初心者も安心、百貨店担当者が奨める〝間違いない〟おせち
2020/11/13 5:00 pm
おせちのプロが、自慢の逸品を教えます――。新型コロナウイルスに感染するリスクを考慮して、年末年始の帰省や海外旅行を自粛する人々が「イエナカ」を充実させようと熱視線を送るのが、おせちだ。しかし、初心者が選ぶのは難しい。想像と異なるおせちが届き、暗い気持ちで2021年を迎える――。そんな悲劇を避けるため、デパートニューズウェブでは、東京都と大阪府の主要百貨店のおせちの担当者にアンケートを実施(三越伊勢丹と阪急阪神百貨店は、のれん別)。おせちの〝プロ〟に、初心者でも安心して購入できる、満足できる自慢の逸品を挙げてもらった。しかも、「12月に入っても買える」、「直前でも買える」という条件付きだ。熱視線を浴びるがゆえに例年より動きが早く、想定に反して売り切れる可能性はゼロではないが、担当者のアピールを熟読して、新年を祝う〝お供〟を選んで欲しい。
2000年以降、おせちは右肩上がり
百貨店業界では2000年以降、おせちの売れ行きが好調だ。共働き世帯が珍しくなくなり、おせちは「作る」から「買う」に変わりつつあり、じわじわと数字を伸ばしてきた。今年はコロナ禍という特殊な状況下だが、いわゆる「巣ごもり需要」で勢いは加速。10月下旬時点での売上げは、「前年の約1.1倍」(伊勢丹)、「新宿店と町田店の受注は好調で、インターネット通販は前年の約1.5倍」(小田急百貨店)、「既存店の前年比で約1.4倍、ネット通販は同4倍」(そごう・西武)、「10月末までの前年比で22.5%増」(大丸松坂屋百貨店)、「10月末までで前年の約1.2倍」(東急百貨店)、「池袋本店の10月末までで前年比25%増」(東武百貨店)、「既存店の前年比で約1.8倍、ネット通販は約2.2倍」(松屋)、「ここ数年にない伸びで推移しており、ネット通販は前年の約1.5倍と過去最高の伸長率」(阪急)、「ネット通販が牽引し、(店舗を含めた)全体として前年を上回っている」(阪神)と、好スタートを切った。
売れ筋に反映されるコロナ禍やイエナカ志向
売れ筋も、コロナ禍や「イエナカ志向」を反映する。「複数買いが目立ち、鍋やローストビーフなど元日以外も楽しむ傾向がみられる。東京都に店舗を構える主要百貨店では、個食用のおせちも伸長」(伊勢丹)、「取り分けが不要な個食用のおせち、季節の挨拶としての需要もある『広域配送可能おせち』が人気。広域配送おせちの受注は10月末時点で前年の約3倍にのぼる」(京王百貨店)、「小分けが可能で安心、清潔なカップおせちや1人前の個食用のおせちが好調に推移しており、外食を自粛する人も多いからか、有名店のシェフがコラボレーションしたおせちも人気」(そごう・西武)、「衛生面に考慮した1人用や1人1折のおせち、12月29日や30日に届くオードブル、鍋が例年になく好調」(大丸松坂屋百貨店)、「個食用、少人数用の需要が増えており、(外食を避けるからか)有名なシェフや料亭のおせちの売れ行きも良い」(東武百貨店)、「取り分けないで済む個食用の売上げが前年の約2.5倍」(松屋)、「少人数用、取り分けが不要な個食用、さらには地方に住む両親への贈答需要か、全国に配送可能な冷凍おせち、年末年始用の惣菜も好調」(三越)という。
大阪府の主要百貨店でも、傾向は同様だ。「傾向は大きく分けて『個食化』、『少人数化』、『配送の増加』の3つで、10月下旬時点では個食用や少人数用が好調」(近鉄百貨店)、「(10月末時点で)少人数用と個食用の売れ行きが非常に良い」(京阪百貨店)、「5~6人前の大人数用が苦戦する一方、1人前や1人前をセットにした『銘銘おせち』が売上げを大きく伸ばしている」(阪急)、「個食用が、よく売れている」(阪神)。
