勢い続く大規模再開発-東京駅周辺、日本橋、虎ノ門、麻布編
2022/01/01 12:00 am
東京でオフィス、ホテル、住宅、商業、劇場、ホール、公益施設などを整備した大規模高層複合ビルの竣工が続いている。中でも日本橋、八重洲・常盤橋、虎ノ門、麻布、渋谷、新宿、浜松町などで大規模再開発事業の動きが目立っており、これらのエリアの中には東京駅日本橋口前に完成する「Torch Tower」が約390m、虎ノ門・麻布台地区第一種市街地再開発事業で開発されるメインタワーの約330mなどを筆頭にして、200mを上回る超高層ビルが次々に立ち上がる。「東京中心に勢い続く大規模再開発」と題した今回の1回目では東京駅周辺、日本橋、虎ノ門、麻布の大規模再開発を取り上げる。
東京駅の周りが高層ビル群で囲まれている。JPタワー、丸ビル、新丸ビル、丸の内オアゾ、グラントウキョウノースタワー、グラントウキョウサウスタワー、サピアタワー、鉄鋼ビルディング、常盤橋タワーなどの再開発ビルが林立している。東京駅周りの再開発は、まだ終わっていない。これから再開発が本格化していくのが八重洲エリア。同エリアで大規模再開発だけでも4事業が計画されている。その皮切りとなるのが22年8月末に竣工が予定されている「八重洲二町目北地区第一種市街地再開発事業」で、街区名称は「東京ミッドタウン八重洲」と決まった。すでに高さ240mあるビルが立ち上がり、ビル内部の工事が進んでいる。A-1街区に建つ地上45階建ての東京ミッドタウン八重洲はミクストユースの街づくりがなされ、39階~45階にホテル(ブルガリホテル東京)、7階~38階にオフィス、4・5階にビジネス交流施設、低層階には商業施設、中央区立城東小学校、地下2階には隣接する再開発事業と連携して大型バスターミナルが整備される。
八重洲通りに面してあった、東京建物本社を含め開発エリア内にある、既存建物の解体作業に入っているのが、25年の竣工を目指す「東京駅前八重洲一丁目東B地区市街地再開発事業」。B地区に開発されるのは地上51階・地下4階建てのビルで、事務所・店舗・バスターミナル・カンファレンス・医療施設・駐車場などで構成される。同再開発事業では国際空港や地方都市を結ぶ大規模バスターミナルを整備するとともに、東京駅と周辺市街地等を結ぶ地上・地下ネットワークが整備され、国際会議・学会・セミナー等を開催するカンファレンス施設や演劇やコンサート等を開催する劇場の整備、国際的な医療機能評価(JCI)認証を取得している大学関連病院のサテライトなどの誘致を進め、八重洲の歴史と伝統を未来へ繋ぐまちづくりを目指す。
東京ミッドタウン八重洲の隣で再開発が始まるのが、鹿島建設・住友不動産・独立行政法人都市再生機構など参加組合員6社で設立した、八重洲二丁目中地区市街地再開発組合が手掛ける「八重洲二丁目中地区第一種市街地再開発事業」。延床面積が39万㎡近い超高層大規模複合ビルが建てられ、最先端の機能を有したオフィス、世界に向けて日本の文化・情報を発信する商業施設、劇場などのエンターテインメント機能、外国人の滞在ニーズに対応したサービスアパートメント、外国人子女に教育を提供するインターナショナルスクールが誘致される。また、前述した八重洲駅前の2つの再開発事業と連携して地下バスターミナルも整備する。今年10月に市街地再開発組合が設立された同再開発事業は22年度に権利変換計画認可、24年度に工事着工、28年度に建物竣工となる運び。
八重洲駅前の再開発事業は、これだけではない。東京ミッドタウン八重洲隣の八重洲通り面したエリアでは東京ミッドタウン八重洲と同じ時期(22年秋)に竣工を予定している「(仮称)ヤンマー東京ビル新築工事」が進んでいる。建替えられるヤンマーの新ビルは地上14階、地下3階建てとなり、3階~14階がオフィス、地下1階~2階が商業施設、地下3階~地下2階が駐車場となる。
東京駅周辺における再開発事業は、八重洲エリアだけにとどまらない。東京駅日本橋口前で三菱地所と関係権利者とで開発が始動しているのが東京駅前常盤橋プロジェクト「TOKYO TORCH(トウキョウトーチ)」(大手町二丁目常盤橋地区第一種市街地再開発事業)だ。2016年にプロジェクトが始動、27年度の全体竣工まで10年超かけた大規模複合再開発で、その規模は敷地面積が約3万1400㎡、4棟合わせた総延床面積が約74万㎡。その主役となるのが、A棟の「常盤橋タワー」とB棟の「Torch Tower」。2018年に旧JXビル・大和呉服橋ビル解体跡地に着工した地上38階・地下5階、高さ212メートルの常盤橋タワーが今年6月に竣工、同年7月に常盤橋タワーの商業ゾーン「トウキョウトーチテラス」(13店舗)と街区中央に約7000㎡の大規模広場「トウキョウトーチパーク」がグランドオープンした。
