キリン、国産ウイスキー好調 海外輸出とブランド育成をいっそう加速
2022/07/29 3:57 pm
キリンビールの国産ウイスキーカテゴリーが好調だ。2022年1月~6月の累計販売数量が、市場を上回る前年比140%を推移。中でも4月にリニューアルした「キリンウイスキー 陸」(以下、陸)は、同期間で前年より2倍超の販売数を記録した。今後の持続的成長を達成するため、海外輸出を開始した「キリン シングルグレーンジャパニーズウイスキー 富士」(以下、富士)とともに、10年先のキリンを支える国産ウイスキー事業として、海外への輸出強化とブランド育成を加速させる。
同社の分析によると、「陸」は、「品質の良さを感じながら、手に取りやすく親しみやすいパッケージデザイン」と、「おいしさ本格、新しいウイスキーへ」の新コミュニケーションが奏功し、リニューアル以降6月までの累計販売数が前年比約3倍、上半期累計販売数量も前年比216%と市場平均を大きく上回った。購入背景として、これまでウイスキーにはなじみの薄かった新たな顧客層による「味への興味」や「品質への好印象」が挙げられる。
同社のこだわりの製法である「小樽熟成」、「ノンチルフィルタード製法」を採用している。ノンチルフィルタード製法は一般的な製法とは異なり、ビン詰め前に冷却ろ過をしない製法で、香味成分がほとんど析出せず、原酒本来の豊かな香りの良さ、コクのある味わい、深みのある余韻を実現させる。
リニューアル時には、ウイスキーでは珍しいパウチ仕様の飲み切りタイプで大規模なサンプリングを実施。SNS上でも実際に飲んだ感想として、「おいしい」、「コク」、「華やか」、「香り」などのワードで好評を博した。今年は年間で50万人へのサンプリングを実施する。
「富士」は、3月にオーストラリアへ、6月に中国への輸出を開始した。また、以前より販売していたアメリカでは、3月時点で8州だったのを7月には14州と展開を拡大。上半期の累計輸出金額は前年比約6倍と好調だ。
味わいは世界的にも高評価を得ており、2021年の販売数量は国内で約3倍以上、海外では約20倍以上と、大きく伸長している。25年までには、販売金額で「富士」ブランドの海外比率50%を目指す。
国産ウイスキー事業全体では、昨今の原酒不足解消のため、21年に約80億円を投資して富士御殿場蒸留所の設備を増強。
保管能力を約2倍増強し、発酵・蒸留設備として小型タンク4基、蒸留器2系列を導入した。同社は国産ウイスキーを「10年先を支える事業」と位置付け、今後も注力していく構え。