松屋、銀座店の化粧品売場を増床・改装 「買う楽しさ」追求
松屋は銀座店の化粧品売場を増床・改装する。面積を約1.2倍の231坪に広げるとともに、新規に「RMK」、「シュウ ウエムラ」、「スック」、「ディプティック」、「ノーズショップ」、「オフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリー」、「エムティー メタトロン」を入れ、既存の「アンプリチュード」、「M・A・C」、「イソップ」、「シスレー」、「ジル スチュアート」、「オブ・コスメティックス」をリニューアル。導線も見直し、カラーメイクやフレグランスはゾーンを形成して買いやすくする。共通のテーマで各ショップがメイクアップレッスンを毎月実施するようにしたり、顧客による「コスメサークル」を立ち上げたり、同売場ならではの“体験価値”も強化する。新型コロナウイルスの感染が拡大して以降、1階や2階のラグジュアリーブランドとの買い回りなどで20~30代の流入が加速しており、増床・改装で受け皿を整備。2022年度(22年3月~23年2月)下期の売上げを前年比115%に引き上げる。
松屋銀座店の化粧品売場は“若返り”が顕著だ。コロナ禍の以前は20~30代の売上げ構成比が2割弱だったが、20年3月以降に「松屋カード」などのカードを保有した人に限ると、約4割に上る。三原薫子営業二部婦人一課バイヤーは「これまで取り込めていなかった年代」と喜ぶ反面、「コロナ禍で海外旅行を自粛し、その資金でラグジュアリーブランドを買いに来た人々が、化粧品も買い回っているのではないか。定着させなければならない」と危機感を強める。コロナ禍が収束すれば、流出しかねないからだ。
依然としてコロナ禍が蔓延し、化粧品の売上げも乱高下する中、百貨店業界では異例といえる大規模改装に踏み切った背景には、20~30代を囲い込む狙いがある。
改装では、特に「買う楽しさ」(三原さん)を追求した。その象徴が、メイクアップレッスンとコスメサークルだ。三原さんは「メイクアップレッスンは各ショップで日常的に行っているが、知らない人や入りづらい人もいる。松屋として企画すれば、気軽に参加できるのではないか。来店する楽しみにもなる。コスメサークルはトライアルだが、まずはSNSなどで参加を依頼した12人ほどでメイクアップレッスンや新商品の体験、情報発信といった活動を始める。将来的には多くの人に『入りたい』と言ってもらえるコミュニティにしたい」と、それぞれの役割を説明する。
短所を長所へ転換する、成長市場に切り込む改装でもある。RMKやシュウ ウエムラ、スックの誘致で、これまで弱かったカラーメイクを拡充。コロナ禍で需要が旺盛なフレグランスは、ディプティック、ノーズショップ、オフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリーを加えた。三原さんは「毎月イベントなどを開催し、香りの楽しみ方も提案していく。香りの文化をつくりたい」と意欲を燃やす。
近隣の百貨店、三越銀座店との差異化も推し進める。同店の化粧品売場は各ショップがコンパクトに軒を連ねるが、銀座店の化粧品売場は「ブランドの世界観に浸れるように意匠を大事にしつつ、接客のスペースも広く構える」(三原さん)。
一連の改装は、8月末までに段階的に完成。例えば新規のブランドは、5日のディプティックを皮切りに、12日にエムティー メタトロン、17日にRMK、シュウ ウエムラ、スック、29日にノーズショップ、31日にオフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリーが開く。
(野間智朗)