高額品の需要も旺盛
帰省や海外旅行を止めた分の予算を回すためか、今年は高額品の需要も旺盛だ。「海外旅行需要がなくなったためか、高額品の需要が多い」(大丸松坂屋)、「例年の売れ筋は1万5000円~2万5000円だが、1万円~3万円に広がった。売れ筋も両極に集中しており、少人数で個別に楽しむか、『折角なので、いつもより豪華に』と考えているように感じられる」(東武百貨店)、「6万円以上の高額品の売上げは、前年の約1.8倍。『和久傳』のおせちは、16万円を10個、6万5000円を65個、それぞれ用意したが、10月17日に完売した」(松屋)、「高額品の売れ行きが好調」(三越)、「10月下旬時点では、数量限定の高級料亭のおせちの売れ行きが良い」(近鉄百貨店)、「例年はあまり動かない超高価格帯が売れている」(京阪百貨店)、「高額品が、よく売れている」(阪神)。
東京都と大阪府の主要百貨店では、多くが前年を上回る売上げを見込む。前年比で2桁の伸長も期待できる情勢だ。担当者の自慢の逸品だけでなく、活況を呈す商戦にも目を向けると、おせちは一層楽しめる。
以下、のれん別に担当者と推奨品を掲載する。
<協力を得た百貨店>
※企業を東京都と大阪府に分けて五十音順
<お断り>
※「12月に入っても買える」、「直前でも買える」という条件を設けたものの、商品は売り切れる可能性があります
※担当者は敬称略
【推奨者/役職】
中本光昭/食品・レストラングループマーチャンダイジング部マーチャンダイジングマーチャンダイザー
【商品名/価格】
神田明神下 新開花 引出祝膳三段重/5万4000円(税込み)
【概要】
旬を慈しむ懐石料理の心を大切に、素材の持ち味を引き出し、「味を立てる」ことが新開花の家訓。伝統料理は関東特有の重詰めを、祝膳は豪華な吹き寄せ盛りにした。
【推奨する理由】
伊勢丹創業の地、神田の老舗のブランドによる手づくりのおせち。「百合根きんとん」や「からすみ粕漬け」など、手づくりならではの味が楽しめます。
【推奨者/役職】
本田康祐/MD推進部食品担当マーチャンダイザー
【商品名/価格】
葉山 日影茶屋 おせち料理 二段重/5万9400円(税込み)
【概要】
「葉山に日影茶屋あり」という老舗中の老舗で、創業以来350年余りに亘り脈々と継承された会席料理の伝統と、豊かな風土と文化から生まれる革新の味を巧みに融合させ、二段重に惜しげなく盛り込んだ。
【推奨する理由】
1年の始まりに格式高い老舗の美味を届け、幸多き1年を過ごして頂きたいです。
【推奨者/役職】
薄井慎也/食品・レストラン部商品担当バイヤー
【商品名/価格】
服部幸應氏×松阪牛 よし田 特撰おせち/3万2400円(税込み)
【概要】
「松阪牛 よし田」自慢の松阪牛ローストビーフや松阪ポークの角煮をはじめ、服部幸應氏のこだわりの丹波産大粒黒豆や丹波栗の渋皮煮、肉厚高千穂郷産どんこ大葉しいたけなど、全国各地の珠玉の食材を盛り合わせた。
【推奨する理由】
食材へのこだわりを極めたプロとプロがタッグを組んだ至高のおせちで、お重を開けた瞬間に気分が高まる美しい料理が詰まっており、さらにその期待を上回る味わいが楽しめます。また、「イエナカで贅沢グルメを楽しむ」傾向により、いつもよりワンランク上の精肉や肉グルメの人気が高まっていることから、年始に「いつもより少し贅沢なおせちを家族で楽しむ」といったシーンにお奨めしたい肉料理が自慢のおせちです。
【推奨者/役職】
長岡俊範/リーシング本部リーシング二部フード担当
