【連載】富裕層ビジネスの世界 ドバイ進出までお手伝いするグローバルな「ビジネスサポート」

2021/04/12 5:00 am

新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、株高もあって富裕層が増加。富裕層相手のビジネスも賑わいを見せている。連載「富裕層ビジネスの世界」4回目は、ビジネス面におけるサポートのすごさを取り上げる。

富裕層の企業を海外に橋渡し

少子高齢化が進む国内市場の縮小に、不祥事なども重なって、業績が芳しくなかった企業は、頭を抱えていた。海外進出しか生き残る道は残されていない。しかし、特殊な業界でドメスティックな企業だっただけに取っ掛かりがなく、社長は途方に暮れていた。

悩んだ末、社長はファミリーオフィスを運営していた百武資薫さんに、相談することにした。家族ぐるみで10年来の付き合いがあったからだ。

百武さんは社長に対し「ドバイに進出するというのはどうでしょう」と提案。じつはドバイの王族にコネクションがあったからだ。ドバイの王族といってもじつはかなりの数があって、その実力には大きな差がある。百武さんは、その中でもトップ3に縁があったのだ。

「まだドバイに進出している企業はなく、ニーズはあるはず。私が王族に掛け合ってみましょう」

ドバイの王族が相手なんかするわけない――。当初、社長は百武さんの話を半信半疑で聞いていた。だが、それから数ヵ月後、「王族が会いたいと言っているのですがどうしますか?」と百武さんから言われ度肝を抜かれた。

しかもである。この王族が開発・所有していたニューシティを無償で貸し付けてくれるという話まで持ち込まれ、社長はさらに驚かされた。

「最初は冗談かと思っていたが、まさか王族が乗ってくるなんてびっくりだ」(社長)

その後、この社長はドバイの企業と提携を検討中。話は順調に進んでいるという。

中小企業を中国企業に紹介

百武さんのサポートは、こうした大手企業に対してだけではない。中小企業に対してもさまざまなサポートを展開している。

ある大手メーカーの3次下請け会社。現社長が先代から会社を引き継いでからしばらくの間は業績が良かったものの、ここにきて海外勢の攻勢にあい、売り上げが伸び悩んでいた。

「このままではまずい。何か抜本的な対策を考えなければ」

悩んだ末に、社長は百武さんに相談。返ってきた返事はアドバイスは意外なものだった。

「(元請けの)メーカーと付き合いたいと言っている中国企業があるんですが、その企業と資本業務提携をしませんか? 社長としても出資してもらえば一息つくことができて、新たな設備投資もできるでしょうし、Win-Winの関係になれると思うのですが」

社長自身は先代から引き継いだ資産があるために富裕層であるものの、会社自体は3次下請けであることもあり知名度があるわけではない。そんな企業に中国企業が関心を示してくれるなんてと社長は驚いたのだ。

じつは、百武さんは日頃から中国のみならず世界中を飛び回っており、さまざまな企業とコネクションを作っている。加えて、顧客は富裕層ばかり。そんな顧客たちからの紹介もあって、多彩な企業と付き合いがあるのだ。結果、この社長は中国企業との資本業務提携を決断。資金を得て、業績は飛躍的に向上した。中国企業側も、間接的に親会社であるメーカーに口座を開くことができ、さらなる提携の強化を申し出ているという。

「百武さんのコネクションを紹介してもらえて助かった。これで新たな事業展開も進めていくことができる」

以前とは打って変わり、社長の表情は明るかった。

税制や経済ニュース解説を毎日発信

百武さんは、地道な活動も続けている。忙しい富裕層のために、毎日起きる経済ニュースについて解説した記事を、メルマガやLINEで発信しているのだ。ニュースが起きた背景や、それがビジネスや株価に与える影響などについて、誰にでも分かりやすい平易な言葉で解説。富裕層のみならず、その妻や子どもにも「難しい経済の話を短時間で理解できる」と評判だ。

合わせてセミナーも毎月開いており、富裕層の顧客たちが家族連れで参加するというから、その人気ぶりがうかがえる。

さらに富裕層は、税務や会計に対する関心も高い。しかし、毎年、制度がコロコロ変わるし、とかく難しくて分かりにくい。そこで百武さんは、変更点のポイントを始め、国税庁のHPに出ていることについても分かりやすく解説、好評を博している。「富裕層が求める情報は多岐に渡るが、いずれも専門的で分かりにくい。そこで解説は、重要で知っておくべき要点を絞ることで、短時間でぱっと理解できるよう工夫している。加えて、証券マンとしてのキャリアを生かし、株価に与える影響や注目すべき銘柄の情報なども交えて、有益な情報にするようにしている」と百武さんは語る。

ファミリーオフィスといえば、これまで見てきたように資産運用に加えて、オフビジネスのニーズに応えるものと思われがち。しかし、顧客の本業であるビジネスに関して、陰に日向に支援するのも重要な仕事だ。

つまり、顧客である富裕層が抱える悩みを、オンビジネス、オフビジネスにかかわらず、フルサポートする、それがファミリーオフィスなのだ。

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