高島屋新宿店、コミックエッセイで酒の魅力発信
2020/12/22 3:52 pm
ユーモラスにデフォルメされた販売員が登場し、酒の魅力や背景についてわかりやすくイラストで伝える——。高島屋新宿店の和洋酒売場は11月20日、画像共有アプリのインスタグラムとツイッターで、コミックエッセイの形式で商品を紹介し始めた。今や百貨店がSNSのアカウントで情報を発信するのは当たり前となっているが、コミックエッセイを投稿するのは珍しい。これは和洋酒売場の1人の販売員が企画・立案し、高島屋の社内起業提案制度「フューチャープランニング」を通じて実現。普段は売場に立ちながら、イラストの製作なども自身で行っている。
「新宿高島屋 お絵描き酒レポ」(インスタグラム:@saketakashimaya、ツイッター:@Saketakashimaya)はイラストを用いて、商品やイベントの情報などを販売員の目線で紹介する。特に「知るともっとお酒を飲むのが楽しくなる」ような内容を意識しているという。例えば、11月29日にはデザイナーであるスピーディ・グラフィト氏がボトルをデザインした「ティエノ」のシャンパンを取り上げ、ボトルに描かれた天使はティエノの本拠地であるシャンパーニュ地方にあるノートルダム大聖堂の天使像をオマージュしたことや、草木は自然を大切にしようというメッセージを込めたことを、ティエノのアンバサダーもイラストで登場させながら解説した。
12月7日にはコニャックの作り手であるポール・ジロー氏がつくるスパークリングジュースを紹介。最高のコニャック生産地区であるグランドシャンパーニュで採れたブドウであることや、ポール・ジロー氏がブドウの生産からボトル詰めまで1人で行っていることを説明した。製造される背景に加えて、この商品のファンだという売場の販売員の感想も載せ、リアルな魅力を伝える。
週に1~2度の頻度で投稿しており、開始以降じわじわとフォロワーの数を増やしている。海外のメーカーや造り手から「いいね」ボタンを押されたこともあるという。イラストの製作や取引先への掲載の確認といった業務は、和洋酒売場の1人の販売員が全て任されている。普段は店頭で販売業務を行い、毎週水曜日に新宿店の事務所でこれらの業務に取り組んでいる。
この販売員は高島屋グループ会社のグッドリブに勤め、入社して6年目だが、ワインの販売業務は約20年前から携わっているというベテランだ。「ソムリエ」、「ウイスキープロフェッショナル」といった資格を持ち、「ウイスキー検定」1級にも合格した。昔からイラストを描くことも好きで、以前から「お酒について知識が増えれば、飲む際によりいっそう楽しくなる。お酒に詳しい方も詳しくない方も親しみやすい、コミックエッセイという形で発信したい」という想いがあったという。
昨年6月に社内起業提案制度であるフューチャープランニングへ応募。8月から今年2月の間に役員との面談やプレゼンテーションを行い、社内起業に向けた勉強会も受講した。今春のコロナ禍によって準備が一時中断されたが、7~11月には週に1日実際にイラストを描く練習期間を設け、11月の開始へと至った。
豊富な知識と経験を持つ販売員が自ら内容を考案するこの取り組みは、単に商品を紹介するSNS販促とは差をつけられ、大きなアドバンテージとなる。コミックエッセイという形式で、描いている「人」が見えるため、親しみも湧きやすい。専門性の高い人材を擁する百貨店ならではの強みであり、インターネットという媒体の特性上、実店舗の対面接よりも広範囲に届けられるのもメリットだ。今後は「このアカウントで紹介されたなら買おう」といったファンの増加が期待できそうだ。