東急百貨店、外商顧客へのリモート接客を開始
東急百貨店は、外商顧客向けのリモート接客を始めた。本店、吉祥寺店、たまプラーザ店、札幌店に擁する「お得意様サロン」の個室と、他の店舗の売場やショップ、あるいは自社の店舗外のブランドの旗艦店などを、ソニーのシステム「窓」で接続。落ち着いた空間で、じっくりと商品を見たり、販売員から説明を受けたりできる機会を設け、外商顧客の購買意欲を喚起する。その第1弾として4月に実施した、本店のワイン売場と繋ぐ販売会は好評。新たな顧客接点、販売機会と位置付けて定期化する。
東急百貨店は従来、イベントの形式で外商顧客向けのリモート接客を行ってきたが、「ウィンドウショッピングのような気軽さで接客が受けられて楽しい」という声が多く、本腰を入れた。
それにともない、導入したのがソニーの窓だ。映像、音声、インタラクションの技術を凝縮した、高品質かつ等身大の55インチの縦型ディスプレイで、東急百貨店は「タブレット端末やパソコンなどとは一線を画し、商品のディテールや質感まで凄くビビッドに映る。まるで窓越しに会っているかのような臨場感で、百貨店の接客と相性が良い」という。リモート接客の弱点である“リアルさ”を克服できる機器だ。
窓を用いたリモート接客に対する反応は上々だ。ワインの販売会では、本店から20本以上のワインを取り寄せた客や、本店を訪れて7万円分のワインを購入するとともに、ワインセラーの商談に発展した客が現れた。東急百貨店は「ソムリエとの会話を楽しんで頂けた上、事前に伺った要望を基にワインのリストを作成し、渡した効果も大きかった」と振り返る。
今後は、ラグジュアリーブランドの旗艦店からの新作や希望の商品を紹介したり、時計や宝飾品、美術品などの催事に合わせて稀少な商品を見せたりして、外商顧客の買上げ頻度を上げる意向だ。
リモート接客の対象は、外商顧客に限らない。東急百貨店は昨年12月、東急イーライフデザインが運営する高級老人ホーム「グランクレール」の入居者を対象に、リモート接客をスタートした。窓で本店のコンシェルジュサロンとグランクレールの多目的ホールを繋ぎ、入居者のライフスタイル、トレンド、歳時記などを踏まえて商品を提案する。
第1回はグランクレール世田谷中町シニアレジデンスで昨年12月9日に開催した。衣料品と食品に分けて1時間ずつ、事前のアンケートを基にコンシェルジュが本店内からセレクトした商品を、使い方の説明なども交えて販売したが、それぞれ30人が参加。売上げは目標を達成した。
施設からは2回目の要望が届き、今年4月中旬に実施。婦人の服飾雑貨や紳士のワンマイルウェアなどを紹介し、計40人が楽しんだ。3回目、4回目と定期的に開催していく予定で、新たな商機が芽生えつつある。
(野間智朗)