そして23年度には日本ビル・朝日生命大手町ビルが解体された跡地にTorch Towerが着工になる。その規模は地上63階・地下4階、延床面積は約54万4000㎡。約390mという高さはもちろん日本一。オフィス主体の常盤橋タワーに対してTorch Towerは都心最高層クラスの天望施設から国際級ホテル、オフィス、約2000席の大規模ホール、約4500坪の商業ゾーン、銭湯発祥の地といわれる常盤橋ゆかりの温泉施設など多彩なコンテンツが搭載される。他に22年に水道局棟(D棟)、27年度に変電所棟(C棟)が完成する。
TOKYO TORCHがある東京駅日本橋口近くではもう一つ再開発事業が動き出す。日本橋川沿いエリアを対象とした「八重洲一丁目北地区第一種市街地再開事業」だ。東京建物が一員となっている市街地再開発組合設立が認可され、24年度から本体工事に着工、29年度に南街区、32年度に北街区が竣工の運びとなる。敷地面積が約9260㎡、延床面積は南街区に建つ大規模複合ビルが約17万8000㎡。日本橋川沿いの水辺空間を活かした街づくりがなされ、河川区域内の護岸上部も活用して日本橋川交流拠点の象徴となる重層的な広場空間を整備、日本橋川沿い5地区が連携して整備する水辺空間の入口となるゲート広場の設置、エリアマネジメントによる河川区域内の賑わい・交流空間の創出などに動く。加えて、東京駅と日本橋駅を繋ぐネットワークも整備される。
将来、川上空を覆っている首都高速道路を地下化し、川の上空に青空を取り戻すことになる日本橋川沿いの開発構想は他にも幾つかあり、現在街区内の店舗解体工事に入っているのが日本橋川沿いを対象とした「日本橋一丁目中地区第一種市街地再開発事業」で、川沿いとはいってもコレド日本橋裏側から旧日本橋野村ビルまで、その区域面積は約3.0haにも及ぶ。この街区にあった日本橋西川ビル、コレド日本橋アネックス、日本橋御幸ビル、たいめいけんなど全てのビル、店舗が解体された。ただ日本橋川沿いにある歴史的建造物の日本橋野村ビルディング旧館は保存改修が決まっている。
日本橋一丁目中地区市街地再開発事業と昭和通りを挟んだ隣で、再開発が計画されているのが「日本橋一丁目東地区第一種市街地再開発事業。24年度から解体になり、メインのA街区(日本橋一丁目内の南側)は26年度着工、30年度竣工、同B街区(日本橋郵便局のエリア)は31年度着工、34年度竣工予定なので全面完成まで10年以上先となる。A街区に建つビルは地上40階・地下4階、高さ約225m、延床面積約27万4000㎡のスケールとなり、事務所、店舗、貸し会議室などが入る。B街区は地上52階・地下3階、高さ約225m、延床面積約12万㎡のビルに住宅、生活支援施設等が配置される。その他、低層ビルとなるC、D、Eの3街区には公共・公益施設が設けられる。
東京駅周辺を含めた創業の地である日本橋を舞台に街づくりを推進している三井不動産が官民地域一体となって推進している「日本橋再生計画」が2004年から第1ステージが始動。14年から第2ステージ、そして19年から「豊かな水辺の再生」や「世界とつながる国際イベントの開催」などを重点施策にした第3ステージに入っている。その豊かな水辺の再生を具現化する再開発事業が動き出した。それが前述した日本橋一丁目中地区第一種市街地再開発事業。
昨年12月に着工になった同再開発事業は、日本橋川沿いでこれから予定されている5つの市街地再開発事業の中で最初に竣工する日本橋エリア最高・最大級となるミクストユース開発。A・B・Cの3街区にビルが建てられ、C街区にたつメインタワーは地上52階・地下5階、高さ約284m、延床面積約36万8700㎡の超高層棟となる。日本橋川の水辺再生では日本橋川を望むテラス・デッキ、賑わいを創出する広場を複数設け、来街者やワーカーが都心にいながら空と水と緑に囲まれた環境を楽しめる都心のオアシスをつくり上げる計画。街区に整備されるのは事務所・商業施設・ホテル・サービスアパートメント・カンファレンス施設など。この再開発を含めた日本橋川沿いの5つの再開発と首都高速進道路の地下化実現後は、川幅含め幅約100m・長さ1200㎡に及ぶ広大な親水空間が誕生するとみられる。
大手町・丸の内・有楽町エリア(大丸有エリア)を舞台にまちづくりを推進しているのが三菱地所。10年単位で進めてきた‶丸の内再構築″の第1ステージと第2ステージが遂行され、2020年から新たなステージとなる「丸の内NEXTステージ」がスタートしている。‶人・企業が集まり交わることで新たな「価値」を生み出す舞台″を創造することを目指した「丸の内Reデザイン」がテーマの丸の内NEXTステージでは有楽町エリア及び常盤橋エリアを重点的に整備し、2030年までに約6000~7000億円を建替え及びソフト整備に投資する計画。再開発計画を通じて生み出される総延床面積は110万~130万㎡が予定されており、丸の内エリアにとどまらず、有楽町から銀座・日比谷へ、常盤橋から日本橋・八重洲へ、大手町から神田へ、といった3つの周辺エリアとのつながり、拡がりのあるまちづくりにあたる。
