2024年11月19日

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【連載】富裕層ビジネスの世界 年末の税制改正で見直されたNISAの使い勝手

「今回の制度変更はほぼ満点なのではないか。使わない手はないといえる」──。数千万円の資産を運用している個人投資家の1人は、あるニュースに触れてこうつぶやいた。そのニュースとは、少額非課税投資制度(NISA)の拡充のこと。2022年12月16日、自民、公明両党の与党政策責任者会議で決定した2023年度与党税制改正に盛り込まれた。

まずは概要を見ていこう。現行のNISA制度では、国内外の株式に広く投資できる「一般NISA」と投資信託に限定した「つみたてNISA」があり、併用ができなかった。それが2024年1月からスタートする新たなNISAでは、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つで構成され、実質的に併用が可能になる。

制度変更のポイントは5つ

その上で、今回の制度変更のポイントは5つある。

1つ目は「恒久化」だ。これまでは一般NISAは2023年まで、つみたてNISAは2042年までの時限措置だった。それが今回の変更で、いずれも恒久化されることになった。NISAは税制優遇制度の1つのため、年単位の設定が基本。つまり将来なくなってしまう不安があったのだが、恒久化によってそうした不安を解消したわけだ。

2つ目は「無制限化」だ。現在は一般NISAが年間120万円までの投資額について5年、つみたてNISAが年間40万円の投資額上限に対して20年という非課税の保有期間が設定されていた。これらがいずれも無期限化されることになる。長期投資の方が大きなリターンが期待できるため、歓迎する声は大きい。

3つ目は「年間投資枠の拡大」だ。一般NISAをこれまでの2倍にあたる240万円に、つみたてNISAを3倍の120万円に拡大する。その結果、生涯投資枠は買付残高で1,800万円となるのだ。当初、1,500万円とされていたものが、岸田首相の「小さい」の鶴の一声で1,800万円に拡大された。

4つ目は「非課税投資枠の再利用」が可能となることだ。これまでは、保有商品を売却することによって空いた投資枠が復活することはなく、再利用はできなかったが、これが可能となるのだ。つまり、まとまったお金が必要になったタイミングで引き出すことも含め、ライフイベントに応じて柔軟な対応が可能になるほか、投資対象も途中で入れ替えることができるようになり、利便性が格段に向上したといえる。

そして最後に、「新旧NISAの併用」だ。これは、これまでのNISAと新しいNISAを分離して併用することができるというもの。新たな制度が生まれることで、「移行はどうなるのか」という不安もあったが、すでに始めていたNISAはこれまでのルールに基づいて最後まで運用することができ、新たなNISAをゼロから始めることができるというわけだ。

こうした制度変更によって、もう1つ大きなメリットがある。それは、これまで面倒で使い勝手が悪いと言われてきたため普及の壁にもなっていた「ロールオーバー」、つまり期限がきたNISAの運用資産を次の期間に引き継ぐ手続きが不要になることだ。そのため、「現時点で考えられる障害はほぼなくなったと言ってもいいのではないか」(前述の個人投資家)と、前向きに受け止める金融関係者は多い。

成長投資枠をどう使うかがポイント

岸田政権が“一丁目一番地”に掲げる「新しい資本主義」。それを実行するための看板政策が「資産所得倍増プラン」で、その柱の1つがNISA改革だった。

では、実際の使い勝手の方はどうだろうか。

まず、つみたて投資枠は、現在のつみたてNISAのように毎月一定額を長期資産形成に適した投資信託で積み立てていくことになる。対象商品については、現行のつみたてNISAで採用されている適格商品の条件がベースとなる可能性が高いと思われ、指数連動を目指す「インデックスファンド」が中心になるだろう。

一方で、問題は「成長投資枠」だ。現時点では、投資可能とされる運用商品の詳細は発表されていない。指数の倍以上の値動きを目指す「レバレッジ型」や証券会社が受け取る手数料の大きい商品、そして毎月分配型のように分配金を大きくした商品など、長期の資産形成に適さない投資信託などは対象外になるのではないかと見られているが、まだ分からない。

「成長投資枠という名称に証券会社はにわかに盛り上がっている。儲けのチャンスだと。レバレッジ型や手数料の大きな商品が選定から除外されればいいが、もしされなかった場合には選定眼が必要になってくる」とNISAに詳しいファイナンシャルプランナー(FP)は指摘する。

とはいえこのFPは、「活用次第では面白い使い方ができる」と語る。それは、成長投資枠をつみたて投資枠の“延長線”で活用するというもの。「つみたて投資枠と同じ商品を成長投資枠でも投資すれば、リスクを小さくしながら効率的な運用商品に1,800万円までの投資をすることができる」(FP)というわけだ。

一方、別のFPは、「まとまった資金でスポット買い付け(一括投資)をしたり、アクティブファンドや個別株などの積極的な投資にチャレンジしたりすることもできる。非課税枠の再利用もできるから、リスクを取れる若いうちにトライすることもできる」とアグレッシブな投資に挑戦するのも手だと語る。

スタートまでまだ時間があるため、資産状況や投資に対する考え方によって投資方法を選べばいいが、いずれにしてもNISAは運用益が非課税になる。使い勝手のいい制度に変わることが決まった今、この有利さをできるだけ甘受するのがよいのではないだろうか。

 

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