【商品名/価格】
京都のおばあちゃんのおせち 三段重/2万1600円(税込み)
【概要】
丹波の黒豆や山城のたけのこなどの京都の素材を使用し、旨みをじっくり引き出した「おばんざい」を中心に詰め合わせた。
【推奨する理由】
各地のおばあちゃんのレシピを基に企画した、そごう・西武限定のおばあちゃんシリーズは全4種類ありますが、中でも「京都のおばあちゃんのおせち 三段重」が1番人気です。幅広い世代が食べるおせちだからこそ、味付けも上品かつ丁寧に仕上げており、3~4人前あるので、家族団らんで楽しめます。
【推奨者/役職】
内藤真光/本社営業本部MD戦略第2統括部フーズ担当
【商品名/価格】
料理評論家 山本益博監修 うまいのなんの!重(八百彦本店製造)/1万6200円(税込み)
【概要】
1段重だが、お重が25マスに分かれており、少量多品種で色々なものを少しずつ味わえる。また、「おつまみ」を切り口につくっているため、それぞれの品に合う酒をマップにした透明なシートを、お重に添付した。
【推奨する理由】
今年はコロナ禍で外食需要が減り、内食需要が増えています。この商品は正月のおせちとしてだけでなく、12月31日の晩酌のアテ、通常のおせちで足りない方にはオードブル的な扱いなど、1つのお重で3つのシチュエーションを捉えられる〝ハイブリッド〟になっています。
【推奨者/役職】
山下聡/MD本部食料品部おせち担当バイヤー
【商品名/価格】
夢の饗宴おせち/10万8000円(税込み)
【概要】
気鋭の日本人シェフ4人が挑む、新春のスペシャルおせち。東京都麻布十番の裏通りに佇む割烹「かどわき」、五感で楽しむ素材にこだわった横浜の本格フレンチ「レ・サンス」、地産地消の極み、山形のイタリアン「アル・ケッチァーノ」、日本を代表するパティスリー、自由が丘の「モンサンクレール」による豪華絢爛の4段重を楽しめる。
【推奨する理由】
コロナ禍で「巣ごもり」傾向になりがちな正月だからこそ、家で贅を尽くした高級グルメを味わう「人気レストラン」、「名店コラボレーションおせち」が、今年は人気でオススメ。「夢の饗宴おせち」は、4つの名店の味を1度に楽しめる豪華さがポイントです。
【推奨者/役職】
田崎健二/食品統括部惣菜・米飯バイヤー
【商品名/価格】
東急百貨店オリジナル 和洋コラボおせち 二段重/3万4560円(税込み)
【概要】
店主が京の老舗で長年に亘って腕を振るい、創業時の店名を継承した東京都世田谷区瀬田の「泉竹(いづちく)」と、無農薬野菜を中心に安心・安全な食材を使い、その持ち味を引き出す珠玉のフレンチで名高い世田谷区奥沢の「レストラン ラフィーユ」が手を結んだ、美味の饗宴。
【推奨する理由】
近年、ニーズが増加する「組み合せ(コラボレーション)おせち」。それぞれの店舗でつくる「技の競演」を、東急百貨店限定で提案します。
【推奨者/役職】
因幡秀樹/池袋本店食品部販売推進課サブマネージャー(おせちバイヤー)
【商品名/価格】
東武&名店12店 名店コラボおせち和洋二段重/2万6460円(税込み)
【概要】
12の名店のこだわりの逸品を1つのおせちに詰め合わせた、東武百貨店オリジナルのプレミアムな二段重。
【推奨する理由】
コロナ禍で行きたくてもなかなか行くことができない人気のレストランや名店の逸品を詰め合わせた、東武百貨店のオリジナルです。12店の味を1度に味わえるので、家族で楽しんで頂く正月にぴったりです。
【推奨者】
小泉翔/営業一部食品1課弁当惣菜担当バイヤー
【商品名/価格】
ポンドール・イノ フレンチおせち一段重+シェフ特製ローストビーフ/4万8600円(税込み)
