三井不動産とシェアトゥモロー、「移動商業プラットフォーム」を進化
三井不動産とShareTomorrow(シェアトゥモロー)が立ち上げた移動商業プラットフォーム「MIKKE(ミッケ)!」は11月で1周年を迎え、事業をアップデートした。出店するエリアや業態を拡大するとともに、出店者向けの新サービスも開始。改称およびロゴの変更にも踏み切り、従来のMIKKE!に共生・共存の理念を象徴する三井不動産グループのロゴ「&」マークを付けて「&MIKKE(アンドミッケ)!」とした。
&MIKKE!は「“新しい発見のある第3の買い物体験”が、あなたの街へやってくる」をコンセプトに掲げ、21年11月に本格始動した三井不動産グループの新事業。出店者に車両、出店場所、個客情報を提供し、販路を拡大したり、新客との接点を獲得したりできる。移動店舗を起点にEC、実店舗と相互送客が可能で、車両や出店場所に加え、什器や看板、レジ端末も提供されるため、初期投資は不要。商品と販売員がいれば始められるのが同事業の特徴だ。
スタートから1年間の実績は「出店場所が50区画(20物件)、累計出店数が200、顧客基盤が3.5万人(利用者数6万人)。好事例が幾つも出ている」(ShareTomorrowの後藤遼一ミッケ事業本部ブランド戦略部部長)。その1つとして、食物販ではこだわりのスイーツなど嗜好品が人気。シーズナブル需要を捉え、ランドセルや箸専門店などで買い替え需要がみられた。リピート・長期出店店舗として多かったのが、菓子・総菜パンやさば寿司の店舗だ。
2つ目はリアルの体験価値を強みに、体験型やPR・マーケティングを軸に置いた店舗活用が目立ったこと。体験・試着ショールーミング型ではマットレス、枕、パンプスの物販店舗、オンラインサービスの会員獲得目的店舗ではファッションサブスクリプションサービス、PR・マーケティング目的店舗ではコスメのPRイベントが代表的だ。
事業に対するユーザーからの反応は「特徴のある店舗が来てくれる。次は何が来るのか家族で楽しみにしている」、「いつもと違うものを家の近くで気軽に買えるので便利」など、店舗からは「意外と相性が良く想定より高い売上げの物件が多かった。売上げだけでなくプロモーションの価値もある」、「リピーターのお客様はECサイトで購入したり、本店へ来たりしてくれた。商品に対するフィードバックを直接ユーザーからもらえて大変勉強になった」などの声が挙がった。
2年目からの&MIKKE!事業は出店エリアの拡大に乗り出し、出店者向けの新サービスも開始。東京・湾岸エリアを中心としていた出店エリアは、すでに日比谷、京橋、日本橋から渋谷、飯田橋、阿佐ヶ谷など都内の主要エリアにも広げ、出店物件も従来のマンション、商業施設、オフィスなどから、駅前高架下(ビーンズ阿佐ヶ谷など)、スーパーマーケット(イトーヨーカドー木場店/深川ギャザリア内など)、観光地、介護付有料老人ホーム(ソナーレ浜田山など)など多岐に亘る。
また、エリアの拡大に伴って複数台の移動店舗を1カ所に集めたイベント型も本格化。イベント型出店については、三井不動産の商業施設であるCOREDO室町テラスと東京ミッドタウン日比谷のマルシェやイベントで展開し、出店者の要望に応じて企画やアレンジも始めた。その一環として、集英社が11月7日から1週間、公式ECサイトのファッションや雑貨を取り扱う移動店舗を4台同時に出した。10月末には三井不動産ロジスティクスパーク船橋(MFLP船橋)・&PARKで開催された地域交流イベント「MFLP船橋プレミアムサンクスフェア2022」に、キッチンカーと共に複数台が出た。
出店者向けに開始した新サービスは、場所貸しプラン「&MIKKE!SPOT」。従来は車両と出店場所をセットで貸し出していたが、事業開始1年を経て、車両内での調理行為を伴うキッチンカーなどの飲食業態、あるいは本事業での出店時の売上げが好調で、自ら移動販売車の製作・購入を検討する店舗から「場所だけ借りたい」という声が挙がってきた。こうした背景から、出店場所のみ貸し出す&MIKKE!SPOTの導入を決めた。多種多様なニーズに応えていくため、車両のみ貸し出すプランも検討中だ。
豊洲公園を会場にして11月7日から開かれた&MIKKE!には、サントリーホールディングスの「RR COFFEE」(コーヒー豆、コーヒードリンク)、鎌倉ベーカリーの「Bread&butter」(菓子パン、惣菜パン、お食事パン)、AuBの「AuB」(腸ケアサプリメント、プロテイン)、ナルミヤ・インターナショナルの「LOVST フォト スタジオ」(子供写真館)、SMILE CREATE GROUPの「スマートリラクゼーション QOHS」(リラクゼーション専門店)が出店した。
このうちサントリーHDが運営するRR COFFEEは、約2カ月間に亘るロングラン。コーヒードリンクとコーヒー豆をセット販売して各出店場所で好評だ。サッカー元日本代表の鈴木啓太氏が社長を務めるAuB(オーブ)は販売よりも知名度を高めることを第一に、&MIKKE!への出店を決めたという。ナルミヤ・インターナショナルのLOVST フォト スタジオは晴海公園で遊ぶ母子連れを捉え、同公園内での子供の撮影会が人気だ。
集英社は、大人の女性のための通販サイト「HAPPY PLUS STORE(ハッピープラスストア)」を11月7~8日に高層マンションのパークタワー晴海に、11月10~11日に日本橋の福徳の森に、11月12~13日に豊洲公園に出した。HAPPY PLUS STOREは、女性ファッション雑誌の「LEE」と「Marisol」などの掲載商品やバイヤーの厳選アイテムなどをECサイトと百貨店店舗で販売しており、初めて&MIKKE!の出張店舗を活用した。「HAPPY PLUS STOREが今年で15周年を迎えたのを機に初トライした。テストマーケティングも含め、エリアごとの成果と紐付けて認知と新客の開拓を目的にした。車4台を使用し、トレンドのファッションを実際に着てもらうだけでなく、骨格&カラー診断を無料で受けられるイベントも開催した」(集英社デジタルソリューション部マーケティング室の中谷みどりさん)という。
(塚井明彦)