2024年11月19日

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2022年 百貨店首脳 年頭所感・壱

<掲載企業>

■三越伊勢丹HD

■札幌丸井三越

■新潟三越伊勢丹

■丸広百貨店

■藤崎

■水戸京成百貨店

■うすい百貨店


“特別な”最高の顧客体験提供

三越伊勢丹HD 社長 細谷 敏幸

昨年11月に当社グループの新たな中期経営計画を発表致しました。長期に目指す姿を「お客さまの暮らしを豊かにする、“特別な”百貨店を中核とした小売グループ」と定め、基本戦略を「高感度上質消費の拡大・席巻、最高の顧客体験の提供」としました。“特別な”の言葉には、お客様一人一人の困り事を感動的に解決し、要望に革新的な提案で応える、世界へ常に発信し続けるナンバーワン、かつオンリーワンの百貨店グループを目指す、との想いを込めています。

また、高感度上質戦略などで百貨店を再生させ、三越伊勢丹グループと個客との繋がりを拡げ、「グループ連邦」の推進により収益を拡大し、将来的には憧れと共感の象徴となる三越伊勢丹両本店がある新宿、日本橋の“まち化”――あらゆるインフラをグループ企業が担い、まち全体で大きな収益を上げる体制――の構築を目指します。まずは、2024年度までに経営統合後の最高益を達成し、さらにその先の成長への礎とするべく、グループ全社が一丸となって進めて参ります。

併せて昨年11月末には、当社として初めての「三越伊勢丹グループサステナビリティレポート」を発刊いたしました。当社は、社会に対する企業の責任として、社会の様々な課題に向き合い、企業活動を通じてその解決に貢献することで、関わりのある全ての人々の豊かな未来と、持続可能な社会の実現に向け、役割を果たして参ります。



節目の年に開拓精神を取り戻す

札幌丸井三越 社長 神林 謙一

昨年は周期的な感染拡大の波によって、社会、経済活動が大きく制限されました。とりわけ、雪まつりなど魅力のあるイベントが中止になったことによる道外からの観光客数減が、百貨店の来店客数減に繋がり、我慢の1年となりました。

百貨店は街の中心部に店を構え、基本的にはお客様の来店をお待ちするという商売を創業来、続けて参りました。別の見方をすると、来店をありがたく思いつつも、当り前のように考え、あぐらをかいていたようにも思います。

緊急事態宣言下の「百貨店は不要不急」であるのか、という問いに改めて我々の存在意義を考え直させられました。確かに、我慢をしなければならない時はあります。しかし、そのような時にこそ、百貨店で提供する商品、サービスが必要なのではないかと考えました。

「人はパンのみにて生くるものにあらず」ということわざがあります。人は物質的に満足すればそれで良いというものではなく、精神的に満たされることを求めて生きる存在である、という意味であると思います。百貨店が不要不急と言われてしまうということは、精神的な満足を提供できていないということだと、猛省致しました。

丸井今井も札幌三越も創業来、北海道で暮らす皆様の生活を豊かにしたい、精神的な満足感を高めたいという思いで、道民とともに成長してきました。今一度、この原点に立ち戻り、足元のお客様に目を向け、商売の在り方を見詰め直すことと致しました。「丸井今井に行くと、三越に行くと、豊かな気持ちになる」と皆様に言って頂けるためには何をしなければならないか、という問いを自らに投げかけ、その答えを追求していきたいと思います。

さて、今年は丸井今井が創業150周年、札幌三越が開店90周年という大きな節目を迎えます。2018年に命名150年を迎えた北海道とほぼ、軌を一にして歴史を刻んできました。いわば、北海道の開拓の歴史とともに成長してきたと言えます。

そこで、周年記念のテーマを「フロンティア」と致しました。かつてはあったであろう、薄れつつある開拓精神を今一度取り戻したい、そしてこれからのお客様の暮らしをフロンティアしていきたいという思いを込めております。

これからこそ、お客様の暮らしに寄り添い、北海道になくてはならない企業として歩み続けられるよう、一致団結して努力をして参ります。



新中計始動、3つの重点戦略

新潟三越伊勢丹 社長 牧野 伸喜

2021年度は前年度から続く大型リモデル、小型店改装など、コロナ禍においても攻勢をかけた年でした。婦人服・ベビー子供服のリモデルに加え、現代アート・近代アート・工芸品の展示・販売を行う「イセタンアートギャラリー」を設けました。これにより新潟三越店の強みであった伝統や文化の提案を行える場ができました。

