2024年11月19日

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高島屋玉川店、廃棄予定のボウリングピンをアートに再生

本館4階の「CSケーススタディ」で11月1日まで展示中

ボウリングのピンは、タダでは転ばない――。高島屋玉川店は、アーティスト集団のC-DEPOT(シーデポ)と組み、廃棄予定のボウリングのピンをアートとして再生させ、抽選で販売する。19日から本館4階の売場「CSケーススタディ」に展示しており、11月1日まで購入希望者を受け付ける。高島屋の各店は5日~11月1日にかけて、「エコ&エシカル」をテーマに、サステナブルな暮らしを提案する「TSUNAGU ACTION WEEKS(ツナグアクションウィークス)」を開催しており、玉川店はボウリングのピンの再生以外に、衣料品やタオルなどの回収、ランドセルやネクタイのリメイク、本のフリーマーケットなどを手掛ける。

高島屋玉川店が廃棄予定のピンを譲り受け、C-DEPOTのアーティストが新たな命を吹き込んだ。「ボウリングのピンを使ったアートは、家具やインテリアの店で見て気になっており、3R推進月間に当たる10月に合わせられるよう、8月末頃にC-DEPOTに依頼した」。同店の野村直人企画宣伝部店企画宣伝担当次長が経緯を説明する。C-DEPOTに白羽の矢を立てたのは、過去に新宿店で何度も協業してきた中で「間違いなく面白いモノができる」と確信を持ったからだ。

C-DEPOTの代表を務める金丸悠児氏は「約100人のアーティストが所属しており、同じフォーマット(今回であればボウリングのピン)の下、様々な人と方法で表現するのは得意」と快諾。自身のほか、内田有、かなやまひろき、高橋祐次、堤あすか、堤岳彦、ヒラタシノ、深海武範、星川あすか、八田大輔に参加を求めた。ボウリングのピンという独特の形状や素材感を踏まえて「平面に絵を描くのが得意で、柔軟性に長けたアーティストを選抜した」(金丸氏)という。

参加したアーティストは計10人。野村氏は「ボウリング場と同じく、10本のピンを並べて展示したかった」と狙いを明かす。制作期間は2~3週間で、金丸氏は「いかに目立つか、限られた時間でどう仕上げるか、10人の競争ではあるが、『こう処理するとツルツルした素材でも上手く絵を施せる』などの情報は共有しながら完成させられた。忙しい中で参加してくれたアーティストもいたが、息抜きや新しいチャレンジとして楽しんでくれた」と振り返る。

金丸悠児氏がデザインした「Fire Lion」

ピンのデザインは、まさに十人十色だが、金丸氏は「美しいフォルムを生かし、こけしのようにかわいくしたり、キャンバスのように使ったり、ボディの部分をメインにしたり、全面を抽象的にしたり、どこから見ても正面として楽しめるようなストーリーを絵で表現したり、それぞれの個性が出ている」と指摘する。

10本のピンは、それぞれ2万2000円で抽選販売。著名なアーティストも多く、野村氏は「破格中の破格」と胸を張る。購入希望者は応募用紙に必要な情報を記入して専用の箱に投函するが、10月24日時点で中には多くの紙が積み重なっており、客の関心は強い。

「百貨店業界との接点は美術画廊での展示会がメインで、C-DEPOTのメンバーに経験者は多いが、それ以外に作品を露出してもらえる機会は貴重。今後もどんどん取り組んでいきたいと考えており、アートをより生活や日常に近付けたい」

金丸氏は、さらなる協業に意欲を燃やす。野村氏も「C-DEPOTは『アーティストと社会の懸け橋を作る活動』を続けており、(芸術の世界の)“外”に出てきてくれる。声を掛けやすい」と歓迎しており、高島屋玉川店とC-DEPOTのタッグは、まだまだ先へと転がり、新たなアートを生み出していきそうだ。

(野間智朗)