2024年11月19日

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【連載】富裕層ビジネスの世界 コロナ禍で損をしない確定申告(1)確定申告間近!副業収入は「事業所得」での申告がお得

確定申告の時期が近づいてきた。大手税理士法人で1000件以上の税務案件をこなし、その後、コンサルティング会社を立ち上げて経理や財務、事業継承、M&Aなどのコンサルティングに携わる税理士の市川琢也氏に、3回にわたって「コロナ禍で損をしない確定申告の裏技」を解説してもらう。第1回目は、コロナ禍で取り組み始めている人も多い「副業」で稼いだ収入に関するお得な申告術についてだ。


──コロナ禍によって本業の売り上げが激減した個人事業主やフリーランサーの中には、それをカバーしようと副業をはじめた人も多いと思います。副業であげた収入はどのように申告するのがベストでしょうか。

市川 副業で得た収入を「雑所得」とするか「事業所得」とするかで、悩んでいる方も多いかと思います。どちらが得か、つまり「節税効果が高いか」といえば、個人事業主なら事業所得にしたほうが絶対にお得です。

具体的には事業所得の場合、赤字が出ても給与など他の所得で相殺することができます。青色申告の届出をして、電子申告と複式簿記の処理をすれば65万円の控除が受けられ(紙の申告の場合は55万円)、課税所得を圧縮できます。難しい複式簿記の処理をしなくても青色申告で最低限の帳簿処理をしておけば、10万円の控除が受けられます。また赤字になれば翌年に繰り越しすることも可能。雑所得ではこうしたメリットがありません。

──副業の収入を全て「事業所得」として申告してしまえばいいのでしょうか。

市川 そこが問題なのですが、何でもかんでも事業所得にできるかといえば、そうではありません。国税庁の方針として、本業以外で得た収入は基本的に雑所得扱い。事業所得として認められるかどうかの線引きは、わかりやすく言えばその収入で生活しているかどうかになります。そのため、サラリーマンの方のように一定の給与所得がある場合などは特にハードルが高くなります。

例えば副業としてウーバーイーツの配達で稼いだとか、メルカリで転売益を得たとか、仮想通貨の売却益が出たなど、本業以外で稼いだ収入で、費用(経費)との差額が20万円以上になった場合、「雑所得として申告すべき」というのが国税庁の見解です。逆に事業所得として認められるには、ある程度継続した期間、安定した収入が得られる、相当な時間を費やしている、職業として認知されているといった条件があり、これらを文字通り解釈すれば、副業収入を事業所得とするのは難しいということになります。

──裏技はあるのでしょうか。

市川 裏技といいますか、税務署を納得させられる説明をいかに立てられるかがポイントになります。まず大きいのは収入の額。例えば飲食店を本業としている人が、仮想通貨を売却していくらか儲けたとします。本業の所得が700万円程度だとして、仮想通貨で得た利益が数十万円程度だったとしたら、これを事業所得とするのはさすがに無理があります。また、その程度の金額ならあえて事業所得にするメリットも薄い。つまり節税効果がないわけです。

しかし、300万円、400万円、あるいは本業以上の利益が出た場合は、これを事業所得だと主張することも可能になってくるということです。つまり飲食店の経営とともに、「これも事業の1つだ」と税務署に対して言えることが大事なのです。

──金額の問題のほかに何かありますか。

市川 仮に副業による収入が低かったとしても、本業との関連があれば、別の言い方をすれば、本業と関連があると税務署にしっかりと説明をすることができれば、それは事業所得と認められる可能性が高くなります。

わかりやすい例でいえば、フリーライターの方が仮想通貨でいくらか儲けたとします。本来ならこれは雑所得なんですが、「仮想通貨関係の記事の取材のため」と言えるなら、それは事業所得に含めることができると思います。完全な虚偽であれば当然認められませんが、確定申告において「得」をするには、こうした「理論武装」が必要になってきます。

──「どうせ無理だ」と決めつけて額面通りに申告するのではなく、頭を柔らかくして、100円でも1000円でも節税することができないか頭を絞ることが大切だというわけですね。

市川 はい。それによって同じ収入でも支払う税金が違ってくるわけですから、長い目で見れば大きな差が生じてきます。今回の話でいえば、きちんと理論武装した上で、副業の収入を事業所得として申告してみる。仮にそれが税務署から認められなかったとしても、基本的に大きなペナルティがあるわけじゃない。「ダメです」と言われたら、修正すればいいだけです。もちろん、あまり無理はできませんが。

逆にすんなりと事業所得と認められれば、何十万円か得するかもしれない。申告するのはタダなんですから、まずはチャレンジしてみることが大切だと思いますね。そうした試行錯誤を繰り返していくことで、納税に対するリテラシーも高まっていくのだと思います。


知識を身につけずに、相手の言いなりになっていては損をしてしまう。それは節税も然りだ。受け身ではなく能動的に向き合い、節税効果を勝ち取っていかなければ、いつまでたっても損をし続けてしまう。そこで次回は、コロナ禍に急騰している仮想通貨で儲けた人のために、個人口座で運用した場合と法人口座で運用した場合、どちらが節税効果が高いのか解説してもらう。

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