また小型店である三条ショップの移転・改装も行い、予算を上回る実績となっております。さらに、本館7階に「THE SALON」を新設し、外商を中心としたプライオリティの高いお客様への質の高いサービスを充実させました。このような形で、前年度から続く改装計画を進めながら、新潟県唯一の百貨店としての存在価値を高める努力をして参りました。

21年に都市再生緊急整備地域(通称:にいがた2km)に認定されたことで、新潟駅~新潟伊勢丹店のある万代エリア~新潟三越店のあった古町エリアの再開発がこれから進んで参ります。新型コロナによる社会環境の変化に加え、地域の変化も顕在化してきました。

それらを踏まえ、外部環境の変化に対応すべく、新中期計画(22年度~24年度)を策定しました。その中では「高感度上質戦略」、「個とのつながり戦略」、「グループ連邦戦略」の3つを重点戦略として推進していきます。

1つ目の「高感度上質戦略」についてですが、これは単に富裕層に高額品を販売するという戦略ではありません。特別なお買い物、つまり高感度上質消費をされたいと思ったときに真っ先に選ばれるお店をつくり上げることです。

2つ目の「個とのつながり戦略」についてはグループ基盤の中で、新しい個客識別の仕組みが導入されることもあり、そういった仕組みも含めて、お客様一人一人の暮らしに寄り添うことで、お客様のライフタイムバリューを上げていくことを実現したいと思っています。

3つ目の「グループ連邦戦略」については、MIグループが持っている様々なグループ会社と縦横の連携を強め、新しいビジネスモデルをつくり上げていくことです。百貨店だけのポートフォリオから脱却し、新たな収益モデルをつくり上げていきたいと考えております。

これら3つの重点戦略を推進することで、新しい新潟三越伊勢丹をつくり上げていきたいと考えております。



将来の成長へ収益基盤再構築

丸広百貨店 社長 神谷 勉

一昨年から続く新型コロナウイルス感染症は再拡大を繰り返し、日本経済の回復は足踏み状態が続いております。

当社におきましても、度重なる緊急事態宣言の発出や蔓延防止等重点措置の適用により、人流が制限される中、厳しい経営環境が続きました。そして、新型コロナウイルスの影響が長期化する中、行動変容による需要の大きな変化や、デジタル化の進展により、ボーダレスな競争が拡大しており、百貨店を取り巻く経営環境は、これまで以上に厳しくなっております。

このような急速に変化する環境の中、昨年は第11次中期経営計画の改定を行い、成長戦略に向け、安定した収益基盤を確立するため、新たな目標を設定しスタート致しました。そして、安定的利益を確保する構造改革、来店頻度を向上させる営業戦略、顧客基盤のさらなる強化に取り組んで参りました。

川越店では、コロナ禍における巣ごもり需要が高まる中、顧客のニーズに応えるべく昨年9月に食品フロアのイベントスペースを拡大し、全国の美味しい食を取り揃える「エンジョイダイニング」をオープン致しました。また、屋上に多目的スペースの「エンジョイ広場」をオープンし、顧客の憩いの場として再整備をしております。

支店においては、大型テナントを継続して誘致することで、店舗の競争力を高めるとともに、効率的な店舗運営による収益改善を推進しております。

また、昨年4月に「イオンタウンふじみ野」に4店舗目となるサテライト店を出しました。ギフトに対応した、百貨店の強みを生かした人気洋菓子ブランドを中心に、デイリーにも対応した全国のアンテナショップの商品を展開し、新たな小型店モデルの構築を目指しております。

顧客戦略におきましては、昨年9月に「まるひろ公式アプリ」をスタートしております。このアプリでは、自社カード会員データと連携し、顧客との接点拡大や関係強化を図ることで、デジタルを活用した顧客戦略の進化を目指しております。

一方、生産性の向上を図るため、昨年11月に物流機能を再整備致しました。これにより物流コストを大幅に削減し、収益改善に繋げております。

2022年は、コロナ禍で進行した生活者の行動変化を前提としながら、企業スローガン「地域に役立つパートナー」の実現に向け、構造改革による収益基盤の再構築とデジタルによる顧客接点・顧客基盤の活用に取り組んで参ります。

