新体制で経営再建へ 三陽商会 2020年2月期の黒字化目指す

2020/05/07 10:20 pm

タグ: 三陽商会 

△会見での大江氏(左)と中山氏

2020年2月期連結業績で四期連続の営業損失を計上した三陽商会は、4月14日、2年後の22年2月期の黒字化を目指した再生プランと経営体制の刷新を発表した。再生プランでは「ブランドバリューとブランドプレステージの向上による収益を上げる『マルチブランドビジネスモデル』の追求」を目指すべき方向性に定め、基礎収益力の回復とそのための事業構造改革の断行に着手していく。減収を前提にした売上げの中身(粗利益率)の改善と販管費の抜本削減に注力していく。再生プランを着実に実行していくため、今年1月に社長に就任したばかりの中山雅之氏は副社長に退き、3月に招聘した副社長の大江伸治氏が5月末の株主総会日付で社長に就任して陣頭指揮を執る。

 

大江氏が昇格 5月26日付で社長交代

三陽商会は5月26日の株主総会でトップを交代し、副社長の大江伸治氏が社長に就く。中山雅之社長は代表権のある副社長に降格する。さらに業績低迷を受け経営体制を刷新するため、9名の取締役のうち6名が退任。新たに常務執行役員の加藤郁郎氏と、社外取締役6名を迎える。大江氏は三井物産に37年間在籍し、2007年からはスポーツウエア大手のゴールドウインで再建を手掛け、今年3月に三陽商会の副社長に就任していた。

 

大江 伸治(おおえ・しんじ)氏略歴=昭和22年8月生まれ、同46年4月三井物産入社、平成19年6月ゴールドウィン専務、令和2年3月三陽商会副社長。奈良県出身、72歳

 

 

粗利率と販管費 焦点 仕入削減、在庫を適正化

昨年秋の社長就任発表から再生プラン策定の陣頭指揮を執ってきた中山社長は、当初、就任1年目の今期(21年2月期)で黒字化を目指す目論みだったが、今回、2年タームに変更し、さらに経営体制も刷新する。

 

三井物産で繊維畑を歩み、2007年から直近までの12年間ゴールドウインの再建を手掛けてきた実績のある大江氏を3月に副社長として迎えて即、5月26日の株主総会で社長に据える。中山氏は副社長に降格して「2トップ」で再生プランの陣頭指揮を執る体制に経営陣を一新する。しかも連続赤字の経営責任を明確にするため、9名の取締役のうち、取締役会長の中瀬雅通氏、前社長の岩田功氏をはじめ6名が退任する。

 

再生プランで掲げた「マルチブランドビジネスモデルの追求」とは、換言すると「ブランドマネジメントのあるべき姿を取り戻すこと」(大江氏)だ。

三陽商会の課題については、「市場環境の変化にあわせたブランドのリニューアルがなされておらず、ややオールドモデル化して、結果として市場でのプレゼンス力が年々低下してマーケットリーダーに成り得ていない」と大江氏は課題を指摘。加えて「コストマネジメント」と「リスクマジメント(在庫コントロールの甘さ)」も重点課題に挙げた。

 

再生プランで目指す22年2月期の計画値は、売上高550億円、売上総利益280億円、販管費265億円、営業利益15億円。20年2月期業績(12カ月)と比較すると、売上高で40億円の減収、売上総利益で5億円の増益、販管費で40億円の削減となる。

また売上高総利益率の目標値は50.9%、販管費比率は48.1%、営業利益率で2.7%、EBITDAで4.6%に設定している。

 

基礎収益力の回復に向けた再生プランの重点施策は、「粗利率の改善」と「販管費の削減」の徹底だ。

粗利率改善に向けては、調達原価の低減、建値並びに総消化率の改善、不採算事業の抜本改善に取り組んでいく。調達原価低減策では、調達原価の削減、事業本部一元管理による仕入・発注抑制と品番・SKUの削減、在庫削減を進める。仕入削減では上期に約25%、下期に約30%削減する計画で、額にすると前期比約110億円の削減になる。在庫削減では前期末から40億円程度削減し、約90億円を目指す。

 

建値・総消化率の改善策では、セール販売による帳尻合わせからの脱却と、ブランディングの強化に取り組む。ブランディング強化では、直営店と百貨店インショップの環境整備によるブランド表現の強化とプロモーションの効率化を挙げ、これと共にチャネル戦略も進めていく。

 

チャネル戦略では各々の役割を明確化したうえで、主力の百貨店においては効率化が命題になる。ブランドの複合展開やショールーミング化による新たな売場づくり・販売手法の導入と、一方で不採算売場の撤退も進める。

 

新型コロナウイルスの影響が不透明なだけに、事業構造改革の舵取りは険しそうだ。

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