高島屋、「3密」を避けるドライブスルー方式に商機
政府が発令した緊急事態宣言を受け、百貨店業界では店舗の臨時休業や生活必需品を扱う一部の売場での営業が続く。3月や4月の売上げは過去に例を見ないほど落ち込み、経営は厳しさを増しつつある。そうした中でも、地域住民の生活を支えるため、外出を自粛する人々の毎日に〝潤い〟を与えるため、さらには従業員を守るため、各社は食料品売場やインターネット通販を拠点に奮闘する。その現場を追う。第4回は高島屋だ。岡山高島屋を皮切りに、食料品のドライブスルー方式での販売をスタート。「3密」を避けられる環境を整え、上質で安全・安心な食料品を求める客を受け入れる。
高島屋は5月7日時点で、国内の16店舗(日本橋高島屋S.C、タカシマヤ タイムズスクエア、玉川高島屋S・C、立川高島屋S.C、横浜店、港南台店、大宮店、柏高島屋ステーションモール、高崎高島屋、岐阜高島屋、大阪店、堺店、泉北店、京都店、洛西店、岡山高島屋)が、営業時間を短縮した上で、食料品売場を構える。
ただ、食料品売場は混雑しやすい。「生鮮品を中心に発生しやすい『3密』とゴールデンウィークの混雑を防ぐため」(高島屋)、事前に電話で商品を予約すれば、車から降りずに支払いと受け取りが可能なドライブスルー方式での販売を採り入れた。
まず、岡山高島屋で4月24日に受け付けを開始。28日には柏高島屋ステーションモール内の柏店、5月1日には高崎高島屋、3日には横浜店、港南台店、玉川高島屋S・C内の玉川店、6日には新宿店へと広げた。
品揃えは当初、野菜や果物、精肉などを中心に据え、例えば柏店では「家族に高齢者もいて心配な中、このような取り組みは助かる」、「混雑時間を気にせず、レジにも並ばず、車ですぐに受け取れるのは嬉しい」と好評を博し、利用者も「徐々に増えている」(高島屋)が、売上げの面でモデルケースとなったのは、弁当や惣菜、菓子を手厚くした横浜店だ。
横浜店は、24種類の弁当と13種類の惣菜、8種類の菓子、計45種類を用意するとともに、「崎陽軒」や「勝烈庵」、「かをり」など〝ハマっ子〟に馴染みがあるブランドを充実させた。
これが奏功。2日に予約を始めると、GWにあたる5月3日~6日の4日間で約800点を売上げた。GWが明けた7日も108点と多く、1000点が視野に入ってきた。狙い通り、崎陽軒や勝烈庵など〝地元〟のブランドが牽引し、「なだ万厨房」をはじめとする料亭系も好調。増加する家飲みやオンライン飲み会の需要に支えられて、「梅や」の焼き鳥も売れ行きが良い。
横浜店は「注文の1件あたりの買上げ点数は平均で5と多く、外出を自粛するGWの楽しみとして、家族で利用してくれたのではないか」と分析する。後続の玉川店や新宿店、岡山高島屋も、弁当や惣菜を強化した。
ドライブスルー方式での販売は期間限定だが、すでに岡山高島屋、柏店、玉川店は「当分の間」に延長した。高島屋はスーパーマーケットやコンビニエンスストアなどでは購入できない、百貨店ならではの食料品を安全・安心な方法で提供し、外出を自粛する人々に〝ハレ〟の気分をもたらす。