キャリア女性の心掴む「スーツクローゼット」好調 髙島屋
2020/02/19 7:00 am
髙島屋が2017年9月20日に開いた、働く女性向けのスーツを揃える自主編集売場「スーツクローゼット」が、売上げを伸ばしている。第1号は新宿店と横浜店に構えたが、2年目の売上げは共に前年の1.3倍を記録。買い付けを増やしたり、パターンオーダーの取引先を変更したりするなどで品揃えの精度が上がり、素材や機能を追求したオリジナルにもヒットが生まれ、多くの働く女性を取り込んだ。昨年12月25日には、リクルートスーツを自宅で試着できる無料のサービスも開始。新社会人にも照準を合わせ、勢いに弾みを付ける。
スーツクローゼットは新宿店と横浜店を皮切りに、日本橋店、京都店、大阪店、ジェイアール名古屋髙島屋と売場を増やしてきた。客数と売上げは目標を捉えており、吉田有紀バイヤーは「順調。取り扱うブランドの精査、パターンオーダーのブラッシュアップが奏功した」と手応えを掴む。
ブランドは、昨春から買い付けを本格化。「アキコオガワ」や「エムフィル」らスーツがメインではないブランドを加え、デザインやグレードのバリエーションを増やした。従来はナショナルブランド、子供の入学式・卒業式や夏場の「クールビズ」など、いわゆる「オケージョン」に焦点を当てて取引先やデザイナーと共同で開発するオリジナルがメインだったが、新たな需要を開拓。特にアキコオガワは、ジャケットで5万円台、セットアップで10万円を超えるが、好調だ。
パターンオーダーは、一昨年の9月に取引先を変更した。素材や形状、サイズの選択肢が少なかったからだ。例えば生地は、従前の10種類から50種類以上に増加。サイズも5~13号から5~15号に広がり、日本橋店では17号や19号にも対応する。金融業が多い日本橋ではスーツのニーズが多く、パターンオーダーは盛況。他店では7~8%の売上げ構成比が、25%にのぼる。
また、取引先やデザイナーらと共同で開発するオリジナルでもヒットが生まれ、業績を押し上げた。例えば18年のクールビズ用に提案した、麻調でポリエステル100%のジャケットは、涼しげな見た目とシワになりにくさが好評。尾州の機屋と組んで一昨年の秋冬に販売した、編みと織りの生地を組み合わせ、脇や背中の部分は編みの生地でストレッチ性を強めたジャケットも「凄く売れた」(吉田さん)。いずれも、切り口を変えながら継続。売場の牽引役だ。
嬉しい誤算もある。「1年目は、大学の入学式用や就活用のニーズが予想以上だった」(吉田さん)。量販店の商品では満足できない本人や親がスーツクローゼットに駆け込んだ。2年目は品揃えを拡充。昨年12月25日には阪急阪神百貨店と共同で、スーツを自宅で試着し、無料で返品できるサービスも始めた。吉田さんは「大学生は忙しく、親と一緒に出掛けるのは難しい。それならば、家で試着して親族に見てもらい、買うか決められるようにすればいい」と狙いを明かす。百貨店に手薄な20代と接点を設け、将来的にリピーター化するための布石でもある。
サービスと連動して、マイナビと協業。マイナビが登録者に送る就活情報誌に、就活用のスーツや試着のサービスなどを紹介する媒体を封入し、さらなる拡販に繋げる。