キリン、「一番搾り」好調 健康志向や酒税法改正を追い風に
キリンビールの「キリン一番搾り」が好調だ。同ブランド缶商品の5月の販売数量は前年比で約4割増と大きく前年を上回った。今春にリニューアルした「キリン一番搾り生ビール」の大規模なプロモーションが奏功し、昨秋発売の「キリン一番搾り糖質ゼロ」も酒税法改正による減税や健康志向が追い風となって売上げを伸ばした。
キリン一番搾り生ビールは2017年と2019年に「麦本来のうまみが感じられる、調和のとれた飲みやすい味わい」を目指してリニューアルを重ねた。そして今春、さらに「一番美味しいビール」を目指して刷新。麦のうまみや澄んだ味わいが感じやすくなるよう仕込み条件や発酵条件を最適化し、〝飲みやすく飲み飽きない〟という同社が目指す理想の味を実現した。
発売に合わせて、大規模なプロモーションを実施した。テレビでは3月26日から「ビールに本音」をテーマにした新CMを放映。俳優の堤真一さんと満島ひかりさんが最近ビールを飲んでいない人や一番搾りをあまり飲まない人など、幅広い職業・年齢層の人のビールに対する本音に触れつつ、新しい一番搾りを飲んだ感想を聞いた。ダイレクトなリアクションと感想が好評となり、CM好感度調査(CM総合研究所調べの2021年4月度 銘柄別CM好感度ランキング)で1位を獲得。放映開始週の店頭販売容量は昨年同期比115%超で推移した。
4~5月には過去最大規模のキャンペーン「キリンビール史上最大!!新・一番搾り100万本当たるキャンペーン」を行った。ツイッター、ライン、グーグルで応募を受け付け、当選者には一番搾り生ビール、または糖質ゼロと引き換えられるデジタルクーポンを進呈。ビール愛飲者だけでなくビールを飲まなくなった消費者にもトライアル飲用を喚起した結果、SNS上で話題となり、合計500万回超の応募が集まった。
昨年10月に発売した一番搾り糖質ゼロは、約5年の歳月と350回以上の試験醸造を重ね、国内で初めて糖質ゼロのビールを実現した。一番搾り製法ならではの美味しさと糖質ゼロという価値が評価され、今年5月には売上げが累計400万ケース(大びん換算)を突破。同社の過去10年の新商品の中で最速の記録を樹立した。
同社の調査によると、同商品を購入した客のうち約6割が普段糖質オフ・ゼロ系のビール類以外を飲んでいたという。「ビールの糖質は気になるが、糖質オフ・ゼロ系のビール類には味の面で不満を抱える客の潜在需要を捉えた」と分析する。加えてコロナ禍での健康志向の高まり、「一番搾りブランド」の安心感、昨年10月の酒税改正によりビールカテゴリーの減税などが重なり、消費者がビールをポジティブに見直していることも勢いを後押ししているようだ。
これら2商品が牽引し、今年1~5月の一番搾りブランドの缶全体の売上げは対前年で約5割増にまで伸長した。今中元にはキリン一番搾り生ビールと一番搾り糖質ゼロ、ギフト限定缶の「一番搾りプレミアム」、期間限定の「一番搾り超芳醇」を詰め合わせた新商品「一番搾り4種飲みくらべセット プレミアム・超芳醇・糖質ゼロ入り」を発売し、さらなる認知度の拡大が期待できる。一番搾りブランドはビール最盛期に向けてますます勢いを増しそうだ。