京王百貨店、基本と健康管理の周知徹底でリスクを最小化
<<連載>>コロナ禍で店頭の安全・安心を守るために 前編 京王百貨店
ワクチンの接種が始まり、コロナ禍の収束に期待が膨らむ一方、百貨店業界は商売と安全・安心を両立するため、難しい舵取りが続く。客にマスクの着用を求める、入口で検温や消毒を実施するなどは、もはや店頭での見慣れた光景だ。百貨店業界にとって集客の要である大規模催事も、従来の「行列や賑わいを創り出す手法」から脱却しなければならず、出展者や売場を減らして通路を広げる、入場を制限する、試食・試飲を中止する、混雑の状況を示すといった改革を推し進めてきた。未曾有(みぞう)の事態でノウハウが乏しい中、どう店頭の安全・安心を保つか。京王百貨店と小田急百貨店の挑戦を追う。前編では、京王百貨店の内山啓介総務部部長兼品質管理担当統括マネージャーと久保統総務部総務・コンプライアンス担当統括マネージャーに、新型コロナウイルス対策を尋ねた。
■無理は禁物、スロースタートでOK
――新型コロナウイルスの感染拡大に対する初動を教えて下さい。
久保 「動き出したのは昨年の1月24日です。専用の組織はありませんでしたが、店舗運営部や経営企画室、人事部、総務部など関連する部署が連携し、店頭の販売員のマスクの着用、消毒液の配備、営業終了後の店舗の消毒などを始めました。そして、2月20日に対策本部が発足。経営企画室、人事部、総務部を主体に、他の部門がバックアップする形で、新型コロナウイルスへの対策を本格化。感染者が判明した場合を想定して閉館、消毒、営業再開までのフローの作成など、有事の対応を協議しました」
――対策本部の業務は何でしょうか?
久保 「営業時間の短縮やイベントの実施の可否検討、グループ企業内での情報連携などを行い、4月以降は主に緊急事態宣言下での方針を決めました。同業他社の事例も参考にしながら、お客様と従業員の安全を第1に考えました。お客様や従業員、取引先への周知を徹底した結果、大きな混乱はなく、新宿店および聖蹟桜ヶ丘店の臨時休業(新宿店は4月8日~5月17日、聖蹟桜ヶ丘店は4月8日~19日)、新宿店および聖蹟桜ヶ丘店の食品売場からの順次再開(新宿店は5月18日、聖蹟桜ヶ丘店は4月20日)を乗り切れました。今年に入ってからの2回目の緊急事態宣言については、すでに新型コロナウイルス対策のノウハウが蓄積されている上、お客様のマスクの着用や手指消毒も習慣化されており、営業と安全・安心を両立できています」
――振り返って、印象に残るエピソードはありますか?
久保 「エピソードではないですが、感染者をそれほど出さずに営業を継続できているのは、従業員の健康管理に重点を置き、注視してきた成果と考えています。人事部が中心となり、自社の従業員の健康管理だけでなく、取引先の協力を得て、体調不良の際は出勤を控えるように徹底してきました。本人だけでなく、同居人に表れた時も同様です。PCR検査を受けた場合も、必ず連絡してもらいます。マスクの着用や消毒も含めて基本的な感染防止策ですが、それが奏功したと捉えています」
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