改装は、この一環に他ならない。
改装では「近隣のファミリー」をターゲットにしてMDの再編に取り組んでいるが、並行して人的生産性の効率改善を進めているという。むしろ構造改革では人的生産性向上が喫緊の課題と指摘。自前の編集売場を隣接させ、1人の従業員の担当範囲を広げ、あるいは子供売場を5階から1階に移設し、婦人靴売場に隣接させたが、これは子供靴売場にもシューフィッターを配置しており、両売場でシューフィッターのスキルを生かせることになるなど、事例を紹介。さらにLINEを中心にしたデジタル販促にシフトして、紙媒体を削減している現状などにも言及した。
店舗構造改革では、言うまでもなくMD再編も進めている。ターゲットは「近隣のファミリー」だが、「ファミリーといっても30代、40代だけでなく、親子三世代、ご年配の夫婦もファミリーであり、そうしたファミリーが楽しめる店づくりに取り組んでいきたい」と強調した。
先述したように改装に伴い、春に子供売場を5階から1階のグランドフロアに移設したのは、この象徴。さらに全面改装している3階フロアは「ファミリーで楽しむフロア」に10月27日に生まれ変わる。親子で、三世代で買い物を楽しめるショップが揃い、ベビー休憩室も新設される。
「地域のお客様がさらに日常の生活を楽しめる提案を行い、ファミリーで過ごす場になること」を目指した店舗構造改革が着々と進展している。
個客起点でウォレットシェア拡大
◆伊勢丹浦和店 三木店長
伊勢丹浦和店の三木店長は、今年度から始動している三越伊勢丹グループの中期経営計画の重点戦略に基づき、「地域のお客様から支持され続ける郊外型百貨店」を追求し、「ウォレットシェアを拡大していく」ための重点施策について述べた。
「つまるところ、全ての起点はお客様」と前置きしたうえで、今後の重点施策を説明。「お客様のニーズを的確につかみ、それぞれパーソナルな接点を持ち、アプローチをし続けることで、お客様の購買回数、購買カテゴリー、購買頻度を拡大していく。基本に立ち返って取り組み、ここにDXを手法として活用して、ウォレットシェアの拡大を実現していく」と述べた。
続けて、「ウォレットシェア拡大へのアクションは、ワンストップショッピングができるリアル店舗の魅力そのものであり、その結果として、地域のお客様の暮らしを豊かにするお手伝いをしていきたい」という考えを語った。
ウォレットシェア拡大に向けた重点戦略の軸が「高感度上質戦略」と「個客とつながるCRM戦略」で、外商顧客、エムアイカード顧客並びに三越伊勢丹アプリ顧客それぞれへのアプローチや具体的な事例を紹介した。外商顧客に対しては、外商の業務改革と並行してアプローチを強化。エムアイカード顧客に対しては上位顧客、それ以外の顧客、それぞれデータを活用してパーソナルアプローチに取り組んでいる事例を説明した。「お客様が出会っていない高感度上質消費を提案する」という、潜在ニーズを引き出す取り組みも紹介した。
さらにデータを活用して、「お客様起点のMDバランスがどうあるべきか、しっかり見定めて将来のリモデルに生かしていく」方針を示した。
このほか、地域団体との連携、サステナブル活動、取引先との協業やグループ連携などへの取り組みについても事例を挙げて説明。高感度上質戦略と個客とつながるCRM戦略を軸に、「浦和のランドマーク」を目指した同店ならではの新しい郊外型百貨店づくりに余念がない。
選ばれる店になるリスクヘッジ
◆高島屋玉川店 増井店長
高島屋玉川店の増井店長は、上期に売上高がコロナ禍前の水準まで回復した一方で入店客数や購買客数が戻っていない現状から、「いかに選ばれる店舗になるかが、改めて重要だと感じている」と述べ、そのため「3つのリスク」を切り口に、下期以降の重点施策を披露した。
3つのリスクとは、1つ目が「特定の商品カテゴリーへの売上げ依存リスク」、次が「上位顧客への売上げ依存リスク」(中間層顧客の流動性の高まり)、そして3つ目が「生活防衛意識(消費抑制)の高まりリスク」である。
商品カテゴリーリスクでは、多くの百貨店がそうだが、ラグジュアリーブランド、宝飾・時計、美術などの高額品が好調で、食品も堅調だ。一方でこれら以外の商品カテゴリーが伸び悩んでおり、中でもファッションの活性化が課題だ。ここでは集客力のある物産展を起点にした他のフロアへの買い回り促進、ハウスカードのポイントアップなどを駆使していく施策、あるいは1月のファッションセール時期における価格以外の価値提供策などを述べた。
