長く使える“本当に良いもの”を 三陽商会の「100年コート 極KIWAMI」

2022/11/22 12:00 am

タグ: 三陽商会 

“一生使えるものですから”——。買い物でよく聞くフレーズだ。商品を勧める際の定番のセールストークだが、昨今は本当に「一生使える」モノを求める機運が高まっている。SDGsやサステナブルといった考え方も追い風に、流行を追いかけるのではなく、高くても質の良い商品を長く使う人が増加。こうした流れを受け、三陽商会は今秋、「100年コート 極KIWAMI」を発売した。2013年から展開する「100年コート」の上位モデルに位置し、同社のコートづくりの技術と品質を凝縮した究極の1着だ。

 

こだわりや付加価値を求めるニーズが年々増加

「100年コート 極KIWAMI」の開発を手掛けた、事業本部コーポレートブランドビジネス部コーポレートブランド課の田中真一氏

100年コートは「世代を超えて永く愛されるコート」を目指し、2013年にスタート。メンテナンスやアフターケアを行う会員サービス「100年オーナープラン」、その一環としてコートを定期的に診断・補修する「100年オーナープラン・ケアプログラム」も提供し、長期間の着用を推進する。既製品に加え、着丈や袖丈を調整できる「パーソナルオーダー」の受注会も定期的に行っている。

売上げは順調に推移し、パーソナルオーダーの受注会も展開を拡大している。「最近は商品へのこだわりや付加価値を求める傾向が高まり、特にパーソナルオーダーは、“こだわり志向”に細やかに応えられるため、人気が高い」(事業本部コーポレートブランドビジネス部コーポレートブランド課田中真一氏)。とりわけコロナ禍以降は、その傾向が加速しているという。

こうした価値観の変化に加え、100年コートの開始時に比べて同社の技術が進化していることから、100年コート 極KIWAMIの企画が立ち上がった。開発は同社の社内横断型プロジェクト「商品開発委員会」を通じて、コート専用の自社工場「サンヨーソーイング 青森ファクトリー」などと共同で取り組んだ。

 

生地は糸から開発、重さを感じにくいパターンを追求

しなやかさと丈夫さを併せ持ち、表面は美しい光沢を備える

「100年コート 極KIWAMI」はメンズ、ウィメンズで各1型を用意。サイズはメンズが3種類(23万1000円)で、ウィメンズが2種類(22万円)を展開する。ブランド複合店舗「サンヨー エッセンシャルズ」やショールーミング型店舗「サンヨー フィッティング ストア」、直営ECサイト「サンヨー・アイストア」などで取り扱う。生産に時間を要するため、今シーズンは各100枚限定で生産した。

その製造工程は、あらゆる部分にこだわり抜いた。表地の原料となる綿花は、国際的なオーガニックテキスタイル認定基準の「GOTS」を取得した、非常に上質なオーガニックコットン「アルティメイトピマ」を採用。アルティメイトピマから採れる原綿は、1本1本の繊維が長く柔らかく繊細だが、適度な耐久性も備える。

この原綿を、既存の100年コートよりもあえて太い糸に紡績。原綿が細く柔らかいため、太い糸にしても柔らかい仕上がりで、しなやかさと丈夫さが両立する。この糸を高密度に織り上げることで、美しい光沢を備えたコート生地が完成する。色はタテ糸とヨコ糸で変えており、見る角度によって色みが変化するニュアンスがある。

歪みやよどみのない、整然としたシルエット

パターン(型紙)は、クラシックかつモダンなシルエットバランスを追求した。素材の上質さを最大限に生かすべく、着用した際のドレープ感にこだわり、ゆとりのある自然なAラインに仕上げた。生地の分量を増やすと重くなりがちだが、重心を肩ではなく体幹に沿って支えられるように設計したため、着用時に重さを感じにくい。袖は肩の丸みへ自然に沿い、腕の可動域を確保し動きやすいラグランスリーブにしている。

着脱式のライナーにはダウンパックを装備した

同商品の特筆すべき点として、ダウンを仕込んだライナーがある。サンヨーソーイング 青森ファクトリーは創業以来トレンチコートを得意としてきたが、多様なコートの生産を可能にするため、ダウンづくりなど複数の設備投資を進めている。これによって、100年コートでは初めて、着脱式ライナーの背中部分にダウンパックを装備。防寒性を高め、より長期間使用できるようになった。

「100年コートの魅力として、デザインが非常にオーセンティックなので、仕事でもカジュアルスタイルでも、様々なシーンで使用できることがある。ダウンライナーの装備によって汎用性が高まり、『良いものを長く使いたい』というお客様のニーズに今まで以上に応えられるようになった」と田中氏は説明する。

 

反応は上々、「逆に安い」という声も

100年コート 極KIWAMIは、9月22日に発売。常設の売場に加えてポップアップ形式でも展開しているが、反応は好評だ。同社のサイトやSNSを見て「長くスタンダードなものを買いたい」という客が多く訪れ、中には「ハイブランドのトレンチコートよりも生地や着心地が素晴らしい。品質に対して、むしろ安いくらいだ」と感想を漏らす人もいた。

田中氏は「品質には絶対の自信があるものの、100年コートの倍近い価格のため、心配な気持ちもあった。しかし、こうした反応を貰えて嬉しく思う」と語る。100年コートの上位モデルが登場したことで、100年コートと極KIWAMIの比較検討ができるようになり、100年コートの売れ行きにも良い影響を与えている。

改めて三陽商会のものづくりのレベルの高さを知らしめた100年コート 極KIWAMIだが、その根底にある考え方は変わらない。「100年コートは本当に質の良い、普遍的でベーシックなものを、アフターサービスも含めて長く着て頂くというコンセプトでやってきた。これは当社だからこそできる強みであり、これからもしっかりと追求していきたい」(田中氏)。

(都築いづみ)

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