建替え・リノベーションが具体化している計画は「丸の内1-3計画」、「東京駅前常盤橋プロジェクト」によるTOKYO TORCH、「(仮称)内神田一丁目計画」、「有楽町ビル」・「新有楽町ビル」の建替えなど。すでに丸の内1-3計画では丸の内一丁目に所在するみずほ銀行前本店ビル・銀行会館・東京銀行協会ビルの3棟一体の建て替えしたビル(地上29階・地下4階)が20年秋に竣工。同年11月には路面飲食店舗・ワーカーサポート店舗・ルーフトップレストランなどからなるアネックスビルもオープンした。21年6月には東京駅常盤橋街区で開発している「TOKYO TORCH」の第1弾となる高層複合ビル「常盤橋タワー」(地上38階・地下5階、高さ約212m)が竣工。そして日本一の高さ(約390m)となる「Torch Tower」が27年度に竣工を迎える。他に大丸有エリアを南北に貫く「仲通り」機能を神田エリアに延伸させる拠点となる(仮称)内神田一丁目計画は地上26階・地下3階建てのビルが新築されるだけでなく、約1000㎡の広場や日本橋川の水辺空間も整備され、25年竣工となる予定。
森ビルで進行している再開発事業は「虎ノ門ヒルズエリアプロジェクト」と「虎ノ門・麻布台プロジェクト」。前者の虎ノ門ヒルズエリアプロジェクトではすでに超高層複合タワーの「虎ノ門ヒルズ 森タワー」(地上52階・地下5階、高さ247m)と大規模オフィスと商業施設を擁する「虎ノ門ヒルズ ビジネスタワー」(地上36階・地下3階)が完成しているが、ここに「虎ノ門ヒルズ レジデンシャルタワー」と「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」の2棟の高層タワー棟が加わる。これら全てが完成すると虎ノ門ヒルズエリアは区域面積7.5ha、延床面積80万㎡に拡大し、国際水準のオフィス・住宅・ホテル・商業施設・インキュベーションセンター・交通インフラ・緑地などを備えた国際複合都市となる。
22年1月に竣工する虎ノ門ヒルズ レジデンシャルタワー(地上54階・地下4階、延床面積約12万1000㎡)は、グローバルレベルの住宅約550戸を供給。会員制のヒルズスパを併設するほか、低層部に商業施設を設け、デッキを通じて虎ノ門ヒルズ 森タワーやビジネスタワーの商業空間ともつながる。これで虎ノ門ヒルズ全体の住宅戸数は虎ノ門ヒルズレジデンスの175戸と合わせ約720戸となる。19年11月に着工し23年7月竣工予定の(仮称)虎ノ門ヒルズ ステーションタワーは虎ノ門ヒルズ4棟の中で一番高い超高層タワー(地上49階・地下4階、高さ約266m、延床面積約25万3210㎡)となる。日比谷線虎ノ門ヒルズ駅と一体開発される同タワーには基準階約1000坪のグローバルオフィス・広場と一体となった商業施設、国際水準のホテルなどが整備される。
虎ノ門・麻布台地区市街地再開発組合が推進している虎ノ門・麻布台プロジェクト(虎ノ門・麻布台地区第一種市街地再開発事業)は1989年に「街づくり協議会」が設立されて以降、30年という長い年月をかけて約300人の権利者と協議を重ね計画を進めてきた。2017年に国家戦略特区法に基づき都市計画が決定され、18年の再開発組合設立認可を経て19年8月に着工、23年3月竣工の運びとなる。ちなみに、六本木ヒルズの場合は地権者が約400人おり1986年から地権者説明を10年以上続け、そして2000年に着工して03年に完成している。
虎ノ門・麻布台の開発事業は、初めに人の流れや人が集まる場所を考え、街の中心に広場を据えてシームレスなランドスケープを計画。そのあとで3棟の超高層タワーが配置され、3棟のうちA街区の高さは約330m。約8.1haもの広大な敷地は圧倒的な緑に包まれ、約6000㎡の中央広場を含む緑化面積は約2.4haに上る。広大な広場を街の中心に据え、オフィス・住宅・ホテル・インターナショナルスクール・商業施設・文化施設等、多様な都市機能を融合させる。延床面積約86万1500㎡、オフィス総貸室面積約21万3900㎡、住宅戸数約1400戸、就業者数約2万人、居住者数約3500人、想定年間来街者数2500~3000万人となる新しい街が出現することになる。また、この街は「RE100」に対応する再生可能エネルギーの電力を100%供給。加えて、世界最大規模の登録面積となる「WELL認証」や「LEED-ND認証」の取得も目指す。