2つ目の上位顧客への依存リスクに対しては、外商顧客向けに毎月開催している「ウェルカムデイズ」のコンテンツを拡充して、引き続き強化していくが、一方で最大の課題は、全館の売上げシェアが減少傾向にある組織顧客の中間層への対応策だ。既に今年5月から毎月中旬週の週末(金~日)に、「サンクスウィークエンド」企画を開催している。品揃えの充実だけでなく、イベントの開催、販売員の手厚い配置などに取り組み、SNSを駆使した販促も強化している。また本館1階のステージを活用して、ハープやチェロの演奏会を開催するなど様々な来店動機を仕掛けている。いわば「お客様とのタッチポイントを増やし、裾野を広げる」施策に注力している。
3つ目の生活防衛意識の高まりリスクに対しては、「将来を見据えた人材育成」に留意する。同店は自主運営売場が多く、それは玉川高島屋S・C内の専門店と差別化するためのMDでもあるからだ。これを優位性として最大化していくためには人材育成が欠かせない。さらに優良な顧客基盤を持つ取引先の販売員に対しても同じスタンス。「高島屋の戦い方、店頭のお褒めの言葉やクレームなど、できる限り情報を共有化して、同じ目線でお客様に対応していけるようにしていく」仕組みづくりを進めていく。
また生活防衛意識の高まりに向けては、グループの金融事業との連携によって、資産形成などを通じて新規顧客の開拓に取り組んでいく構えだ。
これらの3つのリスクヘッジが、リアル店舗の魅力化とともに、23年度以降の重点施策につながってこよう。
「夢や憧れ」が詰まった場所に
◆東武百貨店船橋店 田嶋店長
東武百貨店船橋店の田嶋店長は、「そもそも百貨店は夢や憧れが詰まった場所であり、地域や沿線のお客様に必要とされ、愛される百貨店になっていく」ための、現状の課題と具体的な施策について言及した。
「競合する商業施設と差別化された品揃え、サービスを実現していかなければならないし、ライフスタイルやニーズの変化に対応し、さらにデイリー性も大事であり、非日常性の提案も必要だ」と課題を挙げた。ただ「これまでのように人をたくさん集客するのではなく、来店して頂いたお客様にいかに購入して頂くか、購入率と購入単価を上げる施策」を重視している。
そのための優先課題が「商品、環境、サービス」の見直し。商品の見直しでは、昨年春から段階的改装を進めており、この秋は9月22日に2階の家電専門店跡に「わたしのトランジットラウンジ(ここで気分を乗り換える)」をフロアコンセプトにした新しい売場を設けた。同店の20代、30代の従業員の意見をもとに、次世代顧客の生活ニーズに応えるためのショップを集積した。さらに次世代顧客の新規開拓の効果を全館に波及させていくために、各フロアの品揃えも変化させていく考えを示した。
また商品の見直しでは、幼児教育や子供専門の歯科医院など、子供の定期的来店につながるコンテンツを導入して、3世代ファミリーの来店促進にも留意している。さらに強みの食品でも、昨年12月に生鮮・グロサリーを全面改装したが、引き続き地域顧客のニーズに応えるために、きめ細かく品揃えを見直していく考えだ。
環境の見直しでは、「百貨店はヴィジュアルが大事」であり、「お客様の目に留まる全てのものを整備している」という。売場の整理整頓、従業員の服装や言葉使い、媒体物や売場のPOPなど、「お客様が快適にショッピングを楽しんで頂けるような環境づくり」に注力している。
サービスの見直しについては、「接客の質の向上」を課題に挙げた。「商品知識だけでなく、提案力、使い方、価値訴求などを付加して、お客様に買い物の喜びを感じて頂く接客の質を上げていくことがリアル店舗の強みになり、最も大事な取り組み」と位置付けている。
こうした基本の見直しに加え、今年10月7日の開店45周年を起点としたリアル店舗の魅力化策と、より地域に根差し親しまれる百貨店になるための地域密着活動も重点課題に挙げた。
9月末から10月にかけて開店45周年の記念催事やイベントを連打していくが、「5年後の50周年、さらにその先の未来へ続くスタートの年であり、お客様にどうやったら喜んで頂けるか、来店して頂けるかを考え抜くきっかけにする」という位置付けで取り組んでいる。
地域密着では、引き続き地元のスポーツチームや団体との協業に積極的に取り組み、名産品の販路拡大、さらには地域の文化・芸術の振興にも貢献していく方針。「地域・沿線住民のマイストア」を目指した店づくりとともに、「夢や憧れが詰まった東武船橋店ならではの百貨店づくり」に注力している。