ワイン持ち込みを気軽に 阪急阪神百「ワイノミ」 利用者増
好みのワインを持ち込める店、教えます――。「Winomy(ワイノミ)」が、じわりと広がってきた。阪急阪神百貨店が2018年11月7日に立ち上げた、ワインを持ち込める飲食店を検索、予約できるウェブサイトで、月間のページビューは約8万、ユニークユーザーは約2万、メールマガジンの登録者は約8000にのぼる(2020年1月23日時点)。愛好家の「飲食店で頼めるワインは種類が少ない上、値段が高い」、「飲食店に『ワインを持ち込めるか』と聞きづらい」といった不満を解消する一方、ウェブサイトに情報を掲載する飲食店を有料で募集。新しいビジネスモデルとして確立させる。
阪急阪神百貨店がワイノミを開いた背景には、ワインを取り巻く状況の変化がある。消費者の知識は年々増え、ワインのラベルを撮影するだけで詳細が分かるアプリ「Vivino(ビビノ)」も浸透。特に愛好家は「『ボージョレ・ヌーヴォー』は空輸で高い。もっと安くて良いワインがある」、「料理が美味しい店でもワインの選択肢は赤、白、泡くらいで、ボトルの価格も自分で買った場合の2倍~3倍。それなら家で飲む」と不満を抱く。実際、国税庁やメーカーらの調査でワインの市場は右肩上がりだが、ボージョレ・ヌーヴォーのそれは縮小を辿る。
阪急阪神百貨店は、こうした不満を解消するプラットフォームを構築しようと考えた。
こだわったのは「BYO DATA」と持ち込み料が含まれた限定のプランの開発だ。店舗を紹介するページには「BYO DATA」の項目を設け、持ち込み料、ソムリエやワインセラー、ワイングラスの有無、ワインを事前に預けられるかなどを明記。安心して予約できるように配慮した。限定のプランは「持ち込み料がゼロなわけではないが、心理的に『お得』と感じて予約に結び付きやすい。1番のポイント」(千賀啓司事業部長)という。
今年1月23日時点で、関東では約200、関西では約30の飲食店が参画する。東西で数に差があるのは、1人当たりのワインの消費量が関西の3.5リットルに対し、7リットルの関東で先に募集を始めたからだ。交渉では「持ち込みを許すと、酒類の売上げが減る。商売にならない」と突っぱねる飲食店も少なくないが、千賀氏は「持ち込み料は1000円や2000円の粗利と捉えて欲しい。ソムリエを雇い、高額な設備を整え、在庫のリスクを負ってワインを提供するよりも、遥かに儲けが出やすい」と強調する。
サイトの閲覧者が増えているほか、「持ち込み料込みで5000円のプランを始めたら、1カ月に10組・60人が来た」などの成功事例を公開しており、1カ月に10前後の飲食店が加わる。昨年1月からは集いの場の提供にも注力。中でも、輸入業者とワインと食事のペアリングを楽しむ会、生産者の想いを聞ける会など初心者向けを充実させ、持ち込みや持ち寄りを楽しむ中級者、上級者への育成、ひいてはワイノミの利用者の嵩上げを狙う。
掲載料は、1カ月で5000円、1万円、2万円の3種類。金額で掲載の順番や写真の数などが異なる。「掲載店舗が1500に達すれば、事業は黒字化される」と千賀氏。新規事業もワインも、熟成には時間がかかる。他の百貨店や「エノテカ」、ワインショップに宣伝用の媒体を置いてもらうなどでPRに本腰を入れ、イベントの収益化にも取り組み、着実に改良していく。