今後、コロナが収束したとしても世の中は以前の状態には戻らず、デジタル化の利便性を体感した顧客のリアル店舗に対するニーズは、より体験を重視したものに変化していくと思われます。

そのため、専門性の高い接客サービスやデジタルを活用した顧客体験を提供し、来店価値・購買意欲の向上に繋げていくとともに、外出機会が減少したお客様に対し、行動のきっかけをつくる体験型イベントなどの来店施策を増加させることで、顧客のニーズに応えて参ります。

厳しい経営環境が続きますが、社会環境の変化やお客様の要望の変化を迅速に捉え、これまで以上に地域に寄り添い期待に応えることで、将来の成長に繋げて参ります。


 


接点の拡大へ「デジタル元年」

藤崎 社長 藤﨑 三郎助

昨年はコロナ禍により生じたお客様のライフスタイルや取引先の方針の変化に対応し、取引先との協業体制をつくることと、デジタル化を進めて新たな顧客接点をつくることに取り組んできました。アパレル領域を中心に、取引先の方針変更に関しては、双方の生産性向上に向けた取り組みを継続するとともに、お客様の消費動向の変化への対応を進めています。

デジタル化については、来店できないお客様に向けたリモート接客やライブショッピングなど、新しいチャレンジを行ってきました。10月にリニューアルしたECにおいては、コンテンツの充実と決済方法を多様化し、リアルとオンラインの両方をシームレスにご利用頂く環境を整備することにより、さらにお客様の利便性を向上させます。

また、東北の名産品を取り揃えたショップ「伊達CRAFT」の3Dバーチャルストアをスタートしました。ECで商品を購入するだけでなく、リアル店舗で買い物をしているかのような体験を通して、新しい価値を提案しています。今後も他の売場に拡大していく予定です。

東北に13店舗ある地域店舗においては、本店と同じ物産展やブランドの期間限定販売会を開催して地域のお客様に大変好評を頂いたことから、さらにこれらを強化していきます。

本年は新しい生活様式に基づくお客様の価値観の変化や、加速するデジタル化、環境・社会意識の高まりに対応していきます。具体的には、本店においてお客様の関心が高いウェルネスの売場を構築し、全館を通して美と健康に関して一貫性のある提案を行います。

さらにリアルとオンラインともに食の強化を継続し、多様化するギフトと豊かな食生活へのニーズに応えます。

また、本年を当社のデジタル元年と捉え、藤崎アプリをスタートさせ、デジタル接点の拡大とお客様一人一人のニーズに応えるワントゥワンマーケティングを進めます。

併せて、社内のデジタルリテラシー向上に向けて、基礎的な知識習得に向けた資格取得の推奨やクリエイティビティの向上に取り組みます。

環境・社会意識の高まりに対しては、昨年6月に発信した環境宣言を基に設置した環境プロジェクトにより、環境に配慮した商品を通した情報発信や「フジサキの杜」活動などの取り組みを進めていきます。

また、地域の生産者との繋がりを生かし、想いやストーリーを伝える場がリアルとオンラインの両方にあることを強みに、東北一番店の百貨店として、東北の名産品や地域の魅力を全国に発信します。


「繋ぐ」掲げ、より強く温かく

水戸京成百貨店 社長 芹澤 弘之

2021年度は中期経営計画(E4プラン)の最終年度、また新店開店15周年の節目の年として全館テーマ「丸」を掲げ、到達目標実現に向け、従業員一丸となって取り組んで参りました。

売場改装に関しては紳士、婦人服を中心にブランド撤退区画への対応に注力しました。また、友の会券のカード化、新ECサイトの立上げ、SDGsの実現に寄与する蕎麦栽培事業などをスタートさせましたが、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、行政からの相次ぐ感染防止の強化指定を受け、8月には県として2度目の緊急事態宣言が発令され、入店客数は大幅に減少しました。

宣言解除後は、お客様と従業員の安全を最優先に感染防止対策を強化し、新しい生活様式に対応した店舗運営、ライフスタイルの変化や新たな需要の取り込みに向けた商品展開に取り組み、売上げの確保に努めました。自粛明けの反動増、イエナカ需要の定着および伸長、行政による各種施策の効果などにより消費マインドは回復傾向にありますが、引き続き予断を許さない状況です。

