【インナー特集】改装後120%を記録 イエナカ充実ニーズつかみ新客獲得に成果
2021/10/22 7:00 pm
今年8月に改装した松屋のランジェリー売場が好調だ。オープン以降前年比約120%の売上げを維持している。コロナ禍で家の中の充実を求める消費者が増えたことを受け、シンプルで自然体を表現できるランジェリーや「美と健康」をトータル提案できるブランドを導入。狙いが成果として見え始めた。
取り扱うブランドは改装前と比べて7ブランド増えた。その新規ブランドが特に好調だ。例えばワコールは新規ブランドも既存ブランドも動きが良いが、特に新ブランド「Yue」は人気が出てきている。立ち上がりは厳しかったものの、他ブランドを購入した客にプラス1アイテムとして提案、認知を広げる努力を行った。また非接触でサイズ計測ができる「ワコール3Dスマート&トライ」は9月17日からアプリでの予約を開始したところ新規客からの予約数が大きく伸びた。
エスカレーター前に導入した「ウォルフォード」も売場の好調を支えるブランドの一つだ。1950 年に高級繊維の生産地として有名なオーストリアで設立。ディテールにこだわり最新技術を取り入れたテクニカル素材でデザイン・クオリティとも最高のレッグウェア・ランジェリー・ボディウェアブランドとして世界的に名を馳せる。日本再上陸、しかもフルラインナップでの登場で、オープン時には顧客から「待ってたよ」、「やっとできたのね」という喜びの声が届いた。ブランドからの発信が少ない中でも他ブランドからの送客もあり、良い動きを見せる。予想外だったのは隣接するカフェからの客の視線だ。カフェから商品が見え、買い物の途中で休んでいる客が興味を持って来店するそうだ。
「マイミア」や「イルフェリーノ」は「SNSの使い方が非常にうまい」(松屋銀座本店営業四部子供・スポーツ・ウェルネス課 ランジェリー・寝具係マネージャー兼ランジェリー・アヴェダバイヤー菊間真希子氏)という。インスタライブなどで集客するため、百貨店にとっての新規顧客に動員がかかる。さらにハウスカードへの入会獲得件数もランジェリーでトップだ。
改装後を商品別でみると、ブラジャー&ショーツが前年比120%の売上げ。ラウンジウェアなどは、ボリュームとしてはまだ小さいものの同160%を記録。菊間バイヤーの狙いは当たった。
売場の配置にもこだわった。エスカレーター正面にはウォルフォードと「ハンロ」を置いた。どちらもランジェリーだけではないブランドで、アウターやニット、ドレスなどをトルソーで展示。ランジェリー売場全体の方向性を示した。
今後は新しい取り組みにもチャレンジする。具体的にはフェミニンケアやフェムテックと言われる分野を本格的に取り入れたい考えだ。女性が気軽に相談でき、悩みに寄り添う売場を目指す。
ワコールでは8月新ブランド「Yue(ユエ)」を打ち出した。ブランド名は、すべての素材・技法・サービスに納得できる理由が存在することから、日本語の「由縁(ゆえん)」を語源としている。高い技術を持つ職人による最高級ブランドという位置づけで、秋冬コレクションから販売を開始した。
ブランド誕生には、物質的な満足感から、日常をより豊かに過ごすことや体験を重視することといった価値観の変化が背景にある。新しい時代に求められている「日常を豊かにするここちよさ」の提供に向けてYueの企画はスタートした。
縫製は福井と長崎にあるワコールの自社工場で行う。ブランドの全工程(デザイン、パターン、縫製、接客)において、関わるスペシャリストがそれぞれの領域で明確な理由をもって商品とサービスに価値を付加するのがYueのこだわりだ。例えば手洗い可能なシルク素材や、とても細いナイロン糸が使われているブラジャーのバック素材など選び抜かれた上質な素材、ここちよく身体にフィットする美しいデザインと設計、日本国内で受け継がれた経験豊かなスペシャリストたちによる緻密で高度な縫製技術など。それらすべてが高い次元でバランスがとれている商品を提案する。
デビューとなる秋冬シーズンはブラジャー、ショーツに加え、ランジェリー、アウターウェアも展開する。価格帯はブラジャーが1万1000~3万3000円、ショーツが6050~2万2000円、ランジェリーは1万1000~6万500円、アウターウェアは2万8600~12万1000円など。8月より全国の百貨店や専門店92店舗で販売しており、25年3月期(2024年4月~25年3月)で50億円の売上げを計画する。