【概要】
シェフが吟味したフレンチの数々が、新年を晴れやかに彩る。
【推奨する理由】
自粛生活で外食の機会が減る中、名店の味をおせちで楽しめます。
【推奨者/役職】
角井輝昭/食品・レストランMD統括部マーチャンダイジングディビジョンマーチャンダイザー
【商品名/価格】
京料理 たん熊北店 和風三段重/3万4560円(税込み)
【概要】
昭和3年に京都で開業した老舗「京料理 たん熊北店」が監修した、三越限定の和風三段重。正月の定番の献立を中心に、紅白・五色を意識した彩り豊かな見た目の華やかさに加えて、薄味ながらもしっかりとした味付けで仕上げた。
【推奨する理由】
ここ数年、三越で人気のブランドのおせちで、昨年の販売台数はナンバーワン。今年も10月31日時点でナンバーワンです。昨年の状況から数量的にも余裕があり、12月に入っても購入して頂けると思います。
【推奨者/役職】
志和孝司/商品政策推進部係長
【商品名/価格】
【概要】
近鉄百貨店のオリジナルで、食の嗜好の多様化に対応できるよう、和洋中の代表的な品目をバランスよく詰めた。
【推奨する理由】
有名料亭の監修商品を製造するメーカーが手掛けており、約60品とボリュームが多く、コストパフォーマンスに優れています。年末の外食を控える家族も和、洋、中のそれぞれの美味を楽しめます。品目も定番の海老、数の子、黒豆のほかにアワビ煮やイベリコ豚のローストなど高級食材を使用しており、家で贅沢な食事を味わえます。
【推奨者/役職】
松下克俊/食品統括部食品企画マネージャー
【商品名/価格】
つきぢ田村 おせち三段重/11万8800円(税込み)
【概要】
つきぢ田村は、東京都築地に昭和21年に創業。「料理は5つの味(甘い、酸っぱい、苦い、塩辛い、香辛料の辛み)が上手く調和していなければいけない。それでこそ、食べるお客様はうまいと感じるものだ」という言葉とともに歩んできた。三段重は35品で構成する。
【推奨する理由】
東京から直送便で取り寄せます。東京からの直送は、京阪百貨店では「つきぢ田村」だけです。
【推奨者/役職】
矢野朗子/阪急阪神百貨店第1店舗グループフード商品統括部惣菜商品部マーチャンダイザー
【商品名/価格】
宝梅 阪急のおせち 和風/2万1600円(税込み)
【概要】
素材を生かし、旨みを引き立てる〝なにわの味〟を伝える和風のおせちで、味わい、縁起の良さ、美しさ、十分な食べ応えと、三拍子も四拍子も揃った、長く愛される自慢の1組。
【推奨する理由】
阪急のおせちの中で、販売数量がナンバーワンです。素材の旨みを生かした味わいで、ボリュームも満点。十分な食べ応えがある、阪急で長く愛されているおせちです。
【推奨者/役職】
村上由里子/阪急阪神百貨店第2店舗グループ阪神梅田本店フード販売統括部営業企画部
【商品名/価格】
神戸学院大学コラボ 華咲日和/2万4000円(税込み)
【概要】
阪神限定で、神戸学院大学と共同で開発するおせちの第4弾。今回のテーマは「日本を明るくする、日本各地のおかずが詰まったおせち」で、お重は日本列島をイメージした。コロナ禍の不安な状況の中で〝家族の大切さ〟に改めて気付いた学生達の「おせちを通じてコミュニケーションを深めて欲しい」という思いが込められている。
【推奨する理由】
日本を明るくし、1年を無病息災で乗り切って欲しいという願いを込めて、北は北海道、南は沖縄まで、それぞれの地域に伝わる縁起の良い食材などを盛り込みました。また、未だ外出を控えるムードが漂う中、少しでも旅気分を味わってほしいと考え、日本各地の魅力が詰まったおせちを共同開発しました。