22年は新型コロナウイルス感染再拡大が危惧され、個人消費への影響も懸念されますが、新たな中期経営計画の初年度として、ライフスタイル、働き方、消費行動の変化に対応した店舗運営に取り組んで参ります。全館テーマは「繋(つなぐ)」を掲げ、お客様、地域、従業員との新しい繋がりを構築し、より強く、より温かみのある店づくりを目指して参ります。

売場改装計画は、食品売場のリモデルを継続し日常支援MDの強化を図ります。また、MDの差別化や質の高いサービスの提供によるリアル店舗としての強みを生かすために、ゾーニングプランの見直しに着手して参ります。

来店推進策としては、感染拡大防止に留意しながら、価値と価格の多様化、消費の二極化へ対応していくために、新しい価値観の提案と環境問題への取り組みを積極的に展開して参ります。また、SNSを活用した情報発信を充実し、デジタルでのアプローチを強化して参ります。

サテライトショップは本店との連携を強化し、品揃えの拡充、地域性への対応、店舗を拠点とした外商活動を強化していきます。特に化粧品売場を新設し、拡大・改装するつくばショップは、フリー客の次世代顧客化を推進して参ります。

販売チャネルの多角化としては、21年に立ち上がった新ECサイトの機能拡大によって、リアル店舗との融合による新たな客層の顧客化と売上げ拡大に努めて参ります。

そのほか、行政や地域団体との連携、他業界とのコラボレーションによる新規事業なども視野に入れ、地域社会の活性化に取り組んで参ります。従業員一人一人が創造と革新への意識を高め、地域の皆様にとって常に「いいものいいこと・いつもいっぱい」の百貨店であり続けられるよう、努めて参ります。


「リアル店舗の強化」は不変

うすい百貨店 社長 平城 大二郎

2021年度のうすい百貨店を取り巻く環境は、新型コロナウイルス感染状況に左右される中、難しい舵取りを強いられました。

3月から5月にかけては、前年の緊急事態宣言下からの反動増があり、大きく売上げを挽回。一転して8月は新型コロナの感染再拡大により、厳しい推移となりました。9月下旬、郡山市のまん延防止等重点措置の解除にともない、売上げは回復基調を示しています。20年度から対応していた営業時間の短縮も、10月には通常の営業時間に切り替えました。

こうした環境下にあって、当社の21年度業績は一昨年の水準には及ばないものの、増収増益の見通しです。

21年度は前年9月に県内唯一の百貨店となって迎えた年であり、特に外商の強化を基軸とした取り組みを行いました。広域地区をカバーするため増員、営業部員を26名体制としました。外商顧客向けの新規企画は、普段取り扱いのない服飾品のブランド販売会のほか、仏像彫刻「松本明慶展」が好評を博しました。

昨年開設した福島市内の福島営業所と同施設内にてブランドフェアなど限定催事を行い、郡山まで足を運べないお客様に満足して頂ける企画にも取り組みました。

これらの成果もあり、外商の売上げは一昨年を上回る伸び率を示しています。また、デジタル化、働き方改革の一環として、外商ではスマホによるSFA(営業支援システム)の活用にも着手しています。

リニューアルでは、アパレルを中心として撤退が相次ぎ、厳しい状況の中、12区画を新規導入・改装しました。区画の効率は改善されてきています。サービスにおいては、19年に発行を開始したハウスカード「うすいJカード」の会員数が2万人を超えました。現金カードからの切り替えを推進しており、顧客の単価アップに寄与しています。

百貨店の灯火を消してはなりません。県民からの期待は大きいと痛感しています。うすい百貨店は、他の小売業態にはないアイデンティティを持っています。「うすいCMソング」の存在です。

「しゃれたセンスのうすい 私のうすい 若さにあふれたうすい おしゃれなうすい しあわせうってるデパート みんなのデパート デイトもうすい 夢のデパート」

昭和41年に発表され、半世紀以上に亘り親しまれているこの歌こそが、百貨店の存在意義そのものであると断言できます。

22年度も、先行きが極めて不透明な中で、不変の経営ビジョンである「リアル店舗の強化」を中心に全力を挙げていきます。また、新規来店を促す施策として、PayPay、ⅾポイント、楽天ポイントなどと連携した特典アップによる誘客施策を積極的に実施していきます。

今年度も小売形態の多様化にともなう生き残り競争は熾烈さを増していきますが、うすいの強みを生かし、県内唯一の百貨店としての存在意義を発揮していきます。

 

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